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1話 泥濘 (1)

 部屋の外でドタバタと騒がしい音が鳴り響く

その音で目が覚めて布団から出て部屋のドアを開けると


「おはよう!優!」


 音の正体の主が僕の顔見て挨拶した後に家の中を走り回ってる


「朝から何を探してるの?母さん」

「いつも置いてる場所から自転車のカギがなくなってるのよ」


 結構な頻度で起こる母さんの紛失事件だが、いつも事件はすぐに解決する。


「母さん自分のズボンのポケットの中

探してみた?」

「ポケット…あ…」


 朝起きて着替えてすぐカギだけ取って色々準備したら忘れたらしい。

 本当に母さんはおっちょこちょいだな〜

とかは思わないが女手一つで僕を育ててくれた偉大な母だからちゃんとサポートしないとなと毎日思うわけで。


「優ありがとう!母さん仕事いくから朝ご飯机の上だからちゃんと食べて学校行きなさいよ~」


 そう言うと走って玄関から飛び出していった。

 僕も着替えて学校に行く準備しないと。

 部屋は散らかってるけど、また今度片付けよう

母さんにも手伝ってもらわないと。


 僕は準備をして家の玄関のドアをあけ外に出ると寒くて吐く息が白い煙にかわる。


 学校にむかう、いつもの道中に同じ学校の生徒らしい集団が大きな声で何やら騒いでる


「おい!まただってよ」

「何が?」

「また消えたんだよ、俺らの学校の生徒が」

「今度は誰が消えたんだよ?」

「わかんねぇけど…」

「誰も消えてないし気の所為だろ」


 僕の学校では、ある噂話で盛り上がってる。


 学校の裏側にある神社で神様にお願いをすると

その願いを叶なえてもらえる。

 だが、叶えてもらう代わりに願いを叶えてもらった生徒は行方不明になってしまい行方不明になった生徒は最初からいなかったみたいに皆忘れてしまうらしい

 それなら、なぜこんな噂話が広がったかと言うと、みんな覚えてないが誰かがいた事を覚えている人達が数人いたから。

 顔や名前、どんな人だったかは覚えていないが確かに誰かいた事を…

 元々は学校の七不思議の一つらしいのだが最近、誰が消えたんじゃないかと言う人増えているため皆面白半分で話してる。


 本当に何人も行方不明になってるんじゃないかと皆楽しそうに話してる。


「おーす!優」


 本当に楽しそうに…。


「おーい!!優聞いてるか?」


 バン!! 

 急に背中を叩かれた。

 後ろを振り返ると変な髪型した変な同級生が立っていた。


「優、今失礼な事考えてなかったか?」

「まさか、今日もイカした髪型してるって思っただけだよ」

「そうだろそうだろ〜」


 この人は小さい時からの幼馴染、宮本友哉。

 毎日違う変な髪型をしてくるため1年生の間は注目を集めていたが髪型のバリエーションが少ないのと1年たち2年生になって皆飽きてしまったために、ただの変な奴とし認知されている。

僕からしたら変な良い奴だけど。


「朝から暗い顔してどうしたんだよ?」

「皆が話してる噂が気になって、友也は知ってる?」

「あ〜願いが叶う神社だろ?本当に叶うのかね〜?俺は信じてないけどな」


 学校の正門に近づいてきた、その時に


「キャー!!」

女性の悲鳴が聞えてきた


「あ〜今日の挨拶運動は阿部先生だな」


 うちの登下校時には門の前に毎日日替わりで先生が立ち挨拶運動をしてるのだが、今日立ってる阿部先生は社会の先生で僕的には良い先生なのだけれど、見た目がしわしわのシャツに肩まで伸びたボサボサの髪に無精髭おまけに生気の宿ってない目だ。女子人気はあまり無く陰で不審者ってあだ名で呼ばれてる今日も女子に挨拶しては叫ばれてるらしい。


「お〜宮本に月嶋〜おはよう」

「おはようございま〜す」

「おはようございます」

「今日もテンションアゲアゲで頑張っていこうぜ〜」


 阿部先生この見た目で性格は明るいからか男子からの人気まぁまぁあるらしい。


 学校のクラス着いて席に座ると、さっきの話が頭から離れないからなのか考えてしまう。


 行方不明になるって事は、その神様に消されるのかな。


 それは死んでしまうって事なのか


 まぁ、皆から存在事忘れられてしまったら

それは死んでる事と変わらないと僕は思うけど


「授業始めるぞ〜」


 学校のチャイムがなってた事にも気づかなかったのか先生の声でハッ!と我にかえる


 暗いこと考えると止まらなくなってしまうのは悪い癖だなと自分でも思う


今日も母さんは帰って来るの遅いと思うし

晩ごはん何にするか考えないと


「(次はお主の番だ)」


ガチャン!

