ギルド【レイリー】2
風邪気味で体調悪いです。
皆さんも体調気をつけてください。
深夜。
「まさかこうも早く……」
つぶやき通信機を操作する。
………………
「ふわぁっ!」
更衣室で制服に着替え終え、私は受付窓口――仕事場に向かう。
「おはよう」
同僚に朝の挨拶をしつつ席に着き、引出しから受付業務に必要な道具一式を取り出しながら私は再び欠伸を一つ。
「……っぁ」
「寝不足?」
背後からの声に私は欠伸の形で硬直。顔だけ向ける。
そこにはコーヒーカップを2つ手に持つケイトの姿。
「おはよ。
昨日、ちょっと夜更かししちゃってね」
言って苦笑いを浮かべる私。そんな私にケイトはニヤリと笑い。
「ひょっとして彼氏でもできた?」
「ちがうちがう。仕事でちょっとね……って、ケイトはその手の話……本当に好きだよね」
「大好物だよ」
ニコニコと答えるケイト。
コーヒーカップを一つ私に手渡す。
「でも、サリナ美人だし……本当に彼氏居ないの?」
「居ないよ。つくるつくらない以前に……ほら、私。移動多いから…暇ないのよね」
私の言葉にケイトは天井を見上げ、
「サリナって……本当に移動多いよね。多いと言うよりも異常な回数よ。でも、なぜそんなに移動が多いの?」
ケイトの何気ない問いに答えようと口を開きかけたその時、複数ある受付窓口の一つから声が響く。
「おはようございます。
今日の依頼はこれとこれ……あとは、これがおすすめですね」
「今日はどれにするか?」
私が目を向けるとそこではとある冒険者グループが受付嬢が提示した依頼書の内容を吟味していた。
派手な武具防具に身を包んだ5人。彼等は装備から分かる通り貴族の子弟だ。
リーダーの男は子爵家の嫡男。残り4人も男爵家の次男と三男だ。
そんな一行に冷めた目を向けるケイト達ギルド職員。
「ミミルさん。何度も言いますけど、まだ受付時間前よ 」
同僚の1人が注意するもミミルは冒険グループの依頼を処理しつつバカにした目を向け、
「私は専属冒険者持ちのエリート職員よ」
ニヤニヤと笑う。
「そして、彼等は私が受持つ専属冒険者よ。だ・か・ら優遇されるの。フフフ」
「そんなわけないでしょ」
新規依頼書の束を手に掲示板へ足を向けつつ私はミミルに言った。
足を止め、依頼書を掲示板に貼付ける私。ミミルは私をキッと睨み付けてわめき出す。
「本部から左遷されてきた……無能が偉そうに私に意見するな!」
ミミルの言葉に冒険者達も続く、
「うわぁ。無能がいきがっちゃってんの?
痛いなぁ」
「そうそう。俺達はギルドのトップ冒険者であり、貴族なの。あんたらとは格が違うんだよ。格がね」
「そして俺等の家はここの出資者。そんな俺等に逆らったら……なぁ。アハハ」
言って笑い出す冒険者パーティー。
ミミルと彼等を呆れつつ見つめる私の横で、
「くっ」
話を聞いていたケイトが悔しそうに息を吐き。遠巻きに成り行きを見守っていた他のギルド職員達も悔しそうに眉間にシワをよせた。
十数秒の後。
「我がギルドはレイリース子爵家の直轄組織で出資はもちろんのこと……運営には他家は一切関わってないはずよ」
「フフフッ」
ミミルは今日何度目かのバカにした目を向ける。そして彼女は私の傍まで歩み寄り、小声で……
「上が認めれば問題ないわよ……バカね」
嘲笑うミミル。
「上……ねぇ」
どの辺りかな?
私はつぶやき天井を見上げ、王都支部役員の顔を思い浮かべるのだった。




