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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
第4章 ~中国・亜細亜大戦勃発~
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〔F:Mission 2〕敵航空部隊迎撃

―AM09:25 沖縄県宮古島より北北東100海里地点高度8,000ft上空―






《友軍航空部隊、迎撃体制整えました》


 うちの部隊の一人が報告した。


 中国軍が弾道ミサイルを発射してわずか数分後だった。


 沖縄に弾着したと同時に、沖縄那覇市方面に向かう航空部隊を探知する。


 どうやら、本島を先につぶす気らしいけど、宮古島方面こっちにもきそうだった。

 ゆえに、下地島にいる僕達もこうやって近くに駆けつけて迎撃体制を整えています。


《全機、まもなくレーダーで捉える。AAM-4Cスタンバイ》


 隊長からの指示だ。


 AAM-4C。


 正式名称『99式空対空誘導弾C型』で、アクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)誘導と慣性・指令誘導を併用した、アメリカのAMRAAMにも負けずとも劣らない性能を誇るミサイルである。

 撃ちっぱなし能力や多目標同時攻撃能力を持ち、信頼性は高いわ、ECCM能力が強化され電子戦は強いわ、機動性は高いわ、これらのおかげで高性能ミサイル化待ったなし。

 ……という、これらのAAM-4A/Bにもあった機能が一回り向上し、AWACSとのデータリンク機能の付与。

 また、F-35のウェポンベイにも対応できるよう若干小型化し、同時に軽量化に成功。

 ギリギリF-35にも入るようになった。


 ……にしても、


「(……いくらなんでも突然すぎるなぁ……)」


 中国の突然の侵略。

 目標は前々からいわれてたとおり沖縄方面だってことはわかってる。

 大体想像は出来る。

 でも、マジでやるとは思わなかったなぁ……。


 自分のやってる行動の意味をわかってるんだろうか……?


 ……いや、わかってないからやってるのか。そうかそうか。


《全機、気を引き締めていけ。俺と2番機以外は初の実戦だ。絶対に俺の元を離れるな》


 そう。今回、隊長以外で実戦経験してるのは僕だけ。

 いつやったかはいうまでもなく。あの領空侵犯後の空中戦です。


 でも、こうやって中距離ミサイル斉射からの実戦はやったことがなぁ……。


 ……やっぱり不安だ。


 すると、


《……こちら日本国防空軍AWACS『アマテラス』。各隊へ告ぐ。まもなくレーダーに捉える。確認せよ》


 別の声だ。


 これは日本が保有する早期警戒管制機『E-767AWACS“アマテラス”』だ。

 アマテラスっていうのは元ネタは『天照大神アマテラスノオオノカミ』っていう日本神話に登場する神の一人で、太陽を神格化、つまり一種の神様風に擬人化したした神様だって言われていて、皇室の祖神の代表的存在である。

 日本の神様ではとにかく有名だと思う。伊勢神宮とかに行けば、それが信仰されてるからより詳しく知ることが出来る。


 まさに、太陽から見る神様だ。


 太陽の神様ならどこからでも見えるって言うのと、AWACSの性質を掛け合わせたものなのかもしれない。


 そのアマテラス曰く、もうすぐ敵が見えるらしい。

 何でも、敵は空母艦載機以外にも、本土から来た直掩機も大量にいるらしい。


 ……レーダーで確認してないからまだわからないけど、中国のことだ。とんでもない量なんだろう。たぶん。


《もうすぐ見えるぞ》


 隊長が一言言った。


 そのときだった。


 あたかもタイミング見計らってましたといわんばかりのタイミングでレーダーに反応が出る。

 IFF(敵味方識別装置)応答なし。まあ、方向からして当たり前か。

 明らかに敵航空部隊。ついに来たか。


 ……でも、


「……え、えッ!?」


 僕はそのレーダー画面を見て絶句した。






 敵の戦力が、明らかに多すぎる。






 まだどんどんと増えていく。

 2桁は余裕で超えた。……、20……、30……、40……、



 ……お、



「……多すぎでしょこれ……」



 レーダーがまもなく埋め尽くされそうです。

 どういうことだよ? これ一体どこからもってきたし?

