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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第4章 ~中国・亜細亜大戦勃発~
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アメリカの動き

―8月14日(土) UEST:AM11:30(JST:AM01:30 7月15日(日))

     アメリカ合衆国首都ワシントンD.C. ホワイトハウス1階イーストルーム―





「……そうか。明日にでも部隊を移すか」


 私は確認をかねてそういった。


 ここイーストルームはホワイトハウス内でも一番の大きさを有する部屋だ。

 ここで記者会見や条約の著名式などが行なわれるが、今は会議室だ。


 国家安全保障会議。主要閣僚を集めての重要な会議だ。


 別にアメリカという国自体が攻撃されたわけではないが、今回ばかりは間接的にまずいことになっている。


 東南アジアに進出している企業にもう被害が出始めている。


 最後の最後に、例の侵攻計画名に0815の数字があったことが判明したため、てっきり8月15日あたりかと予想したため、「東南アジアでの治安を考慮した結果の企業保全」とかどうとかと理由をつけて企業を少しずつ撤退させてきた。


 だが、完全には終わらなかった。

 予想を裏切って3日前に侵攻を開始した上、その企業撤退もいろいろと躓いたせいで中国の侵攻に間に合わなかった。

 完全に間に合うとは思ってはいなかったが、それでもこれは少し多すぎた。


 中国は東南アジアに侵攻しつつある。

 とにかく、できるだけすぐに部隊を動かさねばならない。


 答えたのはレイクス国防長官だ。


「はい。アジアに展開している第7艦隊のほか、西海岸にいる第3艦隊も動かします。こちらは東南アジアに派遣し、向こうに陸上戦力を投入しつつ反撃援護に専念します」


「うむ……。しかし、すべて動かしてしまっていいのかね?」


 第3艦隊を動かすということは、東太平洋の我が国艦隊がいなくなるということを意味する。

 全部を動かしたらこの海域での抑止力が……、


「逆に、そうでもしなければ足りないんです。第7艦隊だけではアジア全体を全部対処するのには限界があります。第3艦隊さえあれば対処能力は十分まかなえるのです。東太平洋のほうは第2艦隊と第4艦隊の一部をまわすことで対処します」


「ふむ。そうか」


 第2艦隊はアメリカ東海岸付近を担当し、第4艦隊は南アメリカ大陸を管轄においている。

 そこから一部の部隊をまわす形で補完するようだ。


 そうなれば、アジアには2個艦隊がそろうということか。

 そこに東南アジア各国の軍、そして、何より最近軍拡を進めている日本軍が総力を挙げてくるだろう。

 日本を舐めてはいけない。我が空軍のトップガンをプライドごと見事に打ち負かしたり、潜水艦でも無音で我が軍の駆逐艦を沈め、陸に至ってはたびたびタフな部分を我が国陸軍に見せ付けたりと、いろいろ逸話を持っている。

 我が国がある意味一番相手にしたくない国だ。

 ……まあ、中国の物量によって少し遅れをとったようだが、しかしその後の反撃ではその能力をまざまざと見せ付けることになろう。


「……では、今のところの戦況を報告してくれ。どんな様子だ?」


「はい。では、まずはオキナワ方面です」


 目の前に広げられたアジア全域を示した地図を指しながら説明を始めた。


「オキナワ方面の戦局は一方的です。初日に弾道ミサイルを迎撃し切れなかった分がまずオキナワ・ナハ市を中心に被害が集中。その後電撃的に南方から上陸し、今現在ウルマ市近辺まで侵攻していますが、そこからの侵攻速度は低下しています」


