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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
序章~すべての始まり~
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謎の声

―5月7日(木) AM6:05 御蔵島55海里地点 DCGやまと艦橋―





「……お、おはようございます……」


 俺は思いっきりローテンションで挨拶した。


 西の空は明るくなり、太陽がニョキッとでて「朝だよさっさと起きろ!」と言わんばかりに朝日の光をあたり一面に満遍なく照らしています。

 ……でも、今の俺は残念ながらそれをあがめてるほど余裕ありません。


 ええ、そうです。寝不足なんです。


 舵を交代してもらって舵を握ったとき、先に起きていた潮崎航海長が言った。


「どうした新澤? ずいぶんと寝不足だな」


「ああ……、そりゃあもう、ほんとに」


 寝不足なのを当てるとはお見事ですな。

 ……ほんと、最近眠れてません。

 というのも……、


「……また〝あの声〟か?」


「ええ……、今度は夜中にも聞こえまして……」


〝あの声〟。


 一週間くらい前から度々聞こえてくるあの声だ。

 一番最初はあの金曜の食堂のときだ。

 そう。俺たちが食堂で艦魂関連の話でいろんな意味で盛り上がっていたときのことだ。

 そのとき聞こえたクスッとした笑い声。

 あの時はなんともない幻聴と思っていた。……が、


 あれから1,2日につき数回レベルでおんなじのが聞こえてくる。


 それこそ、最初あたりは偶然複数的に起こった幻聴と思ってたけど、後々考えてみたらこんなにも聞こえるのはおかしいだろうという結論に至りましてですね……。


 そう考えたらこれやばいだろ……、と思った矢先にも今度は昨日……じゃなくて今日の夜にまで声が聞こえまして……。

 怖くてなに言ってたかもう忘れましたわ。


 ここで俺は全力で割りとマジメにヘルプミーをさせていただきますぜ。


「そろそろ俺も霊かなんかにとりつかれたんですかね……」


「ならそろそろ金縛りの時期かな?」


「割りと真面目にやめてくださいよ……」


 こればっかりは洒落になりませんわ……。

 困ったな。うちの艦に霊感強かったりこういう霊関係詳しいやついないから調べてもらうこともできない……。

 俺自身こういう霊関係とは無縁だったんだがな……。むしろ嫌われてるんでねってくらい出てこない。


「さっさとこんなのから開放されたいわ……。一体俺が何したって言うんだ……」


 ……悪いが俺自身悪いことはした記憶ないでよ?

 いや、マジで。割とマジで。


「……新澤少尉にとりついた幽霊か……、または、」


「?」


 海原副長が珍しく自分から会話に入ってきた。

 しかも、こんなどうでもいい話に。

 ……いやまあ、俺的にはどうでもよくないんですがね。


「……あれの可能性もあるな」


「あれ? ……なんですそれ?」


「その一番最初に声を聞いたときに食堂で話題になってたらしいやつだ」





「……艦魂だよ。それの声かもしれなかったりしてな」





「いやいや、ナイナイ、無いですよそんなの」


 俺はそれを即行で否定する。

 あのですね? そんな俺なんかが来るわけないでしょ?

 理由が見当たらないですよ? 俺なんかに来る理由が見当たらないですよ?


「しかし、確かに状況はあってるな……。あんたの爺さんいわく、艦魂が見える少し前から声は聞こえるんだろ。それもしつこく」


 今度は潮崎航海長だ。

 ……この人まで肯定派かいな。


「まあ……、らしいです」


「ほれ見ろ。……状況が見事にマッチしてるじゃないか」


「いやいや……、んなまさか」


 単なる偶然かなんかだろ?

 そんなオカルトチックなことほんとにあるわけ……。


「艦魂は例外なく女らしいしな……、爺さん関連で好かれてるんじゃねえか?」


 今度は同じ航海科の人だった。

 面白がってんだろう。笑いながら言ってやがる。この野郎他人事だと思って。

 ……つうか、


「俺なんかが好かれるわけねえだろ。どこにその要素あるんだよ」


 一体どこに俺がモテる要素があるのか。

 むしろあるわけないと思ってるし今までの人生そんな感じのことされたこと……。


「同じやまとだし、昔の記憶持ってたりしたらワンチャンあるで?」


「ワンチャンの前にとっくにその可能性を捨ててるよ」


 あと俺にワンチャンあるとも思ってない。


「……しかし、お前もお前で少しは自信持ったらどうだ? 性格的に見ても結構いい線いけると思うぞ?」


 そういう航海長の顔も微妙に笑っている。

 ……本気なのか冷やかしなのか。それとも半分半分なのか。


「自信持つも何も、俺の一体どこにそんな要素があるので?」


「明るくて周りに気を配れる男は結構受けいいぞ? 俺が女なら高評価だ」


 アッー!


