【穴の開いたバケツ】政治資金規正法はどう変わるべきか?【目くらまし派閥解散】
◇“後退”の可能性がある「自称:改革」
筆者:
本日はご覧いただきありがとうございます。
今回は23年末から問題になっている「政治資金規正法」の改正について語っていこうと思います。
質問者:
ですが以前は、「パーティー寄付、政治献金など全て禁止にし、お金のかからない選挙の実現」をおっしゃっていたような気がしたのですが……。
筆者:
理想はその地点であることは今も変わっていません。
ただ、すぐさまその領域にもっていくことは難しいと思います。
わざわざ自分の活動を縛る法案を一気に出すとは思えないので、
ちょっとずつでも前進して変えていくことが大事です。
政治資金規正法に関しては、「ザル法案」とも「穴の開いたバケツ」とも言われているわけですがこれを形にするだけでも大きな一歩を踏み出せると思います。
“不正をしにくくなる”というだけで大きいですからね。
質問者:
確かに一足飛びに改革は難しいですね……。
筆者:
ただ、ちょっとずつの前進であったとしても、
しっかりと国民側が「ちゃんとやっているか」について見ていく必要があります。
「ルールを犯す人が自分のルールを作る」と言う歪な状況なので、
全く意味のないものになってしまう可能性もあります。
また、前回の1989年の「リクルート事件」の問題で改革(笑)があった際には、
「小選挙区比例代表並立制」の導入や「政党交付金」が決まりました。
この2つの制度は「党公認」の意義が非常に強まることから、
実質的な首相強化に繋がり、現在の「独裁政治」に近い状況を作った根本原因だと僕は理解しています。
このように、「建前だけ政治改革」で実情は「権力基盤強化」になっていないのかも、
国民はしっかり見ていく必要があるのです。
こういう「建前だけ政治改革」は日本にとっては大幅な後退も意味しますからね。
今回の改正の大きなポイントとしては「透明性の確保」と「民間並みに締める」という2点だと思っています。
質問者:
なるほど。国民側がしっかりしなくてはいけないことは分かりました。
しかし、今の状況でも不正をする方がいるわけなので確率論ではありますよね……。
筆者:
ただ現状の法案が「穴の開いたバケツ」の状況であること。
そしてそれを違反する人たちが更に「異常」であることを確認していきたいです。
◇すべてを1円以上の報告義務に
筆者:
まず、現行法ではパーティー券の購入は、1回20万円以下なら、名前や金額を政治資金収支報告書に記載する義務がないんですね。
5万円超が公開の対象となる通常の寄付に比べ、透明度が低く、「裏金づくりの温床」とも言われてきたのです。
質問者:
確かに金額は揃えないと不正になりますよね。
筆者:
ここで改正案としては「一律に5万円に揃えよう」と言う案になりそうですが、
僕はそれについては大きく反対したいです。
何といっても民間の会社の決算や個人の確定申告においては1円単位で提出しているわけです。
「1円以上の収入支出は記載義務」にして欲しいところです。
確定申告の制度、インボイス制度を政治資金にも及ぼすことで一般人と同等の状況において欲しいところです。
質問者:
おっしゃる通り、揃えるのは政治資金規正法の他の部門ではなく民間ですよね……。
筆者:
また、現行法では「会計責任者が尻尾切り」になることが非常に多いのですが、
冷静に考えてみて責任者が勝手に裏金を作って懐に入れたという証拠が無い限りは、
「議員事務所全体の利益」又は「派閥全体の利益」となっているわけです。
そうなると“監督不行き届き”ということになり議員や幹部にも処罰が行くべきです。
いわゆる“連座制”というやつですね。
現状では会計責任者が議員個人と何か相談をしたなどの事実が出てきて、
議員がそれを認めるとようやく共謀と認められるのです。
意図的に不正を働いている人が自白をしてわざわざ捕まりに行くなんてかんがえられないので、
現行法で議員辞職や逮捕に追い込まれているケースは正直よっぽどの“トンマ”か条文が読めない“盲人”と言わざるを得ないです。
質問者:
今回も結局注目されていた「安倍派5人衆」は立件されずにお咎めなしと言うことになりそうですからね……。
確かに会計責任者本人が使い込みや着服をしていないのなら連帯責任が行くべきですよね……。
筆者:
民間でも社長や責任者が「粉飾を下の人が勝手にやっていた」とかいう言い訳が効かないのと同じようにここもして欲しいです。
◇“訂正”の追徴課税を厳しく