 大陸から大量に移してきた? だとしてもこれはいくらなんでもオーバーキル以前にパーフェクトキル直行コースですわ。


《……な、なんだこの大群……ッ!?》


《おいおい……、これ迎撃しろとかマジかよ……》


《戦力相対比どうなってんだこれ……》


 仲間にも同様が走っている。

 僕と同じだ。さすがにこれを全部迎撃とか無茶が過ぎる。

 2~3割落とせたら御の字。それでこっちが損害完全になかったら奇跡以前にもう何か霊的なの取り付いてるレベル。


 ……そして、


《……いくらなんでも多すぎるなこりゃ……》


 あの隊長でさえこの感想である。

 4年前の朝鮮戦争でもこれは体験してなかったんだろう。


 いくらなんでも物量攻撃前面に出しすぎ。


 少しして、敵機の機種も判明した。

 本土から飛んできたらしいJ-11に、最新型のステルス戦闘機であるJ-20、そして空母から飛んできたらしいJ-15の姿もあった。

 機種が勢ぞろいです。うん。全然うれしくない。


《どうするんです隊長? これ迎撃し切れませんよ?》


 他のパイロットの声だ。

 もちろんこの人も飛び立っている。というか、部隊全力出撃だからもう当たり前なんだけど。


《わかっている。……とにかく先手を打つぞ。AAM-4Cスタンバイ。各自でデータリンクフル。目標を定めろ。4発一斉斉射だ》


 AAM-4Cの一斉斉射。


 AAM-4Cは、従来のAAM-4と同じく複数の目標の同時捕捉、及び同時誘導が可能だ。

 今の場合は、4発搭載しているから4つ同時補足と同時誘導。

 今ここには8機いるから、全部で32本のAAM-4Cが跳んでいくことになる。


 ……けど、


「……全然たりないわぁ……」


 32本全部当たったとしても全然戦力低下にはならないわけで。

 こっちに向かう分がどれくらいくるかわからない。今のところ全部沖縄方面に向かってるけど、いずれこっちに分派するに違いない。


 でも、できれば分派する前にさっさと落としたい。できれば。


《各機、スタンバイできたら報告》


「02、スタンバイ」


 僕は2番機なので即行で報告する。

 後続も続いた。全員スタンバイオーケー。


《各機、タイミングを合わせろ。……、よし、GO! IJYA01、FOX1フォックス・ワン!》


 隊長の号令に続いて即行で右手の操縦桿についているミサイル発射ボタンを親指で押した。


 同時に、


「IJYA02、FOX1!」


 発射警告を発する。

 胴体下部に直接付けられたAAM-4Cが4発、一斉に機体から離れ、ともに各自で指示された目標に向かって飛んでいった。

 ほかも続いた。

 目の前に白い尾を引きながら音速を超えて飛んでいくミサイルが大量に見えた。

 これはこれで見事な光景だけど、残念ながら今の僕にはそれを楽しんで余裕はない。


 敵が動いた。

 一部がこっちに分派すると同時に撃ったらしい。

 こっちに旋回すると同時に散り散りになって回避に移る。


 そのうちに、敵にミサイルが到達した。


 編隊を組む余裕もなく回避していた敵機はいくつかが落ちた。

 僕が狙っていたものも、3機ほどが見事に落ちた。

 ほかの仲間でも撃墜を確認したみたいだった。


 ……でも、


「……なにこれ全然減ってない……」


 全体的に見たらこれっぽっちも減ってない。

 結果僕達は何機落としたのかはわからないけど、それでもこれっぽっちも向こうにとって損害になっていないのは確かだった。


 ……さて、どうしたものか?

 これ、もう中距離打ち尽くしちゃったしもう無理ゲーでしょ……?


