第12話 冒険に出かけよう!その3
アクセス数を見てみると時たま見てる人がいて嬉しい。でも気に入ったらいいねとブックマークをして俺をもっと笑顔にして欲しい。
しばらく歩いていると、洞窟が見えてきた。巨人が入れるほどの大きな穴が入り口だ。光が一切差し込んでおらず、来るものを拒むかのような仄暗さがあった。
「ガハハ!遂に着いたぞ!」
「それギャグで言ってんの?つまんねーぞ?」
「ダジャレで笑えねー奴が一番つまらねーんじゃよ。知らないのかの?」
俺とライラが取っ組み合いの喧嘩を始めると、アリーシアは「ここに入るのかぁ」と憂鬱そうに呟いた。
「なんだおめー、暗い所は苦手か?」
「ええまぁ。少し苦手です」
「ここでか弱き乙女ポイントを稼ごうとするとは、お主もやりおるのう」
「別にそんなつもりで言ったわけじゃないですよ!」
アリーシアが間違いを正そうと捲し立てるが、それは別にどうでもいいのでシカトする。
「ここん中にあるのか。でも俺達が探してるのは植物だろ?太陽が入らない所なのに咲くもんなのか?」
「ここの洞窟の奥にある秘密の場所がある。その場所は清らかな水が流れ、僅かな太陽が差し込み、美しい花を咲かす良質な植物が沢山育っているのじゃ」
「ガッデスハーブだっけ?それって結局なんなの?初めて聞いたんだが」
「ガッデスハーブは高品質のポーションを作るために使われる材料じゃ。別にそれ単体でもかなりの傷や病を癒せるが、優秀な、超!優秀な錬金術士が他の材料も使って調合すればもっと凄いポーションになるのじゃ!」
コイツはいちいち自分を上げないといられない病気でも持っているのだろうか。またもやライラは鼻を大きく膨らませながら鼻高々に「フハハハハハハハハ!」と笑っていた。
相手にしているだけでも時間の無駄なので、俺はさっさと洞窟に入ることにした。
「おい!勝手に入るな!ワシが先じゃ!」
「お前ガキだし、戦えないだろ。俺の後ろに下がってろ。でしゃばるなよ」
この洞窟は入ったことはないが、洞窟内にも危険な生き物は存在する。暗くて狭く、松明や灯無しで行くのは危険だ。
「?何をしておるんじゃ?」
「灯をつけるんだよ」
「ぷくく……お主そんな前時代的な物を使っておるのか?なっさけないのう」
「お?いちいち人を煽らなきゃお前はモノを言えないのか?ん?」
俺はライラの両のこめかみを拳でグリグリしながら言う。するとライラは「痛い痛い!」と俺の手を叩きながらライラは肩掛けカバンから何かを出した。
「クラヤミミエール」
「名前ださ?ネーミングセンス無し子ちゃんかよ」
ライラは俺達にそれぞれ一つずつポイポイとゴーグルのような物を渡しながら言った。そして最後に俺に渡す時は顔面に投げつけられた。
「んだよこれ?」
「名前の通りじゃよ。これを掛けるとどんな暗闇の中でも昼間のように明るく見えるようになるのじゃ。ワシが錬金術で作ったアイテムのうちの一つじゃ」
俺はライラに渡されたゴーグルを試しに掛けてみた。ゴーグルのレンズからの景色は一変していた。確かにライラの言う通り、暗くて何も見えなかった空間が細部に至るまで明るくくっきりはっきり見ることが出来た。
「すごい!すごいです!こんなに明瞭に見えるなんて!」
アリーシアが感激しながら辺りをキョロキョロ見回す。タマリもゴーグルを掛けると「おおー!」とゴーグルを外したり掛けたりしながら喜んでいた。
「これ、お前が作ったのか?」
「そうとも。暗闇が棲家の闇ヘビの目を財力に使っておる。だからどんなに暗いところでも見えるのじゃ!凄いじゃろ!」
「ああ、確かにすげーやこりゃ。お前やるじゃん」