筆者:
また、現状の政治資金規正法では間違った記載があっても“訂正”すればいい状況です。
国民側は、収入や経費を偽った場合、国税が調査してきて追徴課税を加えられ、場合によっては何倍も追徴として払わなくてはいけないことがあります。
この点においても政治では逮捕・起訴されないほどの悪質と認められない場合は、
「間違えました~、直しときますぅ~」
みたいな呑気な姿勢で済ませてしまっています。
このような状況を生まないためにも最低でも国民と同等の課税・追徴制度を設け、
緊迫感を持たせるべきです。
質問者:
確かに“訂正”で済ませようという雰囲気が酷いですよね……。
筆者:
痛みを伴わなければ不正を自制しようという意識も生まれませんからね。
今のところ“訂正すればいい”ので“少ない額なら不正し得”の状況のわけです。
それでも”違法ではない“というのは嘘ではないので法律の取り締まりの強化は必須です。
◇監督機関の設置
質問者:
しかし、1円単位で申告をしなくてはいけないことについては分かりますけど、
なかなか難しいと思うんですけどどうしたらいいんでしょうか?
筆者:
何と現状はこの政治資金の問題についてチェック機関がないんですね。
収支報告書は選挙管理委員会か総務大臣への提出が求められるのですが、
総務大臣や総務省がチェックするわけでは無く公開されるだけなのです。
政治家においては公人であることから政治団体の口座を公に公開し、
それを第三者機関による審査することが大事になります。
質問者:
現状は確かに野党やジャーナリスト追及、身内の告発以外は聞きませんものね……。
筆者:
政治資金のやりとりは、銀行口座やデジタル化を義務付けにし、足跡が残るようにするといった方法も有効でしょうね。
◇外国人パーティー券購入の問題
筆者:
ここからは“不正“とはちょっと別の論点なので今回の改正では難しいかもしれませんが、
必ず改革が必要な政治資金の項目について見ていきます。
まず政治資金規正同法では外国人献金を禁じている一方で、外国人による政治資金パーティー券の購入は合法となっているんですね。
このために「事実上の外国人献金」を許す形となっています。
質問者:
他国の意見が通ったら大変なのにほとんど意味のない条項な訳なんですね……。
筆者:
これがほとんど話題になっていないのはどうかしています。
次に政治家個人への寄付は、政治資金規正法によって禁止されており、資金管理団体や政党支部で受けて、収支を報告することになっています。
しかし、「政党がする寄付」は例外のため、「政党交付金」で貰ったお金を「政策活動費」などの名目で政党が党幹部らに資金を渡し、それを受け取った個人は政治団体ではないので、使途を公にする義務がないのです。
このために政党の力がより強くなり「政治家個人の喪失」に繋がっています。
この政策活動費について自民党は年17億円もありパーティー裏金金額よりも多くなっています。
二階俊博氏は、幹事長をつとめた約5年の間に約47億7000万円を受け取ったと報じる記事もありました。
政治家個人の寄付を無くした代わりの「政党交付金」でしたが、
ここまで見てきたように「穴の開いたバケツ」状態で意味が無い上に更に「新たな利権」となってしまったわけです。
政策活動費の明細の公開も必要だと思っています。
◇“政策への寄付“を「善意」にするべき
質問者:
ニュースを見ているとパーティー券の問題ばかり取り上げていますが他にも問題があるのですね……。
他には“抜け穴”はあるんですか?
筆者:
僕は“政策への寄付”と言う形で企業は影響力を増やしてくる可能性としてあると思います。
例えば、2023年11月に行われた阪神オリックス合同の優勝パレードの資金は大阪市のクラウドファンディングが1億円弱に対して企業寄付は4億円以上だったことが分かっています。
企業が“恩を売って”政策に協力し、政治家側は“中抜き”すれば「事実上の寄付」になってしまいます。
※大阪万博の事業ではパレードに寄付した会社が優先的に選ばれている。
今後は“政策への寄付”の対策もしていく必要があると思っています。
具体的には寄付者は匿名性にして返礼品、寄付金控除、費用控除などを無くす――つまり、“純粋な気持ちの寄付”にすることです。
◇派閥解消は目くらまし
質問者:
お金が欲しい人はあらゆる手段を使ってきそうですからね……。
ところで、24年1月19日には岸田派、二階派、安倍派が解散するようですが、
これは政治改革につながるのでしょうか?
