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【短編ギャグ小説】童貞の俺がメイドカフェに行ったらビンタされた話。

作者: モリオ
掲載日:2022/10/05

先輩上司のオバマさんから呼び出された。

「明日からアンタ、降格ね?」

「え? 何で?」

俺は身震いしていた。全身の汗が体毛1つ1つから湧き上がり、異臭を放っている。

「当たり前でしょ! アンタ、35歳になってまで、仕事が遅過ぎるんだよ! 納期も遅れっぱなしだし。仕事に対して甘いまま、課長の座を渡すわけにいかないでしょ!」

「ひょえぇぇぇ〜〜〜。そんにゃぁ〜〜〜」

俺はビックリ仰天した。もう、オシマイだああ〜〜。降格なんて、そんなの、絶対、おかしいよ。

「話は以上だよ。下から這い上がって社会の辛さでも学んどけ。この、クズが」

オバマさんは乱暴にドアを開け、ズカズカと歩いて行った。

くっそ〜〜

このやろーー!!

舐めやがって

許さねぇぇ

だが俺はどうすることも出来ない。上司の前では無力だ。両膝と両手を地面に付け、絶望した。

5分ぐらい絶望していただろうか。後輩のタケシが、俺に声をかけてきた。

「おいおいマナブ先輩。こんなところで何してるんだよ。犬にでもなったつもりか?」

目を細く開け、ぶっきらぼうに言ってきたので「うるせぇ! 絶望しているのが分からんのかこのアマァ!」と言った。

「なぁ。マナブ先輩。仕事終わった後、時間空いてる? ちょっと付き合ってくれよ」


クッソ〜〜。降格って言われていて凹んでいるのに、今度は後輩の暇潰しかよ〜〜!

とか言いながら、着いて行っちゃうんだけどね。

今、俺たちは、大都会「なんば」にいた。

「先輩。着いてきてくれ」

タケシは足早に、街の路地裏をヒョイヒョイと進んでいく。

おいおい。そういうアダルティックな店へ行くんじゃ無いだろうな? そんなの、ゴメンやで? 俺は一生ドゥーティーで行くと決めたんだからな。

「着いた。行くぞ」

『メイドカフェ coco茶』

マジかよ。

アダルティックでは無かったけどさ。いや、微妙にアダルティックか?

メイドカフェやんけーー!! コンチクショウ。

しかもズカズカ歩いて、もう扉を開けてやがる。俺も急いで着いてかないと、取り残されるやんけ!

入店入店♪ もうこの際、勢いで乗り切ってやるぜ!


「お帰りなさい♡ ご主人様♡」

なーにがお帰りなさいじゃ。初めて入店してんだよ俺は。

「ただいま。まゆちぃ。今日は友達を連れてきた。席を案内してくれ」

タケシの野郎、めちゃくちゃ慣れてやがるじゃねーか。あと、俺のことサラッと友達って言ってんじゃねーよ。先輩だぞ? それと、このメイド、まゆちぃって言うんかよ。ツッコミどころが多すぎるわ!

「はーい♡ ご主人様♡」

メイドもメイドでノリノリだなオイ。

「こちらの席で♡」

「はいよ」

「本日は、ご来店ありがとうございま〜す♡ タケシ♡ いつもありがとう♡ そちらの方は?」

「マナブだ。仕事でヘマしたから、社会勉強に来させた。学ばせてやってくれ」

「はーい♡ 分かりましたぁ♡」

このやろーー!! 余計なこと言ってんじゃねーー!!

くやしー!!

「それじゃあ、マナブの為に、メニューの説明しましょうか?」

「してやってくれ」

信じられないほど冷めた声でタケシは言った。

このやろーー!!

舐めやがって

許さねぇぇ

「えっとぉ。当店オススメは、ツンデレソーダーでぇっす♡ 追加オプションでぇ、ご主人様にビンタだったりぃ、ケツバットをお見舞いしますよ?♡」

「ドMじゃねーーか‼️」

ガタッ!