「隊長、この後は? もう中距離ないですよ?」


 隊長は答えない。

 おそらく、この後の行動を模索してるんだろう。


 ……と、


《迎撃に行きましょう! まだ後ろは民間人が大量に残ってますし……》


 仲間が言った。

 確かに、ここは引き下がるわけにはいかない。

 後ろはもう日本の島なんだ。

 そして、民間人もたくさんいる。

 避難は始まってるけど、まだ完全には終わっていない。


 ……だが、


《……いや、撤退する》


「ええッ!?」


 隊長からの宣言は撤退だった。


 ……マジで? この後ろもう民間施設アンド民間人大量にいる先島諸島ですよ?

 まだ民間人残ってますよ? これで退くんですか?


《待ってくださいッ! 民間人置いて逃げるんですか!?》


 思わず他のパイロットが叫んだ。

 納得いってないらしい。


 ……だが、隊長の意見は変わらなかった。


《……いや、撤退だ。すぐに沖縄方面……、いや、本土方面の安全なところまで撤退する》


《しかし……ッ!》


《お前は》


《?》


《……あれを全部落とせるのか?》


《ッ……!》


 レーダー上の敵機のことだった。

 まだまだいる。いくらこっちでいくらか落としても、まだまだ大量にいた。

 ……無理だな。弾薬的にも持たないし、その前に落とされるのが落ちだ。


《……どっちにしろこれじゃ守りきれない。そんな中で俺達が死んでも、無駄死にと一緒だ。意味がない》


《……》


 ぐうの音も出なかった。

 ここで戦闘になったところで、生き残れる可能性なんて微レ存以前の問題だ。

 その後には、どっちにしろ後ろの先島諸島は攻撃される。


 ……それなら、この後僕達がとる選択は一つしかない。


《……今ここで死ぬわけにはいかないんだよ。プライドは捨てろ。すぐに撤退するぞ。敵が攻撃してこないうちに》


《……了解》


 ここは苦悩な判断をするしかない。

 とてつもなく心が痛くなる決断だが、こうするしかなかった。


《……IJYA01よりアマテラス、敵航空部隊の撃退に失敗。撤退する》


《……了解した。たった今司令部からの許可も得た。進路を一時南東にとり、沖縄本島太平洋方面を迂回して奄美大島に向かえ》


《奄美大島? 沖縄本島の部隊はどうした?》


《……》


 少しばかり閉口する。


 ……え? まさか……。


《……沖縄本島方面の部隊は壊滅した。現在生き残ってるのは、たった2機だけだ》


《にッ……!?》


 おいおい……、向こうってこっちより大量にいたろ?

 三十何機っていたろ? それが壊滅って……。


《先手を打たれた。大量のミサイルになすすべがなかったようだ。……今生き残った2機は撤退している。貴隊もすぐに撤退してくれ》


 してくれ。……っていう口調からして、向こうも無理だと悟ったんだろう。

 そして、これはせめてものお願いだ。

 ……この一言だけで、アマテラス側の心境がどんなものかとっさに思いつくんだよな……。


 というか、わざわざこの時点で「司令部の許可を得ている」ってところからしてもう向こうも無理を悟ったのかね……?

 で、司令部も同じく無理ゲーを悟ったと。


《……了解。IJYA01、これより奄美大島方面に撤退する。……各機に告ぐ。すぐに撤退するぞ。方位を南東に。俺に続け》


 先頭の隊長が機種を右旋回させつつ南東に向け始めた。

 それに僕達も続き、いそぎ向こうの攻撃がくる前に撤退した。


 撤退の途中、僕は2時方向の下を見る。


 そこには、今まで基地があった宮古島があった。

 今頃避難の途中だろう。だけど、どれくらいすんだかまだわからない。


 ……この後、中国からの攻撃にさらされることになる。

 だけど、僕達はそれを完全に阻止することは出来なかった。


 多くの人々が死ぬのを、何も出来ずに見ているしか出来ない。


「……クソッ……!」






「クソォ…………ッ!!」







 僕は悔しさのあまり、右手の操縦桿をより強く握った…………

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