表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐令嬢は断頭台で踊る  作者: 七芝 夕雨
1/7

序幕 復讐令嬢は断罪される

「ユースティア・シルヴァリオ公爵令嬢。君の犯した数々の罪を、今こそ私たちの手で暴いてみせよう!」


 そう言って声高こわだかに笑う男を、色とりどりの仮面が見つめていた。喜怒哀楽に富んだ顔だが、誰も彼も好奇の目を秘めている。その中で彼女だけは──ユースティア・シルヴァリオだけは、仮面の奥の翡翠に炎をたたえていた。火矢は件の男性だけでなく、会場に居る全ての人間を狙っている。


 それでも今は、この感情を誰かに悟られる訳にはいかない。純白のドレスをひるがえし、ユースティアは男と対峙した。金箔で縁取られた、豪奢ごうしゃな蝶の仮面。煌びやかな意匠は男の自信そのものを表しているようだった。あまりの()()()に辟易するが、黙っていては不利になる一方だ。ヘーゼルベージュの髪を揺らし、ユースティアは口を開く。


「身に覚えがないと言えば?」


「無論、否定してもらって構わない。だがこの証拠を前に、いつまで軽口が叩けるかな?」


 特別冗談を言ったつもりはないのだが、所謂いわゆるこれも印象操作というやつなのだろう。()()()まで開いておいて何の罪にも問われないなど、興醒めもいいところだ。


 ──そう。例え冤罪だろうと関係ない。真実など二の次、より魅力的な最期に天使は微笑む。


 その天使こと裁判官は、一連の事態をバルコニーから見下ろしていた。椅子の肘掛けに頬杖を突き、バウタの仮面で微笑む様は正しく天上人と呼ぶに相応しい。光り輝くシルバーホワイトに、絶海を思わせる深い碧眼へきがん。なるほど天使と見紛みまがう容姿だが、その内に棲むのは歴とした悪魔である。


 天使、曰くレンブラント帝国第二皇子はおもむろに立ち上がる。


「裁判官として命じよう。御両人、互いの正義を賭けて、存分に()()()()()くれ給え」


 ホール全体に響く、美しいテノール。開廷の合図に群衆は湧く。無様に罵り合う二人の姿を、今か今かと心待ちにしているようだった。


「……とんだ茶番劇ですね」


 しくは、お遊戯会とでもわらうべきなのか。どちらにせよくだらないことだと、ユースティアは舌を打つ。その声は熱気の渦へと引き込まれ、拾う者は存在しない。


 結末は果たして、悲劇か、喜劇か。


 ユースティアはまぶたを閉じて、これまでのことを回視する。

他小説投稿サイトでも掲載しております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