ザワザワザワ

……ハッ! しまった! ツッコみたくなって思わず立ってしまった。

「ふふふ……♡ マナブ、そんなにビンタされたいの?」

「あ、いや、そういうわけじゃ……」ケツを突き出し、首と両手をブンブン横へ振る。

「立つほど興奮しているんだろ? 正直に言え」

「うるせぇ黙れ!」全身の毛が逆立った。

「冷静になって考えてみろよ。ソーダー1つ頼んだだけで女の子からビンタされるんやぞ? むっちゃ良いやん!」

「じゃあ、タケシがやれよ」

「俺じゃなくて、マナブ先輩がやるんだよ! ビンタされて、女の子からの痛みを学んでくれ」

「ひょえぇぇぇ〜〜〜。そんにゃぁ〜〜〜」

もうメイドカフェに入った時点で運命からは逃れられないんだ。諦めよう。

「じゃあツンデレーダー2つで。内の1つは後から持ってきてくれ。1つはビンタ。もう一つは……」

タケシはメイドの耳元でゴニョゴニョ呟いた。何頼んだんだコイツは?

「はーい♡ 分かりましたぁ♡ ちょっと待っててね♡」

メイドは足早にカウンターの裏へ消えて行った。

今がチャンスだ。ずっと気になっていたことをタケシに聞いてみよう。

「おいタケシ。メイドカフェに連れてきて、どういうつもりだよ」

「お前の気晴らしに決まってるだろ。この童貞が」

「童貞で悪かったな。メイドカフェなんか初めてだぜ?」

「現実で辛くなった時こそ、非日常的なことをするんだよ。良い気晴らしになるぜ」

「言いたいことは分かるけど、気晴らしでメイドからビンタっておま」

言ってる途中にメイドのまゆちぃがソーダーと♡型のコースターを持って、やってきた。

何やら思い詰めたような顔をして「マナブ?」と言った。

「はい?」

バンっ!

ひぃ!

まゆちぃは乱暴にコースターを机へ叩きつけた。めちゃくちゃビックリするんだが。

「ちょっとぉ。さっきからグチグチグチグチ文句ばっかり言ってさぁ」

「……すみません」

めっちゃ怖い。こんなことになるなら、メイドカフェへ入る前に話を終わらせておくべきだった。

雑にコースターの上へソーダーを置いた後「おいマナブ。ちょっと立ちなさい」 と言った。

「……はい」

何されるんだろう。めっちゃ怖い。

「まゆちぃから御褒美を受けたいです♡ って言え」

は?

意味が分からない。

「何黙ってるんだよ。早く言えよ!」

ここは仕方なく、命令に従うべきか。

「まゆちぃから御褒美を受けたいです……」

「声が小さい! もっと大きい声で言え!」

ひえ! 凄い剣幕だ!

「まゆちぃから御褒美を受けたいです!」

「ここはメイドカフェなんだから、語尾に『にゃん』とか付けな!」

「まゆちぃから御褒美を受けたいにゃん!」

「目を逸らすな! ちゃんと目を見ながら言え!」

ヒョエェ〜〜

「まゆちぃから御褒美を受けたいにゃん‼️♡(ヤケクソ)」

「気持ち悪いんだよこの変態!」

ばしぃっ!

「グハッ!」

俺の体は宙へ投げとばされた。左頬には猛烈な痛み。痛みは俺の全身を駆け巡り、オブラートのように包み込んだ。

ドスッ。

地面へ倒れ込んだ俺に、まゆちぃが話しかけた。

「……痛かった? でもその痛さが、私の愛だよ♡」

ぞくぞくぞくぞくぞくっ!

身体中の、何かが震えるぜっ!

だから商品名が『ツンデレソーダー』なのか! クッソォ! 痺れるぜ!