「もう2分の一とられているということか……」


 ここから先にうまく侵攻できないのは、おそらくその先が山間部ばっかりで侵攻できるところが限られてるからだろう。

 特に機甲部隊は山間を通りにくい。しかも中国の戦車とかは日本のものみたいにあのような複雑な地形に対応できていない。


 おそらく、理由としては一番はこれだろう。まだほかにいろいろとあるだろうが。


「しかし、日本もそろそろ動き出すようです。CIAからの報告によれば、もう2,3日位すれば反攻作戦が発揮されるらしいとのことです」


「ついに動くか……」


「ですが、レイクス国防長官」


「はい?」


 そこで聞いたのは閣僚の一人である副大統領だ。

 右手を軽く上げて質問をぶつける。


「となると、第7艦隊はまず日本と共同の反攻作戦を行うということになりますよね?」


「はい。左様です」


「となると、指揮権は日本に移ることはわかりますが、作戦行動に関しても日本任せということでよろしいですか?」


 要は日本のオキナワ反攻作戦中の第7艦隊の主導権の行方ということか。

 指揮自体は日本に移るだろうが、アメリカの影響力が完全になくなるのかどうかということを懸念しているのだろう。

 ……まあ、あくまで日本の領土の奪還なので日本に指揮権が移ってもなんら問題はないんだがな。別に第7艦隊自体の指揮はアメリカ側にあるし、それをどう動かすかは日本にあるだけだからな。


「とりあえずはそのように考えていただいてかまいません。作戦立案は日本にありますし、それによって第7艦隊をどのように動かすかは日本に権利がありますから。ただし、あくまで日本は第7艦隊の部隊を細かく動かす、というとこまではいかないでしょうし、あくまで援護してくれ、とか大まかな内容だと予想されます。その中での第7艦隊の運用は我々に移りますね」


「そうですか……」


「では、第7艦隊はしばらくはオキナワ方面の援護に入るということでよろしいか?」


 私も確認を取る。

 向こうもすぐにうなずいて返した。


「はい。第7艦隊は最初はオキナワ方面の援護として、日本軍の全面支援体制をとります。おそらく、日本政府からも申請が来る可能性があるのですが……」


「問題ない。在日米軍司令官に命じて、私の名で第7艦隊の大まかな作戦方針はそっちで任せることを知らせたまえ」


「了解」


 日本のことだ。せいぜい自分達の援護に第7艦隊の力を借りたいというだろう。

 それくらいなら問題ない。援護を終えれば第7艦隊の指揮権はこっちに戻るだろうしな。


 話を移す。次は……、


「では、東南アジアは?」


「はい。……まずフィリピン方面ですが、こちらは思ったほど被害を受けていません」


「? というと?」


 まさか、あの国が単体で迎撃しきってるわけはあるまいな?

 いくらなんでも中国が本気を出した場合どうやっても被害が増大して……。


「空襲での被害は受けています。しかし、上陸自体はうまくいっていないんです」


「……どういうことかね?」


「というのも、中国自身が上陸作戦になれていない。上陸国の規模に対して、揚陸部隊の分の揚陸艦が足りない。ゆえに、上陸されてもすぐに撃破されるというパターンが多発しているのです」


「……つまり、フィリピンが島ばかりの海洋国なだけに、揚陸艦不足が原因で上陸部隊が少なすぎるということか?」


「そういうことです」


「ふむ……。なるほど」


 フィリピンは確かに島ばかりの海洋国家だ。

 日本ほどではないが、近隣にいっぱい島を抱えている。

 それらをすべて手中に抑えるのは至難の業だし、元々揚陸艦が不足して上陸戦力が不足、結果的にフィリピンそう戦力のほうが上回ってるということか。


 ……それならなんで最初からそんな国を無理に攻めようとしたのか。

 どうやっても揚陸に無理がかかっているのを知らないほど向こうも馬鹿ではないだろうし、一体何を焦ってるんだ。

 資源目当てか? それでも、揚陸すらままならないのに送ったら随時撃破されて終わりだろうな。

 下手すれば旧日本軍のガダルカナルの戦いみたいになる。

 あれは最初っから我が国軍が大規模な兵力を揚陸させていたのに、日本側は満足な偵察すらせずに適当に我が国の上陸兵力を見積もって(しかもいくらか低めに)、ちょこまかと部隊を上陸させて順次迎撃された。

 少ししてやっとガダルカナルに大規模な部隊が上陸したらしいことを悟って大規模な部隊を送って対抗しようとしたが、時すでに遅かったという。

 まあ、今回の場合は単純に揚陸艦戦力の不足があるんだろうが、これが再現されてもなぁ……。

 そしたら中国の戦術策定能力の程度を疑う。ほかの理由があるのなら別にそれでもいいだろうが、単純にフィリピンをべらってのことだったらもう“アホ”であろう共産党の奴らは。


