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『やまと』 ~戦乙女との現代戦争奮戦記~  作者: Sky Aviation
序章~すべての始まり~
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艦の日常

―5月5日(火) PM10:30 横須賀海軍基地 DCGやまと―




「……せっかくのこどもの日なのに曇り……」


 といっても、それほど分厚くないけど。


 5月5日はこどもの日。

 ということで、ちょうど寄港中だし私のほうでもそれの一環でこいのぼり揚げてます。

 ……でも、風はあるにしろ空が灰色曇りなので全然映えません。


 空飛ぶ魚ははためいても空が青くないと全然綺麗に見えないのです。


「……これ一日中こうなのかな……」


 今日の天気予報、こっそりと食堂に行ってテレビ見てみたら今日一日中曇りのような晴れのような。

 ……もう少しはっきりさせなさいよ天気予報。

いろんな意味で天気予報を予報してないじゃないのよ。


「……今日は訓練もないし、暇だなぁ~」


 次に母港から出港するのは明日。

 それまでな~んにもすることがない。

 海に出たらそれこそ航海に忙しくなるけど、港にいるときは全然することがナッシング状態……。


 ……いや~、暇である。


「……ほかの人たちも暇そうだなぁ~」


 私は今いる右舷見張り台から艦橋内部に繋がる隔壁扉のほうを見てつぶやいた。

 そこには、艦橋内部で暇をもてあましてる乗員の姿があった。

 ……人数は少ないけど、皆暇そうですな。





「それでさ、そのときのそいつがなんていったか知ってるか? ……「それとこれとはまたべつだ」だってさ」


「いやいや思いっきり同問題だろ」


「確かに」


「だろ? だからそういったら向こう汗水たらして逃げてよ。……まあ、こういうのも今となっちゃ良い思い出だわ」





 そんな笑い声交じりの会話が聞こえる。

 どうやら昔話でもしてるみたいね。

 学生時代でしょうね。……まあ、生まれてこの方艦である私には無縁な話だわ。


「……軍艦なんてその学生云々すらほとんどないし……」


 しいて言うなら進水してから就役するまでの期間がせいぜいそれに当たるかしら。

 ……でも1ヶ月ちょいしかなかったんですけどね。


 ……で、そんなのを聞いても残念ながら暇つぶしにしかならないわけで、

 ぶっちゃけ言うとそういう系の暇つぶしは今までに何度もしてきてもう飽きたんですよね~……。


「……ほかの艦のみんなもほとんど出払ってるしなぁ~」


 どうやら今回はほとんどが横須賀から出払って訓練中らしいです。

 米軍の方々もいません。

 ……いつもなら結構近くに『ロナルド・レーガン』さんがいて何でかしらないけどみんなのムードメーカー的役割してくれるから結構楽しめるのに……。


 ……まあ、よくやるものといったら日本で学んだらしいオヤジギャグくらいだけど。それも、結構寒い。

 うけたことなんて数えるくらいしかない。

 ……でも、本人としては「むしろ向上心に燃える」とかどうとか言って鍛えてるらしいけど。


「……ここから叫んだら誰か振り向いてくれるかな?」


 なんてことを思ってみるけど、まあそんなことはあるはずない。

 ……だがしかし、


「……レッツ挑戦心」


 とかよくわからないことを言いつつとりあえず……、


「えーっと……」








「暇だよおおーーーーーー誰かいないかあああーーーーーー!!!!」








 ……なんて叫んでみた。

 それだけ暇なんです。誰かいませんかマジで。


 ……まあ、かといってこんなので振り向いてくれる人なんて……、


「……ん?」


「?」


 ……と思ったら、艦橋内で相変わらず会話していた乗員の一人がこっちを向いた。

 しかし、すぐに首を傾ける。


「……え? 聞こえた?」


 ……いやいやまさかね。そんなはずはなし。

 私は艦魂。人間に見える存在じゃないのに聞こえるわけはない。

 声だけ聞こえて姿は見えませんとか都合のいいこともあるわけないし。


「……偶然ね。うん。偶然」


 まったく、偶然って怖いわね。

 こんなときにタイミングよくね。

 神様も面白いことをしよるわ。


 ……すると、


“あのー! 誰か呼びましたー!?”


