第51話 異変2
高度を取り、上空より俯瞰した。
あたり一面、破壊の限りを尽くされている。
森林だったと思われる場所も、ほぼ全ての樹木が折れていた。
魔物の死骸も、少しだが見つかった。やはり、シスイ関前で倒したことのある魔物である。
少し先を見るために顔を上げた。
視線の先には、竜人領と思われる高い山がある。何時も見ていたので間違いはないであろう。
考えていても仕方がない。シスイ関に行こう。追い返されたら、竜人領は安全と考えて良いはずだ。
そういえば、カンエイは元気だろうか?
とりあえず、地上に降りて、倒木の隙間を進むことにした。
ふと、樹木の状態が気になる。
「大きな力で上から押し潰した感じかな? まさか……ネーナ?」
ネーナの狂戦士化なら、出来ないこともないだろうけど、範囲が広すぎる。
ネーナではないな。一日で出来る量じゃない。
しかし、どれだけ進んでも魔物はいなかった。
邪魔が入らないのは良いのだが、何がおきているのだろうか?
そして、なぜ僕はあそこで寝ていたのだろうか?
……ネーナは、何処にいるのだろうか?
疑問ばかりが増えて行く。とりあえず、情報が欲しい。
そんなことを考えているとシスイ関が見えた。見えたのだが……。
「随分と壊されたものだな」
走って近づくにつれて、全体像が見えて来た。
シスイ関は、瓦礫の山と化していた。これでは、遠くからでは、シスイ関とは分からなかっただろう。
どうやら、戦闘があったみたいだ。魔法の痕跡や矢弾が残っている。
僕は、ネーナみたく地面を探って過去の状況を想像したりは出来ないが、ここで戦闘があったことは間違いないだろう。
そして、大蛇が通った跡みたいに、凹んだ地面が、シスイ関へ続いていた。
シスイ関内に移動してみると、誰もいなかった。死体さえない。
まずい、情報が手に入らない。
どうしようか。
とりあえず、瓦礫を椅子にして考えてみる。
方向は二つ。このまま竜人領へ進むか、人類領へ戻るか……だ。もしかすると、近くにダンジョンがあるのかもしれないが、探すよりは、走った方が僕には合っている。
そして、ネーナだ。ネーナが何処にいるのかさえ分かれば、僕の行動は決まる。
推測する。
ネーナとイルゼは、竜人達が困っていた魔物を見て人類領に帰って来た。
そして、僕を連れてシスイ関近くまで来た……と。
ここまでは、間違いないだろう。
そこで、不測の事態が起きて、僕と別れた? ここに疑問が残る。
原因となる魔物は、竜人領の奥地へと進んで行ったと思われる。
それと魔物には、足がないと思われる、そして、かなり大きい。多分だが、体を引きずって動いていると思われる。ただし、蛇の形ではないな。
竜人達は、旧人類である僕を歓迎しないだろう。このまま進んでみたいが、単独で行動すると攻撃されかねない。過去の失敗を思い出す。
せめて、インコウかチョウホウの案内が欲しいところだ。
「ネーナは、多分この先にいるのだろうな……」
行くか。
僕は、竜人領へ入ることにした。
多少のリスクはあっても、状況を確認したかった。また、ネーナを放っておけない。
そして、ネーナは竜人領内で何かしらの対策を行っていると思われる。ネーナは責任感が強いからな。
見捨てる選択肢は、取らないだろう。
魔物の痕跡もあるし、道を間違えることもない。
心配なのが、竜人からの攻撃であるが、今は非常事態だと思う。大丈夫であろう。
竜人領の先を見る。
かなり遠くで、煙が舞い上がっていた。
目的の魔物は、あそこにいると思う。
ステータス変更:スピード特化
「さて……、久々に走るか!」
とりあえず、僕は魔物を追うために、竜人領を駆け抜けることにした。
なんとか10万文字達成です。