俺が聞くとライラはその質問を待ってましたと言わんばかりに肩掛けバックを見せつける。
「これは食い意地の張った雑食モンスターのバクバックスの胃から作った何でも入るバッグなのじゃ。非常に伸縮性があり形状を維持したままどれだけ入れてもパンパンにならん代物じゃ。これもワシが作った。まだまだあるぞ!これは──」
「いや、これさえあれば歩くのには困らねぇ。お前の発明品は後で見せてもらおう」
「えっ?あぁ、そう……」
俺がライラにストップをかけるとライラはあからさまに拗ねてポイポイ出してきた道具をバッグに仕舞い、再び洞窟内を歩き始めた。
「いや、にしてもすげぇなこれ。マッドギアの暗視ゴーグルとほぼ同じクオリティだな、よく見えるぞマジで」
俺は感心しながら洞窟内を歩く。中はぬるい風が吹き、歩きづらいゴツゴツとした地面が続くばかりだった。だがライラのくれたゴーグルのおかげで地面はちゃんと見えるから転ぶことはなかった。
「驚くほど何もないですね……いや、洞窟に何を求めてるんだって感じですけども」
アリーシアが自分でツッコミながら喋る。確かに何かがあるようには思えない。鉱石があるわけでも、モンスターがいるわけでもない。普通、このような広くて暗い空間にはそういった場所を好む化け物達がシェアハウスしながら殺し合っているはずなんだが、1匹もおらず襲いかかってこないのは不思議な話だった。
「おかしいのう……」
ライラが首を傾げながら言う。
「おかしいって、何がだよ?」
「いやなに、普通はな、この洞窟には危険なモンスター達がうじゃうじゃいるんじゃ。採取に出掛けるたびにワシはそいつらをのして通るのじゃが、今日は来ないんじゃのう」
ライラは「手間が省けてよかったわい」と楽観的に言った。
「いや、おかしいだろ。なんか匂うな」
「ワ、ワシか!?ワシなんか変な匂いするのか!?ちゃんと香水つけてオシャレしてきたのに!?」
「違う違う。言葉のあやだ。この洞窟、なんか怪しいぞ」
「えっ私臭いですか!?身だしなみには気をつけてるつもりなんですけど、どんな匂いですか!?」
「違うつってんだろうが!誰も臭くねぇよ!良い匂いだよフローラルだよアホ共が!」
俺は碌に言葉の意味を理解できていないバカ共にキレながら言後ろを向いて言った時、踵に何かがぶつかって転びそうになった。
「うおっ!?」
俺は何かに引っかかり、転びそうになって千鳥足のようなふらついた動きを何とかこらえて、転ばずに済んだ。
「ギャハハハハハハハハ!ちゃあんと前を見ないとダメじゃぞ!アホは一体どちら…かの……お?」
ライラは最初は調子が良かった声色が、段々と落ち、最終的に顔は青褪めていった。不思議に思った俺は転びかけた原因となった物を見てみると、俺は一瞬びくついた。
「ッ!?」
俺は気づいた瞬間急いで離れ、ライラを背後に置く。道に落ちていたのは、暗闇が好きなダルクスというヌメヌメした気色の悪い化け物の死体だった。
「コイツ、死んでやがる……」
俺は死んでいると気づきつつも腰から瞬時に取り出した俺の愛銃、ブライト・ブラスターを死体に向ける。1匹の死体の向こう側には、恐るべき量のダルクスの死体があった。
「お前ら、警戒しろ。俺が先導する」
俺はブライト・ブラスターを構えながら正面を見据える。
「私が前に出ます。先程は遅れを取りましたので」
「ワシも戦えるからの。先に進むわい」
「僕も!」
「お前ら?俺の話聞いてる?」
俺がリーダーらしいマジメ腐った面構えをして銃を構えていたのに三人のアホ共は俺の言うことを全く聞かずズカズカ前へと進んでいった。
