黒葛陸視点(7)
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「……くそっ! どこだっ!」
思い当たる所はすべて探した。
俺の家にもあいつの家にもいなくて、いつも一緒に遊んでいた公園にも、あいつの姿を確認することはできなかった。
詩織が家出してしまったのは、初めてのことだった。
どうしてそんなことをしてしまったのか、少なくとも俺には心当たりがない。
あえて理由を適当に見繕うとするならば、風邪を引いて、今日早退してしまったことぐらいだ。だけど、それが家出とどう関係しているのか答えろと言われても、返事に窮してしまう。
それとも詩織のおばさんが危惧していたように、誘拐の類なのだろうか。それはないと、詩織のおじさんは否定してい たが、もしものことを考えると、胃の辺りがきゅっと締まる。詩織から未だに何の連絡もないのに、そんなことはないと断言できる程、俺は楽観的ではない。
今はおばさんが学校のクラスメイトの家に片っ端に電話しているようだが、まだ見つかっていないらしい。いよいよとなったら警察の出番らしいが、そうなる前に俺がなんとか見つけ出したかった。
詩織のことを何もしらない警察なんかよりも、俺のほうがよっぽどあいつのことを理解している。
それを証明する為にも俺が先にみつけてやらなきゃいけない。
先に見つけて、俺はあいつの特別な存在だってことを見せつけてやりたい。誰に、というわけじゃないけれど、誰かに。
それが邪な感情だってことは理解していた。この非常事態に不謹慎な思想だってことは把握していた。
それでも……それでも俺は、あいつの傍にいるって約束したんだ。
俺は自分の信じた道を突き進んだ。