第46話 誕生日パーティーへ行こう①
俺、ライラ、アリーシア タマリ、アルカンカスの五人は招待状に載っていた住所に訪れた。
一応フォーマルスーツは着ておいた。俺はその辺は気を使えるのだ。シンプルな黒いスーツだ。側から見たらマフィアに見えてしまうかもしれんが。
アルカンカスもまぁ、似たような物だ。セキュリティガードマンのような雰囲気を醸し出していた。
そんな俺達男組とは対照的に、ライラとアリーシア、そして何故かタマリもドレスを着ていた。
「アリーシア、やはりお主似合うな……」
薄紫色のワンピース風のドレスを着たライラは肩と腕と脚を大胆に露出した赤色のドレスを着たアリーシアをまじまじと見つめながら目を細めて言った。
「服屋さんで店員さんからオススメされたから買ったんですけど、やはり肌を露出させ過ぎですよね……?」
「何言ってんだ、パーティーなんてお前みてぇな痴女わんさかいるぜ。普通だ普通」
「やっぱり痴女認定してるじゃないですか!?」
コイツは自分の意思で買って着て来たくせに何を言っているんだ。
「アリー、似合う」
黄色の子供用ドレスを着たタマリがアリーシアをフォローする。コイツは男のクセに何故ドレスなんか着てるんだろうな。
俺がタマリをじっと見つめていると、俺の視線に気づいたのかタマリは自身の身体を両手で覆うように隠すと、
「サビターのえっち」
と言ってアリーシアのライラの後ろに隠れた。
「サビターさん……」
「サビターお主……」
「サビター、流石にそれはダメだ」
何を勝手に俺をショタ狂いの性犯罪者の豚野郎と勘違いしたのか、俺をゴミよりももっと下の存在を見るかのように視線を向けた。
「お前らホントいい加減にしろよコラ。そもそも男がドレス着てんじゃねぇぞ脱げオラ。ちゃんとした服着せてやるからよ」
「うわー、らんぼーされる〜」
勘違いされるのが鼻につくので俺はタマリを俺と同じようなスーツに着替えさせようと手を伸ばすと、アリーシアが俺の手首を捻り、ライラが俺の顔を高速ビンタし、タマリが俺の額に肉と書いたり頬にうんこの絵の落書きをしてきた。
「サビターさん、男か女かなんてそんな些細な事、重要ですか?可愛ければいいじゃないですか」
「良いわけねぇだろ……」
俺を冤罪にもってこうとしたクソガキに制裁を加えるために手を伸ばしたら取り巻きにボコボコにされて恥をかかされた俺なのであった。
「ウソだろ……」
それからしばらくして。
気を取り直し、俺は口をあんぐりと開けながら建物を見上げた。
「もはや城やんけ……」
俺は顎が外れる勢いで口を開けっぱにしながら言った。
いや本当にでかい。
豪壮な洋風建築に土地を馬鹿みたいに買い漁らないと建てられない程の、まるで怪物をそのまま家にしたようなデカい屋敷だ。常に職人が手入れをしていそうな木々、そして緑の大地。
そしてさらには……!
「屋敷まであるぞ……!」
「いや当たり前じゃろ。驚くとこそこか?一周回ってまた戻ってきてないか?あれとかの方がすごくないかのう?」
俺が驚いているとライラがツッコミを入れた。彼女の指先には謎の像の口から水が出ていた。
「ああ、水のゲロ吐いてる魔物の像とかか?すげー」
「噴水の表現の仕方汚くてびっくりじゃな……」
俺は驚きを通り越してもはやボケーっと口を開けながら屋敷を見渡した。
ビリオネの屋敷の周辺には俺達以外にも沢山いた。高そうなスーツやドレスを派手に着飾った奴等が楽しそうに話をして盛り上がっていた。
外でこの盛況ぶり、屋敷の中に入ったら一体どうなってしまうのだろうか。俺達は早速入ってみることにした。
屋敷の前には執事が居た。見た目はビリオネの隣にいるジジイ(チキンだっけ?)ではなく、若い男だった。
「サビター様、ライラ様、アリーシア様、タマリ様、アルカンカス様ですね。お嬢様がお待ちです。どうぞお入りください」
そう言って執事の男は懇切丁寧なお辞儀をし、俺達を屋敷の中は通した。
「うむ、よきにはからえ」
「えらそうにするなチンピラ風情が」
俺が気持ちよく執事を見ながら言うと、ライラがすかさず俺を罵倒した。
屋敷の中は豪華そのものだった。広々とした空間に眩いほどの光で照らすシャンデリア、光沢がある大理石を利用した高級感溢れる床、そして、
「よぉ姉ちゃん、そのトレーにあるつまみと酒ちょーだい」
普段はお目にかかれないようなタダ飯とタダ酒のオンパレードだった。
「はい、どうぞ」
給仕の女は俺の横柄な態度(一応自覚はある。だが改善する気はない)に苦い顔一つせず、営業スマイルでトレーになっているつまみを差し出した。
見た目はビスケットの上にコンビーフとクリームチーズが乗った塩気のあるつまみだった。
俺はそれを食べながら別のトレーになっていた酒の入ったシャンパングラス手に取り、一気に飲み干す。
「かぁ〜たまんねぇ〜!来て良かったぜ!」
塩気の効いたコンビーフになめらかなクリームチーズが俺の食欲を刺激し、シャンパンが俺の塩味で満たされた口と喉を共に潤す。
「うんままぁ〜……!」
俺は空きっ腹の状態でそれらを胃に入れてしまったので、惚けた面をしながら食べていると、ライラとタマリが俺をチラチラ見ながらコソコソ何か話していた。
「タマリ、よく見ておくのじゃぞ。これが人生の落伍者の姿じゃ。反面教師にするのじゃ」
「うん、ししょー」
「うるせぇよ!お前も食えオラ!」
俺は人数分のつまみを手に取るとそれらをライラ達の口に一気に運ばせた。
ライラ達は最初こそ驚きはしたものの、徐々に頬は綻び、旨そうに味わいながらシャンパンを飲み始めた。タマリは未成年のガキだからオレンジジュースで我慢してもらった。
「ぷふう〜美味いのう〜」
「しゅわしゅわしててさいこ〜!」
「たまにはこういうのも悪くはないな」
「僕もそれ飲みたかったんだけど」
各々それぞれの反応を見せ、俺は大いに満足した。コイツらも所詮食べ飲み放題のパーティーに釣られたアホタレ共、俺を馬鹿にすることなどできないのだ。ザマーミロ。
「くふふ……やはりビンボー人共は挨拶程度のおつまみでも満足してしまうんですのねぇ……」
嫌味ったらしいムカつく声で俺達の前に現れたのは、皆さんご存知ビリオネ・セスペド。またあの執事(たしかコンビーフだ!)を連れて俺達の前にやって来た。