突然聞こえる声に驚き反射的に体が動く。


「おい!突然立ち上がってどうしたんだ月嶋?」

「え?今僕の番って?」

「うん?今日の日直当番は犬宮だよな?」

「はい…私です」


 同じクラスの犬宮さんから冷たい眼差しが送られてくる彼女はお金持ちの令嬢らしくウェーブがかかった栗色の髪に赤いリボンが結ばれ。

その美しい顔立ちもあり男子と女子両方から

人気が高い。


「すみません…僕の勘違いです…」


静かに席に座り直す

けれど今さっきの声は確かに聞こえた

耳もとではなく頭の中に直接叩き込まれたような


 席が離れてる変な髪型のやつがが肩を震わせながら必死に笑うのを我慢してるのが見える…。


 疲れてるのかな?今日もバイトがあるのに。

 早く帰らせてもらおうかなと思うけど、瑠奈さん1人だと心配だし頑張ろう。


   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 学校が終わり家の近くの商店街の端っこにある

昔ながらの古びた純喫茶前にきた。

店の名前はメロン、ここに高校入学してからすぐアルバイトとして働かせてもらっている。

 カランコロン

 ドアを開けると鐘の音が店内に響く

「瑠奈さんおはようございます」

「はい!おはようございます優くん!今日もよろしくね!」

 この眼鏡をかけて長い黒髪をお団子にして結んでる女性は大森瑠奈さん、純喫茶メロンの店長で母さんの幼馴染。

 瑠奈さんがバイトを探してる時に僕が高校入学したのでタイミング的に良かったのか母さんにも

勧められて来る事になった。

「優くんがここに働きに来てくれてもう1年以上たつのか〜」

「そうですね僕も高校2年生ですよ」

「高校2年生か、考え深いものがあるよ」


 ここの店には商店街の中にあるって事もあり客層は年配の方が多く僕は簡単な飲み物作りと配膳と洗い物が主な仕事だ


「大森ちゃんの作る珈琲はいつも美味しいね〜」

「八田さんいつも飲みにきてくれてありがとうね!」

「瑠奈ちゃんアタシにも珈琲を一杯くださる?」

「田村さん喜んで作らせてもらいますね!」


 瑠奈さん自身とても人気があるが、瑠奈さんの作る珈琲はこの店に来る人ほとんど皆頼むほど大人気だ。


「優くんいつもありがとうね洗い物終わったら珈琲作るの練習する?」


 今はまだお客さんに出せるレベルじゃないけど、いずれは作って出せたらいいねって事で瑠奈さんに珈琲の淹れ方を教えていただいてる。

 僕も瑠奈さんの珈琲好きだから早く同じように淹れてみたいけど


「すみません今日は、そのまま帰らせていただきます」

「オッケーわかった!またいつでも練習していいからね、本当に花も優くんを見習ってほしいよ」

「花ちゃんも色々頑張ってると思いますよ」

「そうだと良いんだけどね~それじゃ気をつけて帰ってね」

「はい!お疲れ様です」

「お疲れ様〜」


 店を出てシャッターが閉まってる商店街の中を通り歩いてゆく。こんなにも静かだったか人が全然いない。僕は早足に進んでいく。


「おかしいよな…」


 そろそろ出てもいいはずなのに、こんなにも商店街長くないはずなのに出れない。


「約束の時がきてしまったわ」

「誰?!」


 突然女の子のような声が聞こえてきた瞬間。

 商店街の中の光が全て消えて、また光がついた時に目の前に女の子が立っていた。

 漆黒の着物着て髪は白く透き通るような肌にとても美しく吸い込まれそうな紫色の瞳。

 どこかで見たことあるような気もするが。


「君は誰?これはどうなってるの?」

「お主の願いを叶えてやった、次はお主に代償を払ってもらう番じゃ」

「何を言ってるの…?」

「大丈夫じゃ一度終わるが、また始めれる」


 少女が何を言ってるのか理解できないが、この場にいては行けないとだけわかる。

 瑠奈さんのいてる店まで戻ろう。そうしよう。

 少女と反対側の道に振り返った瞬間。


「安心せい説明はまた後でしよう」

 

 目の前に少女が現れ少女の右手が僕の胸に触れる。


「この世界とこの世界の住人とはお別れじゃ…今は眠れ」

「な…何を…」


 ドン!

 胸に衝撃が走り目の前が真っ暗になる。

少年の口からは血が溢れ、そのまま後に倒れ込む。地面黒くなり沼地のようにボコボコして。

地面にぶつかるはずの体は柔らかい黒い液体のようなものに沈んでいく。


「お主は理解できるはずじゃ一度説明を聞き、その上で約束したことじゃからな…」



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