俺達はそれぞれの歩幅で洞窟の奥へ進む。進めば進むほど死体は山のように出来上がっていた。主な死因は銃弾だった。身体から穴が空いて血が流れ、血溜まりが出来上がっていた。
「この銃痕……マッドギアで最近主流のブラックレクイエム02……軍用品だ。殺した奴らは何者だ……?」
俺はマッドギアの銃オタクでもあるが故に、銃痕だけでどの銃が使われているか識別できた。だがウィルヒル王国は剣や魔法が主に使われ、逆に銃を好んで使う奴は煙たがられている。
俺達が奥へ進んでいた次の瞬間、ドガァン!と爆発音が鳴った。
「な、なんじゃ!?何の音じゃ!?」
俺達は思わず姿勢を低くする。どうやら音が鳴ったのはさらに奥のようだ。爆発物を使ったのだろうか、第三者の何者か達はこんな薄暗い、いつ崩れるか分からない洞窟内で発破をしたのか?なんてバカな野郎達だ。
「どうします?撤退しますか!?」
「バカ言え!ここが唯一のガッデスハーブの群生地なのじゃぞ!?訳の分からん奴等にここを荒らされるわけにはいかん!」
ライラは半ば激情的になり、さっきよりも歩みをさらに強くする。俺達はまた先ほどと同じようにライラの後をついて行くように歩いて行った。
暗い道のりに僅かな光源が見えた。おそらく俺たちの目的地、そして謎の勢力もそこにいるだろう。
「もうすぐ着くぞ。姿勢を低くして音は出すな。まずは様子見だ」
俺はそう言って光源の近くの岩の影に隠れる。ライラ達もさっきとは違い、俺の言うことを聞いて影に隠れた。
「こんな葉っぱが金になるのか?」
光源の向こう側から男達の声が聞こえた。
「じゃなきゃ見返りにこんな上物の銃なんか贈らないだろ。この葉っぱで何を作るのかは知らねぇ。俺達はやれと言われたことをやるだけだ」
2人の男が愚痴を言いながらガッデスハーブを摘み取っていた。その他にも4人の男がハーブを引き抜き、四角い箱に詰めている。計6人共にブラックレクイエム02とい高性能なレーザー型自動小銃を持っていて、このまままともに突撃すればタダじゃ済まないことは確実だ。
「早くしろ。ニーニルハインツの奴等がいつここを嗅ぎつけてきたっておかしくねぇんだ。奴らに見つかったら俺達はおしまいだ」
リーダー格の男が急かすように言った。すると5人の男達はそれぞれ間の抜けた返事をしながら作業を早める。
「お前ら聞け。奴らは俺達に気づいていない。しかも影や岩陰もある。それに乗じて1人ずつ静かに倒すんだ。分かったか?」
俺はライラ、タマリ、アリーシアにヒソヒソと声を潜めながら作戦を説明する。だがライラだけはどこか上の空のような様子だった。
「ライラ?おい、聞いてんのか?」
「や、奴等……採取の仕方がまるでなっとらん……このままじゃ素材を腐らせるだけじゃ……!」
ライラはワナワナと手を震えわせ、歯軋りしながら奴らを睨んで見ていた。そして、
「オイ!貴様等!ガッデスハーブは繊細な植物なんじゃ!そんなガッと掴んでブチっと抜いていい代物じゃないぞ!」
岩陰から堂々と声を上げ、姿を現してしまった。
「誰だ!?」
銃を武装した男等は声のした方、つまり俺達の方へ銃を向ける。
「貴様等の愚行、一部始終見ておったぞ!ハーブに対して微塵も気にかけずただ傷つけるような採取の仕方は断じて見逃せん!ここでワシが貴様等を成敗してくれるわ!」
「な、なんだぁ?このガキ?」
ライラの突然の登場に驚きを隠せない男達。俺はまた馬鹿が馬鹿をやった、と両手で顔を覆う。
「おいガキ、お前どうやってこの場所へ入った?」
「入ったも何も、ここはワシの素材採取地じゃ!知らん奴らに荒らされるのは我慢ならん!」
「見られた以上は仕方ねぇ。ガキだろうが消すしか──」
