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勇者の称号を剥奪された体力バカ~「超回復:体力」を魔力とステータスに変換して無双します~  作者: 信仙夜祭


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第58話 ダンジョンへ

 今は自由落下中である。光も届かなくなり、底も見えない。

 上空からは、怪物が迫って来ているのが分かる。

 コートで飛んでいるがスピードを緩めることも出来ないので、このまま谷底に衝突して上から怪物に覆いかぶさられて終わりかもしれないな。

 だけど、僕は冷静であった。

 封神巻子装を展開して、亜空間に逃げ込んだのだ。

 怪物は、入り口が小さすぎて入って来れない。そして、その巨体の重量で落ちて行った。

 考えていたわけではなかったのだが、咄嗟の判断としては良かったと思う。

 僕は、怪物が谷底に落ちて行くのを確認して、亜空間から出た。

 そして、コートを使いゆっくりと降下して行った。


 真っ暗なので明確には言えないが、ある地点から空間が変わった。

 多分だが、ダンジョンに入ったのであろう。

 だが、まだ底は見えない。

 ここで思う。


「竜人達は、このダンジョンを攻略しているのだろうか?」


 いや、チョウホウがいるのである。僕には思いつかない方法でこのダンジョンを攻略しているのかもしれない。

 余計な思考をしていると、音が聞こえ始めた。

 怪物が蠢いているのであろう。

 火魔法を使い明かりを灯す。思った通りに、怪物が眼下にいた。

 かなりの上空になるが、僕はここで落下を止めて空中に留まり、怪物を観察することにした。


「このダンジョンは、アンデットが出るのか……」


 スケルトンやグールといった魔物が、怪物に襲い掛かるが、そのまま捕食されている。

 観察を続けていて思ったのだが、怪物はアンデットを捕食してもその体積を変えなかった。

 いや、それどころか、最後には捕食すらしなくなった。アンデットを蹴散らすのみだ。

 どうやら、あの怪物はアンデットを捕食しても、消化出来ないみたいだ。

 まあ、ロベルトのスキル〈超回復:負傷〉をベースにしているのである。

 不死性の魔物を取り込むと反発するのかもしれない。


 どうしようか。このまま待つか?

 時間稼ぎには成功したと思うが、連絡手段がないので、ネーナが心配していると思う。

 だが、目を離した際に何をされるかも分からないので、動きたくもない。

 そう思っていると、怪物に変化が現れた。

 壁を登り始めたのだ。


「ダンジョンの奥へは行こうとせずに、僕に向かって来るのか……」


 怪物は、始めはその巨体で壁からすぐに落ちてしまったが、その姿を徐々に変え始めた。

 肉で出来たスライムとしか形容出来ないその体を、縦長にして長高を伸ばして来たのだ。

 そして、壁の凹凸を利用して徐々に登って来る。

 終いには、糸を放出して体を固定し始めた。どうやら捕食した魔物の中に糸を使う魔物がいたみたいだ。

 粘着性の糸を張り巡らせて、眼下はもはや巣である。

 螺旋階段状の巣を作り始めて、登って来た。

 他の魔物のスキルも同時発現されると、かなり困った状態になるが、今のところは糸だけである。

 これで、麻痺とか毒まで生成されたら、無敵だろう。


 いや、分裂しないだけまだ救いがあるかな? スライムは分裂しないのだろうか?

 そして、飛行生物は取り込んでいない? 空間魔法や重力魔法を獲得している可能性……。

 最悪の想定をしながら、観察を続ける。


「これは、まずいな。数十時間は掛かるかもしれないが、ダンジョンから出てしまいそうだ」


 だが、足止めは出来た。今の状況は、数十時間は変わらないだろう。観察はここまでで良いはずだ。

 僕は、コートを使い高度を上げ始めた。


 落ちるのは楽である、地面に激突するのだけを避ければ良いのだから。

 だけど、飛ぶのは、労力と言うか魔力を必要とする。

 どれだけ落ちたかも分からないし。

 そして、このダンジョンは暗闇に覆われていた。

 今は、火魔法で明かりを灯しているが、どれだけの高く飛べば抜け出せるのかは不明だ。

 これは、人類領にあったダンジョンとは比較にならないほどの難易度となるだろう。

 まず、飛行能力がなければ、ダンジョンの底でミンチだ。そして、帰れない。

 そんなことを考えている時であった。


「これ以上進めない?」


 何かがあるわけではない。だが、上昇しようとする僕を止める壁みたいな物を感じる。

 頭上の空間に触れてみる。

 それだけで、この場所の意味が分かった。


「……このダンジョンは、一方通行だったのか」


 空間が歪んでいた。光さえも捻じ曲げてこの先に通そうとはしていない。

 ヒルデさんの冒険譚を思い返していた。

 入ったは良いが、入り口からは出れないダンジョン。そのダンジョンは、彷徨って最下層まで行き、攻略しなければ抜け出せなかったと言っていた。

 一応は、罠を警戒していたのだが、他に手がなかった。そして、ダンジョンの罠に嵌ってしまったか。

 降りれば、怪物の餌食だろう。進退窮まっている。

 そして、僕の魔力には限りがある。また、睡眠を取らないと暴走してしまう。


「ここまでかな……」


 後は、ネーナとイルゼに任せるか。

 僕は特攻するしか思い浮かばなかった。運が良ければ、怪物を躱してダンジョンの奥に行けるだろう。

 考えるだけ、時間の無駄であり生存の確立も低くなって行く。

 先ほど、封神巻子装を使い魔力の大半を失っている。再度、魔力を生成しても結果は変わらないだろう。

 いや、もう一つだけ手があるか。


「禁じ手……。怪物と共に自爆する方法が残っているか」


 ヒルデさんに僕のスキルの意味を教えて貰った時に、絶対にしてはならないことを教えて貰った。

 それを使えば、あの怪物は止められる可能性はある。僕の命と引き換えだが。

 確実とは言えないので、出来れば避けたい。

 時間的余裕があるので、思考は働く。だが、全てが悪い方向にしか進まないアイディアしか出なかった。

 そんな時だった。


「青年! こっちだ!」


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