「ホモは帰ってどうぞ」


「おいこら」


 やっぱホモかよぉ!(絶望)


 ……と、冗談はおいといてだ。


「……というか、仮に艦魂の声だとしてでもですよ。なんで俺なんです? ほかの人には聞こえていないのに」


「爺さん譲りじゃないか? 先祖代々そういう能力引き継いできた的な」


「それだと俺のお父さんまで見えるってことになるんですがそれは……」


「お前の親父さんなにやってたっけ?」


「潜水艦乗りです」


「……ありえるな」


「ワンチャンあるで」


「ナイナイ」


 俺のお父さんに限ってそういうのはない。

 というか、あの人そういうオカルト系あんまり信じないタイプだし。


「……しかし、これでマジで見えたら面白そうだな。一体どんな反応するのか」


「見えたらね……」


 考えたことないな。ありえない話のことに基本頭使わないし。


「こいつのことだ。たぶん驚きすぎて叫ぶな」


「いや、むしろ逆だろう。事実的に唐突過ぎて固まるに一票だ」


「じゃあ俺は間とって呆然するに一票」


「もう一週回っていつもどおりの反応するんでね? ……に20ユーロ」


「てめえら何の賭けしてんだよ」


 航海科のメンバーが基本的にフリーダム過ぎる。

 どうしたらいいんだこいつらは。


「……でも、割と真面目に期待できそうだ。もし見えたら報告してくれ」


「いやだから見えないですって……」


 もう空気的に俺が後々見えるフラグになってるけど、このタイプのフラグって逆効果だった記憶があるんだがな……。


 ……と、


「皆おはよう。……今日も日の出がよく見えるな」


 織田艦長が艦橋に上がってきた。


 俺たちはすぐに艦長のほうを向いて敬礼する。

 海原副長が代表して挨拶した。


「おはようございます艦長。……今日も不定時間から訓練の予定であります。いつもどおり、実弾です」


「うむ、聞いている。……しかし、最近実弾演習多いな。いくら憲法改正で再軍備に伴う予算増額が影響してるとはいえな」


「はい。まったくです」


 今日も今日とて訓練ですか。しかも実弾。

 確かに、憲法改正に関連して再軍備をするに伴って予算も結構割り振られてるとはいえ、よくそんな訓練用の模擬弾とこっちが消費する実弾補充する分の金持ってるな……。

 というか、模擬弾はまだいいよ。

 こっちのほうに限って言えば、ほぼ間違いなくミサイル使うからVLSのキャニスターごと換装しなきゃいけないけど、ミサイルはもとよりキャニスターも結構高いんだぞ?

 しかも、VLSからミサイル撃った後って甲板もその熱でそれなりに溶けるから大変という……。

 ……まあ、最近のはその甲板周りは耐熱素材ふんだんに使った甲板使ってるからあんまり解けなくなったけど。やまとなんて設計段階からそれ最大限に考慮してるし。


「……まだ就役して数ヶ月だしな。とにかく本艦の性能をよく見てみたいんだろう。どれだけの状況に対処できるか、な」


「イージス艦並みの同時補足能力を保ちつつ絶対的な撃墜能力を持つ本艦のテスト……、といったところでしょうか?」


「日本自身としては初めての試みだ、そりゃ不安もあるんだろう。……まあ、我々としてもいい訓練だ」


 そういって艦長席に座る。

 ……新たなコンセプトの最新鋭艦ゆえの試練かね。大変やな。主に俺たちと艦自身。


「……で、」


「?」


「……なんか艦魂が云々って聞こえたんだが?」


 艦長、あんたどんだけ耳いいんですか?


「ああ、こいつが最近謎の声が聞こえるとかどうとか……」


 それに答えたのは航海長だった。


「例の新澤君のおじいさんが言っていたものか。……これを、若者の言葉でフラグといって言い表すのかね?」


「つまり見えるフラグってことですか……」


 確かに条件はそろってるけどさ……。


「中々面白い話だ。これで本当に見えるようになったら、先祖代々の能力が引き継がれたことになるな」


「こんなことまで引き継ぎますかね……?」


 その場合この世の中がオカルトじみてすごいのか、それとも俺の爺さんや祖父がすごいのか……。

 ……どっちにしろとんでもないな。

 神様ふざけすぎといわんばかりに。


「……最初に聞こえたのは先週の金曜だな?」


「ええ、まあ」


「……なんとなくもうそろそろきそうだな。本人が」


「早いですよさすがに……」


 たった一週間で見えるようにとか、それはそれですごいのかやばいのか……。


「……問題は、」


「?」


「……その見えるようになった理由だな。霊感が強い云々とか、そういう言い伝えがあるが……」


「理由か……」


 ……それはそれで全然思い浮かばないしな~……。


「どうせこいつのことだから選ばれたんだろ。爺さんつながりで」


「それさっきも聞いた」


「逆に自分も気づかなくて互いにびっくりして叫ぶに……」


「賭け事はもういい」


 というか、空気が完全に後々見える方向に行ってるわ。


 ……はぁ、


「……これいつ収まるのかな……」


 そう思ったときだった。








“……ふぁあ~~”








「……え?」


 また聞こえた。

 最近はっきり聞こえるようになりまして、


 ……これ、あくびかなんかか?


「? どうした?」


「いえ……、また聞こえまして」


「え? また?」


「またです」


「ほう……」


 これには周りも少しざわつき始めた。

 艦長も口を開く。


「……うそにも見えんしな。こう頻発すると、冗談抜きで考えてみるのが得策かもしれん」


「……」


 ……ここまでくると確かに考えてみたほうがいい気もするけど……。


 う~ん……、





「(……どういうことなんだ……これ……?)」










 俺は答えも出せずただただ考えにふけった…………

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