零話 願い事
神様はいるのか?
信じる人 信じない人
信じる時 信じない時
少年は神を信じていた。
それしかなかったから。
彼はどんな願い事も叶うと噂されてる神社に何日も通って何時間も願っていた。
どんな目で見られようが
どんなバカにされようが
彼は願い続ける
少年は黙って願い思い続けていた。だが、日に日に目に光はなくなり唇を噛み締め血が滲み悲しみに包まれていた心は怒りに握り潰されようとしていた。
その日、天気悪く雨が降っていた
「神様!どうか!いるなら僕の願いを叶えて下さい!」
我慢できなくなった少年は、もう意味がないと考えながらも声に出していた
「神様!いるなら出てこいよ!ふざけるな!何でこんなにも不公平なんだよ!幸せを願って何が悪いだ!取り戻したいと思って
何が悪いだ!それが無理なら全部消えろ!この世界もろとも全て消えろ!」
音は雨によってかき消されていても少年は言葉にもならない声を心の声を全て出していた。
少年の膝は地面につき視界も下に向いたまま上がらない、もう声は出ない、体に力が入らない、何もしたくない、何も考えたくない。
「わぁ!は!は!は!」
誰かの笑い声が聞こえる
少年は動かない
「おい!お主起きろ!わしが来てやったぞ」
誰に話しかけてるのか
やけに声がはっきり聞こえる
さっきまでの雨の音が一切しない
少年は目をあげた
そこには小さい女の子が立っていた。
漆黒の着物着て髪は白く透き通るような肌にとても美しく吸い込まれそうな紫色の瞳。
さっきまで誰もいなかったはずなのに目の前に立っている。
その少女にも驚いたが、雨がやんでる?いや、やんでるわけではない雨粒がその場でとまってるのだ。
「何を呆けておる?お主が呼んだから来てやったぞ」
「何を………まさか、君は神様?」
「その通りじゃ!神様とゆう名前ではないが、お主らが神様と呼ぶ存在ではある」
「神様と呼ぶ存在…願いは…?願いは叶えてくれますか?!」
目の前の少女は微笑んでいる。
少年は少女の瞳から目が離せなくなっていた。
寒さのせいか恐怖のせいか全身から鳥肌が立ち体は固まって動けない。
「いいじゃろ、願いを叶えてやろう」
そう言うと少女は少年に近づいていく
「どんな願いじゃ?」
少女は少年の目の前でしゃがみ、少女の左手が少年の右のほほに触れる。
「僕の願いは…□□□□□□□□□□□□下さい…」
「その願いを叶えよう…だが代償が必要じゃ」
「代償…?構わないです!願いが叶うなら」
少年は必死だった願いが叶うと言われたのだ、心のどこかで無理だと思っていたけど諦めきれずいたものが目の前にあるから。
「いい子じゃの〜、では代償は何なのか説明しよう」
少女は少年の頭を撫でながら優しい口調で話す。少年は静かに少女の言葉に耳を傾けていた。
「それでも願いを叶えてほしいか?」
少年は困惑していた。今説明された代償について、そんな事があり得るのか、だがそれでも願いが叶うならと少年は覚悟を決める。目の前にいるのは神様なのだから。
「はい…お願いします」
「よし!わかった!それじゃ約束しよう!」
少女は少年の目の前に小指を突き出してきた。
「昔からあるじゃろ?指切りげんまんとゆうやつじゃ」
神様と指切り?少年は思わず笑ってしまう。
「なんじゃ?変か?」
「いえ、すみません大丈夫です」
少年も小指だし少女の小指と繋ぐ。
「そういえばお主の名を聞いておらぬかったな、名は何と申す?」
「僕の名前は月嶋優です。神様の名前も聞いていいですか?」
「わしの名か…わしの名はエニシじゃ。覚えなくて大丈夫じゃぞ」
「頑張って覚えておきますよ」
「そうか…それじゃ月嶋優よ!お前の願いを叶えよう!また会う日まで元気でな」
「はい本当にありがとうございます!」
確かに代償はあるが願いが叶う。少年の心は喜びで満ちていた。
「それじゃあの!指切ったのじゃ!」
少女と少年の指が離れた瞬間、少年の目の前にいたはずの少女は消え止まっていたはずの雨粒は振り続けてる。
「あれ?何で僕はこんな所に…?帰らないと…」
少年は雨に濡れながら歩き始める。泥にまみれた道を一歩ずつ。その身に祝福もしくは呪いを背負いながら。