筆者:
『凄い政治改革』をしているという“ポーズ”です。騙されてはいけません。
仮に派閥がすべて解消したとしても、
政治家のお金の不正のやり取りについては組織化していなくても普通に起きています。
政治家と企業の癒着により政治が歪められ、国民生活が脅かされているのが根本の問題だと思っているので、派閥解消は根本治癒に寄与する事案ではないと思います。
質問者:
論点をすり替えて“やっている感”を出すためだけということですか……。
筆者:
時事通信が24年1月12~15日に実施した1月の世論調査で、自民党が派閥を解消すべきだと思うかを尋ねたところ「思う」が56.3%で半数を超えていますが、こんなことでは何も解決しないことに気づくべきです。
ぶっちゃけ、派閥なんてあってもなくても大差ないです。
現状でも菅前総理の“菅グループ”、23年11月に始まった高市経済安全保障担当相の“勉強会”という派閥とも何とも言えない集会もあるので、
そういう形に移行するだけだと思っています。
大体1989年のリクルート事件を皮切りにした政治資金改革(失笑)の際にも一度解散して旧〇〇派を経て結局また派閥が復活していますからね。
歴史を見てもこの派閥解消は「100%無意味」と断言できます。
ですからこの「派閥解消」を大きく取り上げるのは「派閥こそ政治と金の問題の権化」とさせるためのミスリードや論点のすり替えだと思っています。
確かに「パーティー券ノルマ」だの「キックバック」など派閥特有の事象もあります。
しかし、一番重要な「不正にお金をポケットに入れやすい状況」は派閥解消ごときでは治癒できないです。
これらのことをマスコミは強調して報道して欲しいですね。
◇政治資金規正法の論点まとめ
質問者:
なるほど、惑わされずに本当にきちんと監視していかないと「穴の開いたバケツ」のままのわけですか……。
筆者:
何度も申し上げますが、政治資金規正法の規制を抜本的に厳しくする以外で「政治と金の問題」についての解決策は無いです。
ということで、最後に今回僕が注目した政治資金規正法で改正したほうが良いポイントをまとめておきました。
〇 収入支出は1円から記載、公開
⇒ 一般人は全ての領収書を保管義務付け、仕訳をさせられている。
政治資金のやりとりは、銀行口座をマイナンバー紐づけのデジタルにして、
足跡が残るようにする。
確定申告の範囲内に政治資金をするべき。
〇 「会計責任者」だけでなくその監督者(議員)にも罰を設ける“連座制“の導入。
〇 “訂正”をすれば良いという状況ではなく厳しい追徴課税制度の創設。
〇 チェックする機関を作る。
⇒ 現状は提出するのみになっている。
〇 外国人による政治資金パーティー券の購入の禁止。
〇 政策活動費や政党から議員への配布の明細公開。
〇 政策へのクラウドファンディングによる資金集めによる寄付などの規制。
他にもあるかもしれませんが、ざっとこんなところでしょうか。
最低でも上4つについては全てやってもらわないと、
今回浮上した問題すら根本問題は解決しませんので素案が出た時に是非とも見比べていただければと思います。
質問者:
なるほど、これらを注目すればいいんですね。
筆者:
マスコミがパーティー券問題に集約させようとしているのは大いに問題です。
他にも政治資金規正法には僕が把握しているだけでもこんなに問題があるということを皆さんに認識していただきたいですね。
と言うことで本日はここまでご覧いただきありがとうございました。
今後もこのような政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説をしていきますのでどうぞよろしくお願いします。
※そもそもこの一連の事件の目的としては、
次の総裁選で安部派や二階派に所属している人たちを岸田首相支援に回らせる「圧力」をかけることが目的だと思っています。
根本的に改革する気が無いので、まともに政治資金規正法を修正していこうとは思っていないです。
しかし国民側としては“まともに変えさせる”ことが絶対的に必須です。