雛原詩織視点(19)
幾分か体調はよくなったものの、まだ本調子が戻らなかった。風邪が治りそうになって油断していると、またぶり返すのだ。
家族や学校のクラスメイトに気を使われないようにと、まだ熱があることはひた隠しにしている。
登校する前に、温度計で熱を測ってみたら三十七度。微熱程度だが、歩いているとたまに、くらっと倒れそうになる。
学校にいる間は本当にしんどくて、どんどん熱が上がっている気がした。保健室に駆け込みたかったが、そんなことをすれば、保険医は担任の先生に連絡してしまうのがオチだ。
だから休み時間や昼休み時間に寝てしまい、少しでも体力回復に努めたかったのだが、それを麻美が許さなかった。
麻美は上機嫌な笑みを振りまきながら、私に話しかけるので、私もそうそう拒否できなかった。彼女が私と話すのを、楽しがってくれるのは嬉しかったのだが、体調悪化になったのは……。いいや、他人のせいにするのは止めよう。
携帯が振動する。それは麻美からのメールで、今から私の家の近くにある公園で待ち合わせしようというメールだ。しかもかなり重要な話らしく、今日じゃないとだめらしい。
麻美は他の女友達と話していて、今日は無理だと言いにくい雰囲気だ。それに、まだ麻美と私が教室にいるのに、口頭で待ち合わせの旨を話さないということは、誰にも聞かれたくないってことだ。
私は自分の身体に鞭を打って、待ち合わせ場所に行った。