アハ体験を味わっていた。全身へ駆け巡る感じ……。俺は完全に『気持ちよく』なっていた。

畜生……今年で35歳。ここに来て『ドM』に目覚めてしまいそうだ……。

「おいおい。いつまでへばってんだ。次が始まるぜ?」

タケシに話しかけられて、現実に戻った。

いつの間にか、まゆちぃは俺たちの元を離れ、違うお客さんのところへ言っていた。


「ねぇ! サトシ! 何であんなことしたの!?」

「え? 何のことだ?」

「何で、横のクラスのリコーダーペロペロしてたの?」

ブフゥーーー!!

吹いた。盛大に吹いた。

何だよその表現。表現力豊かすぎるだろ。

「す、すいませんでした!」

「謝って許されると思ってんの? 許して欲しかったら、こっちにきて。机に手をついてお尻向けなさい!」

「は、はいぃ!」

サトシさんはオドオドしながら机に手を付けた。そして、プリっプリのお尻を、まゆちぃの方へ突き出した。

まゆちぃは、バットを持って、サトシさんを冷めた目で見ていた。

「僕は、隣のクラスのリコーダーをペロペロしました。と大声で言いなさい!」

「僕は、隣のクラスのリコーダーをペロペロしました!」

「声が小さい! もっと!」

自分「僕は、隣のクラスのリコーダーをペロペロしました!!」

その声は、カフェ内に響き渡った。全員の目線がサトシさんに集中している。

「僕は変態ですと言いなさい!」

「僕は、変態です!!」

「気持ち悪いんだよこの野郎!」

バンッ!

「ぎゃーー‼️」

まゆちぃのバットが、サトシさんのケツへ襲いかかった!

サトシさんは、空中で1回転し、ケツから地面へ着地した。

「ヒエェ! 俺のケツ穴が! ケツ穴がーーー!!!」

「ごめんね? 痛かった? サトシ、真面目に反省してくれたから、まゆちぃ嬉しかったよ♡ 大好き♡」

「うひょーーー!!!」

サトシさんは地面でもがき苦しみながら、目をトロンとさせ、口を♡マークにしていた。コイツ全然反省してねぇ。

俺は机の上へ置かれていたソーダーを口にした。炭酸が抜け切っている。

「すみません。そろそろ俺のツンデレソーダーも頼む」

タケシが手を挙げ、メイドへ呼びかけた。

「はーい♡」

メイドがイタズラした子供のような笑顔をして、厨房へと消えていった。

「タケシ。お前、ツンデレソーダーの何を注文したんだ?」

「まあ黙って見とけって」

「おう」

タケシはジト目で俺を見つめた後、水を一杯飲んだ。そういえばタケシにまだソーダー届いていないんだったな。


カウンターの裏からまゆちぃが現れた。またしても思い詰めた顔をしている。

まゆちぃは俺たちのテーブルへ近づくと「おい。タケシ」と言った。

「何だ?」とタケシは言う。

「私、知ってるからな? さっきから、無言で大人しくクール気取ってるようだけど。タケシが誰よりも私たちメイドをチラチラ見ているところをな! このムッツリドスケベ野郎!」

「ひぃぃ!」

タケシは背筋をピンと伸ばして恐縮した。えぇ! そうだったのぉ!? この話が本当なら、コイツ、相当なムッツリドスケベ野郎だぞ!

