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6話

「……」

「……」


 うわぁ、めっちゃくそ気まずい。

 どうしてこうなった。

 いや、実の姉と一緒にいて気まずいってのもおかしな話なんだけど、家の外で改まって話すことなんて何もないんだよなぁ。


「ときに千君」

「お、おお……なに?」

「神原さん家の一織ちゃんとはどうなのでしょうか?」

「ゴホッ、ケホッケホッ」

「大丈夫ですか?」


 大丈夫じゃねーよ! いったいどういう趣旨の質問だよそれ。


「どうなのって、なにが?」

「相も変わらず仲は良いとはお母さんから聞いていますが、実際のところ、どういう仲なのか、という意味です」

「おふくろの差し金か!? なんもねぇよ!」


 驚くくらいに進展なし! むしろ、去年は勉強を教えていたりしていた分、一緒にいる時間も多かったから、今ちょっと寂しいわ!

 という悲しい叫びは一言で済ませる。姉貴に言ったところでどうにもなんないし。


「そうですか。しかし、一織ちゃんは随分と変わりましたね」

「そうか? まぁ、髪の色は明るいし、化粧とかも始めたっぽいもんな」

「外見もそうですが、中身もです」


 中身……? そんな変わったかなぁ。昔から明るいヤツだったし、友だちも多かった。


「昔はもっとグイグイ来ていました」

「なにに対して?」

「……千君にはまだ早いです」

「どういうこと!?」


 高校二年生で遅いとか早いとかあんの!?


「あ、雨が強くなりましたね」

「そうだな!」

「なにをカリカリしているのです? 千君は普段はもっと落ち着いているでしょう」


 アンタがツッコミどころ多いだけだ。

 マイペース過ぎるのだ、この姉は。


「そうでした千君。今日は駅前のスーパーで卵が特売なのです。お母さんが買えたら買ってきてねと言っていました。残念ですが、少し引き返さないといけませんので、千君とはここでお別れです」

「いやいや、なんでだよ。普通に付き合うって」

「いいのですか? 戻らないといけませんよ?」


 駅への道は少し戻らないといけない。と言っても数分程度だ。


「いいって、ほんのちょっとじゃん。それに、どうせお一人様一点のとこだろ? 二人いた方が特だって」


 って、いつも、おふくろに付き合わされるから俺もお一人様一点限りと広告に書かれた物はついて行かなきゃ行けない気がするようになってしまった。


「ふふっ、千君はやっぱり優しいですね。自慢の弟です」

「いや、謙遜じゃなくて普通のことだと思うよ?」

「そうですか? ですが、私は千君以外の弟を知りませんので、やっぱり私にとって千君はとても優しい、大好きな弟です」


 ニコリと笑う。我が姉ながら本当に綺麗な人だ。

 この姉には一生、あらゆる面で敵わないんだろうなぁ。


「あ、雨が止みましたね」

「雲の切れ間っぽいから、どうせすぐに降り出すよ」


 雨雲が向かって来ているのが見える。これは、明日も雨かなぁ。

 梅雨はまだ始まったばかりで、神原とはまだまだ会えない時間が続くのだろう。


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