人生の絶頂 消化試合面接にて無礼の極みを尽くす
俺は中堅私大4年のしがない就活生だ。
可もなく不可もなくのメリーゴーランド人生を送ってきた俺だが、先日ようやく、第一志望の大手企業から内定を貰えた!
これで俺も、30代半ばには年収1000万濃厚、合コンでもモテモテ、同窓会にもデカい顔して行けるんだ!
しかし、就活もまだ正式に終わりではない。第二志望の中堅企業の最終面接を明日に控えている。
消化試合だが、前日にキャンセルするのも迷惑だろう…よし、落ちてもデメリット無しだ、ここは盛大にふざけよう!
そうして俺は、元手芸部の経験を活かして、あるキャラクターの衣装を作成した。その名はかの有名な少年漫画の悪役、名言製造機として有名なあの男である。
〜〜あるビルの面接室にて〜〜
「では、お入り下さい」
「ようこそ…私のソウルソサエティへ」
面接官A(?????????????)
面接官B(え?今なんて?それに彼の格好、スーツじゃない?あの羽織り…若い頃に何かの漫画で見たような…)
「あの?ふざけているのですか?ちゃんと答えないと退場していただきますよ?」
「君たち如きがこの私に判決か…いささか滑稽に映るね」
「あの!真面目に答えて下さい!こっちだって時間は無限じゃ無いんですよ!」
「何を恐れることがある?110年前のあの夜に既に君たちは死んでいると言うのに」
「ダメだこりゃ…まるで話にならん…これまでの面接官は何をしていたんだ…」
「余り強い言葉を遣うなよ…弱く見えるぞ」
「まあ仕方ないですよ…次の面接まではまだ20分ほどあるので…」
「では、そちらの椅子におかけ下さい」
「議論は終わったようだね。ではそろそろ、両手の戒めを外して、私を椅子から解き放ってくれるかい?」
(座れって言ったんだよ…)
「では、早速ですが志望動機からお聞かせ下さい」
「進化には恐怖が必要だ。今のままではすぐにでも滅び消え失せてしまうという恐怖が」
「なるほど、弊社で困難を乗り換えて成長したいんですね。では、貴方が学生時代に力を入れたことを教えて下さい」
「最初から誰も天に立ってなどいない。君も僕も神すらも。だがその耐え難い天の座の空白も終わる。これからは私が天に立つ」
「なるほど、高みを目指して自己研鑽を頑張ったんですね。では、貴方の強みはこれまでの選考でたくさん聞きましたので、弱みを教えて下さい」
「首の後ろは生物の最大の弱点だ。そんな場所に何の防御も施していないと思ったかい?」
「なるほど、抜け目無いですね。では、貴方の座右の銘を教えて下さい」
「滲み出す混濁の紋章
不遜なる狂気の器
湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き 眠りを妨げる
爬行する鉄の王女
絶えず自壊する泥の人形
結合せよ 反発せよ
地に満ち己の無力を知れ
破道の九十 黒棺」
「なるほど格好いいですね。では、仕事でクレームを受けた場合はどうしますか?」
「敵襲だ、まずは紅茶でも淹れようか」
「余裕があっていいですね。では、貴方の挫折経験を教えて下さい」
「君は本当に黒崎一護かい?今の君からは霊圧を全く感じない。君は進化に失敗したのだ。私の与えた最後の機会を取りこぼしたのだ」
「なるほど、天塩にかけて育てた後輩が上手く成長してくれなかったんですね。では、貴方のチームにモチベーションが低い人がいたらどうしますか?」
「才能も無く、努力もせず、そのくせ与えられるものに不平を言って、 努力する人間の足しか引っ張れないような奴は、 目を瞑ってどっか隅っこに挟まって、口だけ開けて雨と埃だけ食って辛うじて生きてろ」
「手厳しい意見ですが、一理ありますね。では、貴方の尊敬する人や、憧れている人はいますか?」
「いい機会だ、一つ覚えておくといい、日番谷君。憧れは、理解から最も遠い感情だよ。」
「一理ありますね。では、意味の無いルールでも絶対に守らなくてはいけないと思いますか?」
「理とは理に縋らねば生きて行けぬ者の為にあるのだ。さあ、行こう。理の果てへ」
「なるほど、そういう考え方もありますね。では次は…」
「貴様!!!!さっきから聞いていれば!次から次へと訳の分からないことを!!!今までの面接ではまともに答えていたのだろう!!我々を騙していたのか!!!!」
「騙したつもりはないさ。ただ君達が誰一人理解していなかっただけだ。僕の本当の姿をね。君の知る藍染惣右介など最初から何処にも居はしない」
「貴様!!!!我々をここまで馬鹿にしよって!!これは儂のためでない!我が社の名誉のために怒っているのだ!!!我々への無礼を詫びろ!!」
「今の君は憎しみなど無くただ責任感のみで刃を振るっている。そんなものは私には届かない。憎しみ無き戦意は翼無き鷲だ そんなもので 何も護れはしない。無力な仲間の存在はただ 脚をへし折る為の重りにしかなりはしないのだ」
「金輪際内定など出すものか!!!今すぐこのビルから出ていけ!!!」
「さようなら、死神諸君。そしてさようなら、旅禍の少年。君は人間にしては実に見どころがあった」