「おっと、お前ら。まさか悪い事をしてるからって子供においたするわけじゃあねぇよな?」
俺は仕方なし、と思いながら立ち上がり、声を出す。
「またか!誰だテメェは!?」
「おいおい、まさか俺の顔を知らねぇわけじゃねぇよな?俺が誰だか、クソ野郎で悪人のお前らなら分かるだろ?」
俺が余裕を持った笑みで奴らに問いかける。俺の顔が見えやすいように日の光が違い場所にゆっくり移動する。するとどうだ、奴等は俺の顔を見た途端、引き攣った声で「ま、まさか……」と声を漏らす。
「そうだ、俺はニーニルハインツギルド、ジョニーと同格の不死身のサビターだ。お前らが裏でコソコソやってんのは既にうちのギルドが掴んでたんだよ」
俺はかつて所属していたウィルヒル王国内外でも様々な恐ろしい噂が出回る最強戦闘集団の名前を出した。元だが、効力はまだあるはずだ。それに俺が叩き出されたのもまだ流出してないはず……
「お主……追い出された身じゃ──」
「黙れ」
俺はライラに制止を促す。ここでバラされたらネームバリューがおじゃんになる。
「アイツ……サビターだ!ニーニルハインツのNo.2の!」
「いや、実質No.1だから。俺ジョニーとタメ張れるから」
「サビターだと?マッドギアに大損害を与えたあのニーニルハインツのガン細胞と呼ばれているあの!?」
「なんかいい響きじゃないな。ニーニルハインツのアルテマウェポンとかそう言ういい感じの響きが欲しい」
「クソ…!もうアイツらにバレてたってのか!?しかもあのサビターが相手じゃ勝ち目が……!」
どういうわけかあまり響きの良くない二つ名が出回っている。一体どこの誰がそんな噂を垂れ流したのか。俺はそのことについて奴らに聞きたかったが、俺は耳障りの良い言葉を浴びて悦に浸っていた。俺を見た奴等が俺に対して恐れ己の退いている。はぁ、気持ちがイイ。
「いや、最近奴は素行が悪すぎて遂にギルドから追放処分を喰らったって聞いたんだけど」
その一人の男の言葉によって、俺は一瞬で凍り付いた。
「えっ?そうなの?アイツ追い出されたの?」
「ああ。なんでもしょぼい犯罪行為を積み重ねてそれが原因でジョニーの堪忍袋の緒が遂に切れたらしい」
俺は額から汗が流れてきた。それも嫌な汗の出方だ。
「なんか最古参のメンバーだから形だけ幹部の座を与えられてたとかも聞いたぞ」
「そりゃデマだ!誰だそんな噂流した奴は!?殺すぞ!」
俺はいよいよ我慢が出来なくなり、声を荒げて反論した。
「へっ、そんな雑魚なら遠慮はいらねぇ。ぶっ殺しちまえ!」
コソ泥の1人のモヒカン野郎が俺に銃を向けた。
「おい」
「あ?なんだ?命乞いなら今のうちにしておけよ」
「俺に銃を向けるな。殺すぞ」
「あぁ?誰が殺すんだよ?間抜けにもドタマぶち抜かれそうなお前か?」
俺はモヒカン野郎の言葉に鼻で笑う。
「お前の出番だぞ!アリーシア!」
俺はアリーシアを名指しで言った。するとアリーシアは岩陰から姿勢を正して「はい!」と言って立ち上がる。
「えっ!?わた、私ですか!?」
「お前以外に誰がいる。ライラもタマリも活躍した、今度はお前の番だ!」
「いやいやいや!私こういう土壇場だとやりづらいんですよ!」
「死んじゃうぞ!俺死んじゃうぞ!いいのか俺死んじゃうぞ!?」
俺が大声でメンヘラ特有の死んじゃうアピールをする。別に俺はコイツらを倒すことは造作もない。だがアリーシアの戦闘力は確かめておきたかった。たまからここで一芝居打たせてもらおう。
「ギャハハハハ!コイツ女に頼ってるぞ!」
モヒカン野郎は俺を笑う。ふっ、笑えるのも今のうちだ。アリーシアが本気を出せばテメェらなど一瞬で塵と化す。さぁ、早く俺を助けるんだ!
