第14話 適当なアイツと新メニュー開発
毎日投稿したいんです。本当なんです。でも遅れちゃうんです。許してちょ〜ん。
俺達は洞窟から無事ガッデスハーブを沢山取り、店へと帰った。未だ店は閉店中で俺達4人は客用のテーブルと椅子に座って会議を行なっていた。議題のテーマはこうだ。
「はい、ということでね、ハーブを使ったスイーツを作っていきたいと思います!拍手!」
ライラがパチパチと自分で手を叩きながら笑顔で言った。
「チクショオオオオオオオオオオオオ!!!」
「ウオッ!?なんじゃ!?」
俺はたまらず憤慨する。やっとスイーツ関連から離れて本業に本腰を入れようとしていた時に、運命の悪戯か、俺達はまたしても新たなスイーツの開発を強いられた。
「ど、どうしたんですかサビターさん?」
「どうしただと?お前本気で俺にどうしたと聞いているのかどうしたぁ〜!?」
「何を言っているんですかサビターさん!?」
俺は怒りで気が動転し、自分でも何を言っているのか分からないまま喋り倒す。
「でも僕達、ポーションと一緒にお菓子も作るんだよね?だったら何もおかしくないんじゃない?」
俺はタマリに当たり前のことを言われ、黙り込む。そしてその後「クソが!」と天井に向かって叫んだ。
「まぁまぁ、落ち着きましょう。とりあえずナックルさんにああ言われた以上、何かしらは作らないと怪しまれます」
アリーシアまでもがまともな事を言って俺を追い詰める。俺は諦めてポーションは後にして新作スイーツを作ることに決めた。
「つか、ハーブで作れる甘い菓子なんてあんのか?あれ葉っぱだろ?」
俺は思っていた疑問を口にする。俺はあまりスイーツになんざ詳しくないが、甘い菓子と書いてスイーツと読む食べ物に苦いイメージを持たれるハーブを入れて、果たして美味い食べ物になるのか?
「ハーブティーにしても良いのじゃが、それだと趣旨もズレてしまう」
ライラは顎に手を添えて口を尖らせて考える。俺は全くスイーツには詳しくないのでただ黙っていた。とにかく時間が過ぎて欲しかった。
「のう、サビター」
俺がボーッとしていると、ライラが俺につんつんと指で俺の腰を突いて話しかけた。
「なんだよ」
「もういっそ、お菓子屋さんを本業にしたらどうじゃ?」
「は?」
ライラ俺にバカな事を聞いてきた。
「お前何言ってんだよ。俺達の目的はこの国を裏で支配する事だ。麻薬は金になる。くだらねぇケーキなんかよりもな」
「いや、それがのうサビター。ここ1日2日ほどしか開店しておらんかったが売り上げがな、100万行っていたんじゃ」
「ふぇ?100万?」
俺はどでかい数字に対して間抜けな声を出して驚く。いや、ありえないだろ。ちょっとしか営業してない出店したての無名の菓子屋が、そんな大金を稼いだのか?100万って、普通のギルドの連中が稼ぐのに数ヶ月はかかるぞ。それをたったの2日で?マジで?
「本当ですか!?それ!?凄いじゃないですか!わざわざ犯罪に手を染めなくても良いじゃありませんか!」
「僕もそう思う」
アリーシアとタマリまでもが賛成する。まずい。手段と目的が入れ替わってる。このままじゃ俺の野望が……!