「? ……あ、いなづまさん、おつかれさまでーす」


 一人の声がした。

 こちらは聞き覚えがある。

 同じ横須賀にいる『いなづま』さんね。


 ただし、この場にはいない。あくまで聞こえるだけ。

 一種のテレパシーみたいなものと見ていただいてかまいません。

 でも、ここで聞こえるということはもう横須賀に近いわね。たぶん訓練から帰ってる途中だと思う。


「そっちもう終わったの?」


“はい。今日も疲れました~、ていうかひどいですよ? 訓練で一体ミサイル何発来たと思います?”


「……汎用駆逐艦だし、せいぜい10発くらい?」


“20発です”


「訓練で!?」


“しかもミサイル使用できません。イルミネーターやられて使用できない想定みたいです”


「……え? じゃあ速射砲だけ?」


“……はい”


「えー……(汗」


 それなんて無理ゲーよ。

 ありえそうな設定だけど汎用駆逐艦でそれは厳しいでしょ。

 というか、『いなづま』さんって確かどちらかというと旧式よね?

 ……訓練だから模擬弾だろうけどよく撃ち落したわね……。


“……これどっちかって言うとイージス艦の仕事ですよね? やまとさんみたいな”


「はは……、で、結局どれだけ撃ち落せたの?」


“2,3発逃がしました”


「それでも半数以上落としたのね……」


 状況にもよるけど汎用駆逐艦でそれだけ撃ち落せたら御の字だと思うわ。


「……というか、模擬弾使ってたわよね? あれって撃ち落せなかったらどうなるの?」


“一定距離で勝手に自爆しますけど?”


「……え? アレそういう仕様なの?」


“え? むしろ知らなかったんですか?”


「……」


 …………。


「……模擬弾使った訓練だと気合入っちゃって全部撃ち落しちゃうから……」


“えええーーーー!!??”


 いや、だって……、久しぶりにこうやって実弾できるもの……。

 前世でもまともに撃てなかったのに、こうやって思い切って撃てるのってほとんどないし……。


“……最新鋭艦め……”


「し、仕方ないじゃない。そういうコンセプトで作られたらしいし……」


 乗員の人が言っていたのを思い出す。

 私ことこの艦やまとはとにかく“イージス艦並みの同時捕捉能力を 持ちつつ絶対的な撃墜能力の保持”をコンセプトに作られたらしい。

 ……だから我ながらこんなにぽんぽんと撃ち落せるのね。最新機器のおかげでミサイル誘導しやすいし。


“……私もイージスシステムあればこれくらいのミサイル……ッ!”


「いやいや汎用駆逐艦のどこに載せろと……」


 スペースが少ないわね……。

 大型化含めた大規模改修まった無しだわ。


“……とりあえず帰ったらコツ教えてください。なんとなく今回の成績には納得いきません”


「艦のことなのにコツって言われてもねぇ……」


 ぶっちゃけ電子機器とかの関係だから私にはどうしようもないようなそうでないような……。


“誘導のコツだけでかまいませんので。とりあえず”


「う、うん……。わかったわ」


 とりあえず、できる限りのことはするかぁ……。


 ……まあ、とりあえずこれなら、


「(……この後は暇しないですむかな~)」


 さて、向こうが帰ってくるまで少しのんびりしてますか~。

 そう思ってとりあえず艦橋上の開いてるスペースに向かった。

 あそこ、寝るのにちょうど良いしね~。


 ……さ~て、まだ時間掛かるだろうし、少し寝てますか~……。









「? どうした?」


「いや……、さっきの叫び声が気になってさ……」


「だから、気のせいだって。幻聴かなんかだろ?」


「そうかな……?」


「後で昼寝でもしとけ。それが一番だぜ」


「はあ……、そうですか……」











「(……でも気のせいにしちゃ結構はっきり聞こえたんだよなぁ……)」

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