 ……しかしまあ、


「……だが、空からの攻撃によってどうとでもなる可能性もある」


「そのとおりです。事実、空母施琅シーラン艦載機からの攻撃でフィリピン陸軍は甚大な被害を受けつつあります。上陸した部隊が侵攻速度を速めてくるのも、時間の問題です」


「ふむ……」


 やはり、もう上陸はされていたか。


 沿岸でとどめているだろうが、それが突破されるのも時間の問題ということか……。


 ……ということは、


「……とりあえず、空母戦闘群さえ抑えておけばあとはフィリピン陸軍のほうで何とかできるということか?」


「今現在の状況では。しかし、援軍とて陸軍2,3個師団も派遣します。すでに揚陸部隊は現地に向かいつつあります」


「うむ。では、陸続きの国は?」


「こちらは相当被害を受けています。主に侵攻を受けているのはベトナムとラオスです。山間部が多くてうまく侵攻できていないようですが、大陸からの航空支援が行き通っているようです」


「では、まずそちらを?」


「はい。こちらに関しては巡航ミサイル潜水艦に大量に打ち込んでもらいます。目標は、大陸前線にある航空基地です」


 巡航ミサイル潜水艦。改オハイオ級のことだ。

 SSGNと略され、性質上原子力特殊潜水艦と呼ばれることもある。

 弾道ミサイル発射能力を取っ払った変わりに、巡航ミサイルを大量に搭載したもので、例の核兵器規制条約の関係で我が国も核兵器を大量に廃棄せねばならず、そのときにオハイオ級を初めとする少なくない弾道ミサイル搭載原潜がこれに生まれ変わった。


 これに搭載されている巡航ミサイルを大量に中国に撃ち込む。

 数できているならこっちも数だ。目には目を、歯には歯をというやつである。


「では……当面はこれでいいか?」


「はい。あと、朝鮮半島に関してですが……」


「ああ、あそこはオキナワ奪還したら第7艦隊向かわせればいいだろう。中国に乗っ取られてはいろいろと面倒だ」


「……ずいぶんアバウトですね」


「もうあそこにはこりごりなのだよ……。前代のロバーマン元大統領閣下がなぜ在韓米軍を撤退させたと思っている……」


 あそこは元から反米感情がひどかったが、それによっていろんな事案に巻き込まれてストレスもたまりまくっていたのだ……。

 まあ、あの後北朝鮮が侵攻してきたときに、北朝鮮に主導権を握られてはまずいということで、やっぱり救いの手は差し伸べたが……、


「(……なんであれで文句言われねばならんのだ……)」


 あの後「なんでもっと早く来なかったんだ!」とか言われてむしろこっちの対応の遅さを責めつけられた。日本と一緒に。

 驚くことに向こうの国民もネット上でそんなことをつぶやき始めていたほどだった。

 確かに、こっちが北朝鮮の動きに関して鈍かったのは否定しないし、日本だって主に法的理由で動きが遅かったのは認めているが、だからってなんで文句をいわれにゃならんのだ……。

 元はといえばそっちもそっちで動きを読めていなかったことにも問題があるだろう。北朝鮮洞察に関してはあんたらのほうが詳しかったはずなのに……。


 もうあの国にはうんざりだ。もうこれっきりにしてもらいたいわな。


「……とにかく、韓国の援護はするが、もうこれっきりだってことを向こうに思い知らせねばならない。あいつらは自分の立場を自分達で勝手に上に置きすぎている」


「はは……、そうですね」


 レイクス国防長官を初めとして、ここにいる官僚もこの苦笑いである。


 隣国にこんな国を抱えている日本がどれだけ大変か……。もう一回あの国には痛い目にあったほうが身のためだろうな。うん。


「では、大まかな方針の説明は以上です」


「うむ。よくわかった。……では、まず最初の段階では……」


「はい。まず第3艦隊が東南アジアに向かいます。許可を得られればすぐに真珠湾パールハーバーから」


 もうすでにそっちに移動していたか。準備がいい。


「いいだろう。すぐに出撃要請だ」


「了解です。……後は……、」


「ああ……。とりあえず、第7艦隊を日本に預けて……」








「そっちが反撃を始めたときが、アジアの反攻の号砲となるだろう……」











 私はそういって天を仰いだ…………

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