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第2話 光

 美加は、昼間は派遣の経理事務として働き、夜は副業のラノベ作家の仕事をしていた。どちらも全く安定性のない仕事といえよう。


 過去に 1回だけ25万部を超えたヒット作を持っていた美加だったが、印税は将来を思う怖くて使えない。印税はほぼ貯金し、派遣の仕事だけで食っている状況だった。


 時々、日雇いのバイトもしれいる状況で、住む家は事故物件。過去に自殺者を出したボロアパートだが、家賃の安さに引かれて生活していた。


 占いなど目に見えないのなどをあまり信じない美加にとっては、悪い条件ではなかった。むしろ何か見えたらり聞こえたりしたら作品のネタにしようと思うぐらいだった。残念ながら、まだ幽霊が見えたり変な音も聞いた事もないが。


 住めば都というのは本当かも知れない。この部屋に美加は何の不満もなかった。駅やスーパーにも5分ぐらいで行けるし、立地条件もかなり良い。


 一人で住むには十分なスペースのボロアパートの一角で、美加はキーボードを叩いていた。


 電気代をケチっているので、夜だが部屋の中は薄暗い。


 こうしてみると美加自体が、幽霊のように見えたが本人は全く気にしていない。


 熱心にパソコンに向かい、ひたすらキーボードをたたく。


 新作が打ち切りちなり、仕事がなくなった美加が、次の仕事を得る為に企画書をせっせと作っていた。


 美加はもともと少女向けのライトノベル作家だった。


 10年前にデビューした。


 その頃はまだ、出版社にも余裕があった。新人を育てる意識の高い編集者がつき、中華後宮を舞台にしたラブストーリーがその界隈でちょっとウケた。大ヒットとは言えないが、25万部の売り上げを出すことができた。


 しかし、出版社はどんどん経費を削減し、意識の高い編集者は消えた。


 もともと少女向けライトノベルは市場規模が狭い事もあり、美加がデビューしたレーベルも消えてしまった。


 それから再び公募に出し、違う少女向けライトノベルレーベルで活動していたところだったが、時代はネット小説ブーム。異世界転生や悪役令嬢などのネット小説が受け、美加のような正統派な少女向けライトノベルを書く場所は限られていった。


 実際、編集者にとってはネット小説というのは都合が良いのだろう。すでにネットで人気がある物を書籍化するわけで、宣伝費や作家を育てる経費も削減できる。コミカライズもしやすいテーマも多く、一粒で二度も三度も美味しい商売スタイルだった。


 ネット作家の素人らしさも読者からすると決してマイナスではなく「自分も作家になれるかもしれない」という夢を見させるにも十分な効果もあった。実際、読み手から続々と書き手が生まれているらしい。


 ブームというのは先が読めない。美加がデビューした頃は、どちらといえばネット小説はケータイ小説の亜流という感じで今ほど市民権は得ていなかったが……。


「やっぱり私も悪役令嬢ものを書くべきか……」


 企画書を作り終えた美加は、ため息をつく。


 ネットで作品を発表する事も考えたが、元々文章が整った正統派な少女向けライトノベルを書く美加にとっては、意外とハードルが高かった。美加が良いと思う歴史ものや本格ミステリーなどは、ネット小説界隈では全く受けない状況で、それを見るだけでも打ち砕かれる思いだった。どうやって文章をスカスカにして、風景描写も薄めてひたすら「主人公スゴイ!」っていう状況を作れば良いのか美加は全くわからない。


 何かの拍子で正統派な少女向けライトノベルが再び盛り上がる可能性はゼロではないが、現状をみる限り、その可能性も低い気がしてきた。


 正直なところ、読者が何を求めているかわからない。自分では毎回最高の作品を作っているつもりだった。ファンレターも貰う事もある。


 それでも売り上げという数字の前には、限りなく無力だった。売り上げと内容は必ずしも同等のものでは無いが、やっぱり売れないと作品自体の継続が危うくなってしまう。


「あーあ。私もヒット作出して、印税だけで生活したいわ〜」


 本音はそうだった。それで自分が好きな作品を自由にネットにあげたり、同人誌に書くだけの生活だったら、どんなに良いだろう。


 書店で世の中で売れている作品を見るだけで、本当は歯軋りしてしまう。


 何で自分は売れなくて、他の作家は売れるものはあるの? 何か基準や法則のようなものがあるのだろうか?


 そんな事を考えていると、急の目の前が明るい光が差し込み始めた。


 少々、不自然と思えるぐらいの眩しい光だった。


「よぉ、美加ちゃん。俺を呼んだか?」


 そこには天使のように美しい男が立っていた。


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