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1話

一万文字の短編を7話構成にしただけです。

「恋愛は付き合うまでの過程が面白い」

「は?」

「なんて、ネットに書いててさ。どう思う? 神原」

「アレっすね。アホかって思います」


 放課後の屋上で、神原かんばら一織いおりはそう言って、手にしていたパックジュースのストローを口にくわえた。


 ポニテに結ったほとんどオレンジに近い茶毛は高校に入ってから染めたもので、随分とチャラそうに見える彼女は実際に言動もチャラい。

 周りの友だちはギャルだし、男友達だっている。

 一昔前のギャルゲとかラノベならヒロインとしてはダメなタイプ。


 だってビッチっぽいじゃん?


「ね、ね、塚セン、今超絶失礼なこと考えてないでした?」


 ちなみに、塚センとは俺のこと。塚本つかもと千利せんりで塚セン。一応、先輩であるので、センの部分は先輩だと信じたい。


「よく分かったな」

「分からいでか。何年の付き合いだと思ってんだよー」


 何年……? ええと、小学校……の頃からの付き合いだから……。


「だいたい六年くらい?」

「七年だよ。なんで、覚えてないんさー。塚センひどくね?」

「ひどくないひどくない。むしろお前のがひどい」

「はぁ!? なんで!?」


 紙パックを握りしめんばかりに驚く神原。オレンジジュースがこぼれちゃうでしょう。


「あのなぁ、人気のないとこで、そんな胸元開けんな」


 俺が指さしたのは、制服の第三ボタンまで開いて、あらわになっている神原のお胸様。


「でかいんだから、こぼれちゃうでしょ?」

「うっわー、どこ見てんの塚セン。えっろいんだ〜。ってか、人気がない場所がダメならって、人気の多い場所ならいいのかよ、おい」

「それは、自由意志だ。ただ、まぁ……あんま他のやつにも見せない方が……」

「え? そ、それって……」

「ほら、風邪とかひくぞ?」

「あ、はい……」


 風邪とかひくのもよくないが、それ以上に俺が見て欲しくない。

 さすがにそこまでは口に出せないが、本当にそう思う。

 なぜなら、俺は彼女が好きだから。片想いを続けてもう結構経つわけだが、一向に勇気の一歩を踏み出せずにいる。


 嫌われてはないと思うんだけど、長く一緒につるんでいるせいか、居心地が良過ぎるのだ。

 つまり、チキンな俺は告白をして今の関係を壊したくないわけである。笑いたければ笑うといい。


「はぁ、塚センってアレだよね」

「アレとはアレか」

「そう、アレ」

「なるほどな。アレかー」

「アレなんだなー」


 アレってなんだよ。もしかしてアレか?


「めっちゃ優しいよね」

「おい、いきなり褒めるなよ。照れるだろ」

「いや、あんま褒めてないです」


 え? 褒めてんじゃん。褒めてないの?

 チューとパックの残りを一気に飲み干し、立ち上がる。


「塚セン。そろそろ帰りましょ」

「一緒に帰んの?」

「なわけ。今日もバイトですぅ」


 知ってた。

 毎日、という程でもないが、神原のバイト先とやらは人員不足らしく、放課後はバイトで忙しそうである。

 しかし、バイトの時間までは少し時間があるらしく、その暇を埋めるために、暇な俺をツレにして放課後で雑談をするわけだ。

 バイトない日は普通に友だちと帰ったり、遊んだりしている。都合の良い俺ですこと。


「俺もバイトしようかなぁ」

「とか言ってはや一年。そして、後輩の方が先にバイトを始める始末」

「去年はお前の受験勉強に付き合ってたからな」

「うわっ、この人、後輩のせいにしました! ありがとうございました!」

「ははっ、いいよ。俺も好きでやってたから」


 もちろん下心的な意味で。そりゃ、思うでしょ。一緒の学校に通えたらなぁ……とか。

 キモイかな……?


「そっすか。好きで……。塚セン頭いいっすもんねー」

「んなことないけど」

「いやいや、もうアタシからするとヤバいって」


 中学の時、平均点を軽く下回っていたからなぁ。よく、うちの高校来れたよ。

 俺も死ぬ気で頑張ったけど、神原はもっと頑張った。


「ちょ、なんでいきなり撫でてくんすか!? セクハラ!?」

「そうそう、セクハラ」

「訴えてやる! つーか、髪乱れる!」


 ペチンと俺の手を払って威嚇する神原を無視して屋上の扉を開ける。


「あ、逃げんのかこらぁ」

「バイトの時間になるぞー」

「やっべ、塚センで遊んでる場合じゃねぇ!」


 むしろ遊ばれてんじゃ……そうでもないか。


「ほら、塚セン。門までは一緒に帰ってあげますから」

「それ五分もかからんぞ」

「にしし」


 あー、もう笑った顔が可愛いなちくしょう。


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