まゆちぃは腕を組んで仁王立ちしていた。怖ぇ……

「さっきからずっと視線を感じて、気持ち悪かったんだよ! お仕置きが必要ね……」

「はい! 喜んで!」

タケシの野郎。何で怒られてんのに目をキラキラさけて喜んでいるんだよ。

「今から、プラスチック手袋を付けて、四つん這いになりなさい!」

「はい! 喜んで!!」

まゆちぃはタケシにプラスチック手袋を投げつけた。タケシはエサのように拾い上げ、手へ装着する。

そして四つん這いになった。

見ていられなくなり、俺は炭酸が抜けきったソーダーを再び口にした。

「何こっち向いて四つん這いになっているの? パンツが見えちゃうじゃない! 後ろ向いてくれる?」

ブフゥーーー

ソーダー吹き出したわ。

タケシは静かに後ろへ向き直し、四つん這いになった。

「ほらほらぁ! このまま歩きなさいよぉ!」

まゆちぃは鬼コーチのようにタケシへ命令した。

「ひ……ひぃぃ」

タケシは悲鳴を上げながら、内心嬉しそうに、四つん這いになって歩き始めた。

「ほらほら。鳴きなさいよ」

「ワンワン。ワンワン」

タケシの野郎。完全にメイドのペットじゃねーか。

「ご近所さんにも挨拶して」

「こんにちわでしゅ。ワンワン」

惨めだ。先輩にタメ口で話して、冷めた口調で話すタケシが今、メイドに命令されて犬になってやがる。

「ギャハハ! アイツ、四つん這いになって歩いてやんの」と、サトシさんが指を指してゲラゲラ笑っていた。いや、サトシさん? アンタもさっき恥ずかしいセリフ吐いてケツバットされてたじゃん? 人のこと言えんぞ?

「ほらほらぁ。止まりないよ」まゆちぃがタケシのケツを踏んで、命令した。

タケシは、お利口さんに「ワン」と言って動きを停止した。

「アンタさぁ……四つん這いで歩いてる時、他のメイドさんのこと見てたでしょ?」

「はい。見てました」

めっちゃ真顔で肯定するやん。気持ち悪いぞタケシ。

「大きな声で『僕は世界一の変態です』って言いなさい?」

「僕は世界一の変態です」

「もっと大きな声で!」

「僕は世界一の変態です!」

「犬なんだから、語尾に『ワン』を付けなさい!」

「僕は世界一の変態だワン!」

横のテーブルに座っていたサトシさんが「ギャハハ w w w」と言って吹き出した。だからアンタも人のこと言えないって。

「まゆちぃにお尻を蹴られたいですって言いなさい!」

「ま、まゆちぃにお尻を蹴られたいワン!」

一瞬動揺してんじゃねぇか!

「僕はドMの変態ですって言いなさい!」

「僕はドMの……」

「気持ち悪いんだよぉ!」

バシっ!

「ぐおお!!」

タケシは、ケツを蹴られた。勢いは凄まじく、まるで新幹線がタケシのケツへ突っ込んだようだった。

タケシは「この痛み、けつあな確定!」と言いながら、地面でもがき苦しんだ。

まゆちぃはしゃがみ「でも、偶にはアンタの犬になってあげても良いんだからね?」と言った。

「うひょーー! お! ね! え! さ! ん!」

タケシは壊れた。もう帰って来ない。目は虚になり、体は痛みで動けないが、暴れたそうな様子だった。

馬鹿な光景を目にしていると、別のメイドさんが話しかけてきた。

「マナブ♡ 1時間経っちゃったから、そろそろお出かけの時間だね? ドリンクもう一杯注文すれば、もう1時間いれるけど、どうする?」と、

1ドリンク1時間制だったのか。知らなかったわ。

うおーーー!!!

幸せな時間が終わってしまうーーー!!!

気付けば俺は、メイドカフェの虜になっていた。

でもダメだ。ここでドリンクを頼んでしまったら、無限ループに突入してしまう。

「いえ、そろそろ出ます。ありがとうございました」

「分かった♡ ご主人様がお帰りにゃん♡」

半分以上残っているソーダと、タケシを置いて、メイドカフェから離脱した。金はタケシの分も払っといたから大丈夫だろう。これ以上何か頼み出したら知らんけど。


気付けば現実のことなんか、どうでも良くなっていた。

仕事で、俺は課長から降格した。

単純に考えて、今の俺には課長の能力が備わってなかったってことだ。

仕事できるようになってから見返して、また上り詰めれば良いだけ。冷静に考えたら簡単なことじゃん?

今のまま課長をやり続けていたら、仕事が出来ないことに気付けないままだった。一生、恥を晒すだけだった。

明日からいっちょ頑張ってやるか! また「お帰りなさい♡ ご主人様♡」って言われたいしな。

こうして俺は、前を向いて歩き出した。

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