「ああ!もう!分かりましたよ!やりますよ!」
アリーシアはやけっぱちに叫ぶと、ため息を吐きながら眼鏡を外した。
「おーおー、お嬢ちゃん。眼鏡を外して何をするつもりだ?キャラ変でもするのか?」
アリーシアを嘲ったモヒカン野郎は、その言葉を最後に糸が切れた操り人形のように足をもつれさせ崩れ去った。
「「「「「「え?」」」」」」
あまりの一瞬の出来事に、タマリ以外の全員が間抜けな顔をしていた。ただ、アリーシアが一瞬でモヒカン野郎の後ろに移動して、肩をトンと軽く叩いただけだった。ただそれだけで、男は力なくドサリと音を立てて倒れたのだ。
「えっ……?えっ?えっ?」
他のコソ泥達は目を点にきて鼻水を垂らしながらアホ面も垂れ流している。俺達同様、何が起こっていたのか理解できていない様子だ。
「こ、殺した……のか?」
コソ泥の1人がポツリと呟いた。だがアリーシアは答えることなく、瞬時に呟いた男の目の前に移動して今度は頭を軽くポンと叩いた。するとモヒカン野郎同様、フニャリと一気に脱力したような、骨が抜けたような動作で地面に倒れた。
「な、なんだぁお前はァァァァァァァ!?」
動転したリーゼントの髪型のコソ泥は恐怖で気が参ってしまい、あらぬ方向に銃で乱射してしまう。
「うおっ!?あぶね!」
俺は咄嗟にしゃがみ、頭を両手で覆った。ライラ達も岩陰に隠れてやり過ごす。
「撃つのをやめなさい」
聞くだけでも背筋が凍りそうな冷たい雰囲気でアリーシアはリーゼント男の首根っこを軽く触る。
「あひ」
と白目をむいて泡を吹いて倒れた。半分の人数がやられ、完全に心が折れた残りの3人組は
「ああ分かったよオッケー降参!ほら、葉っぱ全部やるよ!二度とこの洞窟にもウィルヒルにも立ち入らないと誓うよ!じゃあな!」
退散すべくアリーシアにそれだけ言って背を向けて逃げ出そうとした三人だったが、分身が増えたのではないかと錯覚するような超スピードでまたもやその場に倒れ込んでしまった。
「す、す、すげー!アリーシア、お前すげーよ!俺助かっちゃった!お前のおかげで俺生き延びられたぜ!やるなぁ!」
俺は顔を引き攣らせながらアリーシアに声をかける。まさかこれほど強いとは思わなかった。ジョニーのギルドの連中と比べても遜色ない程の強さだ。俺、アイツを怒らせるのもうやめよう。
「……」
一通り無双したアリーシアは抜き身の刃のような殺気を溢れさせながら、懐にしまっていた眼鏡をかける。
かけた瞬間、先程の殺人マシーンのような冷徹さはナリを潜め、徐々にあの朗らかな柔らかい雰囲気を纏った彼女へと戻っていった。
「もう、いきなり無茶振りするのはやめてください!心臓に悪いですよ?」
「す、すいません。もうしません」
「えっ?なんで敬語なんですか?」
俺はアリーシアを恐れ、敬語を使いつつ「アレは一体……」と男達の残骸を指で示す。
「ああ、アレですか。大丈夫です。アレは──」
アリーシアが何か言いかけた時、空から何かが降ってきた。
「アリーシア!避けろ!」
俺はアリーシアの手を掴み、背後に引っ張った。代わりに俺は衝撃を受け止めて砂埃や瓦礫を一身に引き受けた。
「オラァ!諦めろ野郎共!粉微塵になるまで殴られたくなかったら大人しく投降しな!」
野太い声が洞窟内に響き渡る。男の声に合わせて何人かの人間が光の上から飛び降り、警戒態勢を取る。俺は、この声の主を知っている。奴は横暴で腕っぷしが強く、口より先に手が出るほどの脳味噌が筋肉に支配されている男だ。奴の名は……
「ナックル!?」
「あっ?サビター?」
怪しいハーブを取りに来た所に、清く正しい王国最強ギルドメンバー幹部が俺の目の前に現れた。