ギルド【レイリー】5
モーガン卿とのトラブルから約10時間後。
ギルドの営業が終了すると同時に【ギルド長】【副ギルド長】【納品部門業務統括】【ミミルを含むその他数名の職員】を会議室に私は呼び出したのだった。
「副ギルド長。突然なんだっ!」
営業終了と同時に急遽ひらかれた会議に文句を言うギルド長。
他の職員も不満気な視線を副ギルド長に向けていた。
複数の視線に副ギルド長は私にちらりと視線を向け、
「それは……」
「私がマーリンさんにお願いしました」
マーリンの言葉を遮り、私は会議室の壇上に立つ。
するとギルド長が怒りで顔を赤くして私に怒鳴り声を上げる。
「貴様。一般職員の……たかが受付嬢が何の権限で……この時間にふざけているのかっ!」
「そうね」
ギルド長の怒声を受け流し、私は話を続ける。
「まず、私がここに居る理由ですが……」
言葉を区切ると、【ギルド長】【納品部門業務統括】【ミミル】へと視線を順に向けてから私は再び口を開く。
「王都支部の調査のためだったのよ」
「調査?」
首を傾げるミミルに私はコクリとうなずく。
「そう。ここ王都支部の依頼者からの苦情が他と比べて約2割程高くその原因調査のためにね」
新人や低ランク冒険者が多いから経験や知識不足からくる苦情だと思っていたけど……フタを開けてみたら……ねぇ。私は心の中でため息ひとつ。
『えっ!』
数名の職員が私の言葉に反応する。特にミミルの表情が一気に青くなる。
ちらりとミミルへ目を向けてから私は皆へ伝える。私の調査結果を……
依頼主からの苦情は主にある受付嬢が担当した依頼で発生していた。
その受付嬢の正体は……ミミルであった。彼女の不正の証拠をつかんだのはタタール家からの依頼だ。その手口は掲示板に貼り出す前の依頼書の束からいわゆる当たりの依頼をこっそりと抜き取っていたのだ。そして、その依頼を特定の冒険者……いわゆる貴族の子息や金持ちであったりと社会的に高い身分を持っている者に振り分けていたのだった。
ちなみにミミルに専属冒険者をもつ権利は無い。彼女だけではこの不正は難しい。ミミル以外の職員もこの件に絡んでいるのだ。
そして、私は不正に関わっていた職員【ギルド長】【納品部門業務統括】【ミミルと職員3人】の計6名の名を告げた。
「今回は本当に危なかったわ」
私がここに派遣されるタイミングが少しでもズレていたらと思うとゾッとするわね。
王家が絡む依頼が我がギルドの納品物のせいで失敗なんてことになったものなら……その影響は計り知れないわよ。
そんな事を考えつつ、ため息を吐くと私は気を取り直し、
「何はともあれ不正に関わっていたあなた方は処分が決定。通達されるまで自宅謹慎となります。逃げようなどと思わないでくださいね。
残念ながら王都から出られませんから」