「オイオイオイ!そう考えるのは早急なんじゃあないか!?ケーキ屋なんて流行り廃りが当たり前だ!逆に麻薬はいつでもどこでも需要がある。切り捨てるのはもったいないぜ!」
俺はそう言って机を叩く。
「机を叩くのはやめろ。店の備品の一つじゃぞ」
「お前はいつからここの店員になったんだ!?ああ!?」
「ワシはここの店員じゃが!?」
俺とライラは椅子から立ち上がり、鼻と鼻がくっつくまで並んで火花を散らしていると、アリーシアが間に割って入った。
「喧嘩はやめましょう!」
「こいつじゃ!こいつが悪いんじゃ!」
「お前が何でもかんでも細かすぎるんだよチビ!」
「あっ!今チビって言った!エセ金髪髭ダルマのくせに!」
「うるせぇぞ!元地味黒髪じゃがいも女!」
「やめなさいって言ってるでしょ!」
俺とライラのヒートアップする口喧嘩に、アリーシアは遂に怒った。怒りの表現として彼女はテーブルを叩き壊した。俺は彼女の突然の破壊行為にビクリと身体を強張らせて彼女を見た。
「落ち着きましたか?」
「いや、あの、落ち着いたけど、机は壊さないでもらえるか。一応店の備品だからさ」
「それについてはごめんなさい。でも、こうしないと静かにできないでしょう?」
「ご、ごめんなさい……」
ライラが冷や汗をダラダラ垂らしながら言って俺に目配せをする。「これ以上喧嘩をするのはやめよう」という意味を含んだ視線を感じた。俺にもそれについては同意なので「分かった」と視線を送る。
「しかし、如何に決着をつける?」
「それなら簡単です。スイーツとポーションのどちらが売り上げが上かを競えば良いんです。そして勝った方をメインコンテンツとして生産するんです」
アリーシアの簡潔な提案にライラは引き下がり、椅子へと座り直す。俺も納得したわけではないが、このままキレて話すよりは白黒ハッキリつけた方が良いと思い、椅子に座った。
「まぁそれしか方法はないし、それで良いぞい」
「キレ疲れた。俺もそれでいい。で、スイーツは何を作るんだ?」
どんな物を作るのか聞くと、ライラは指パッチンをして人差し指を俺に向けてこう言った。
「パウンドケーキを作ろうと思う。中にハーブを上手く仕込んで気分が安らかになる癒しのスイーツを作る」
「わぁ!凄く美味しそう!」
タマリが嬉しそうに言う。だがライラは「んん〜?」と怪訝な目をタマリに向ける。
「お主も一緒に作るんじゃぞ?」
「えっ、えっ!?僕錬金術やった事ないよ!魔法薬学ならあるけど……」
「なぁ〜に、錬金術も魔法もやることは変わらん!お主はワシのやっている事を真似すれば良い!」
「お前本当適当だな」
「聞こえない聞こえなーい」
錬金術と魔法を混同するなといつもはキレたりするクセに一体どういう了見なんだ。都合が良過ぎるだろ。
「前は予想以上の客の入りにパンク寸前じゃったからな、今度は余裕を持って多めに作るぞ!さぁ来い!お前には特別にワシのお古の錬金釜を貸してやろう」
「ぼ、僕にできるかな……」
「安心しろ、タマリ。お主には絶対最強可憐万能伝説の錬金術士のセンセイが付いてるからのう」
「うん……僕、頑張る……!」
「馬鹿が考えたような肩書きだな。ひょっとして今思いついたのか?」
「悪いか!?」
「当たりかよ」
ライラは俺にぷいと顔を逸らしてタマリと一緒に厨房へと入っていった。俺とアリーシアが取り残される。アリーシアが「あはは」と笑いながら俺を見る。
「なんだ?」
「いや、こういうの良いなって思って」
「なんだよこういうのって」
「仲間って言うんですかね、家族って言うんですかね。タマリ、あんなに小さいのに、ずっと1人で旅をしてきたらしくて。でもサビターさんやライラさんと出会ってから、笑う回数が増えた気がしたんです」
アリーシアが嬉しそうに微笑んで言う。俺はそんな彼女の話にどう返せば良いか分からなかった。外を見てみるともう夕時だ。太陽が夜に傾いていた。
「へっ、そりゃどうも。俺は人手が欲しかったからお前らを引き込んだだけだ。家族ごっこが目的じゃねぇ」
俺は鼻で笑って言う。アリーシアは恥ずかしがって「ごめんなさい」と言う。
「ただ、俺の店の働き手となったからはお前らは俺の野望を叶える同士の一員だ。何があろうと守ってやる」
俺は椅子から立ち上がってアリーシアに背を向けながら言う。
「サビターさん……」
俺の言葉にアリーシアは俺を尊敬の眼差しを向ける。別に後ろに目はついてないがおそらく絶対多分俺に惚れているだろう。こんなデカパイデカケツ女、逃す手はないからな。
「だからお前も俺を守れ。お前のその触れただけで人を殺す手で」
「なっ……!?最後の一言で台無しですよ!それに私は殺すべき相手はちゃんと選びます!」
「お前時たま物騒な事言うんだな」
俺はアリーシアから距離を取りながら言う。アリーシアは基本的には内気だが、やる時はしっかりとやるし殺る時はしっかりと殺るタイプの人間故にセクハラする時はタイミングを選ぶべきだな、と俺は今日も一つ心に教訓を刻んだ。
後書きを読んだそこの君、ブックマークと高評価をよろしくな。俺のハゲ身になる。