第50話 異変1
とりあえず、方針が決まった。
僕は何もしなくて良いみたいなので、第六の関所に残って復旧に協力だ。
ネーナは、王城に槍を取りに行き、イルゼは、竜人に着いて行き問題の魔物を観察するらしい。時間がないため、別れるとのことだ。
別に拗ねてないですよ?
さて、今日も頑張るか。
「ビット。良かったのか? ネーナ様の決定とは言え、頭を下げた方が良かったのではないか?」
リセイ関長が質問して来た。
「……ネーナも随分と強くなっていますし、大丈夫でしょう。
イルゼが先に見に行くことになっていますし、あの二人で対応出来ないのであれば、僕が行ってもそう変わりませんよ」
「戦術的には、初手で最大戦力を投入するのが最善なのだが……」
「リセイ関長が行きますか? 関所は、僕が守りますので」
「……。狂戦士化だけは、避けてくれよ」
それだけ言って、リセイ関長は、持ち場に戻って行った。
ネーナとイルゼだが、竜人の騎乗出来る鳥に乗って移動だ。インコウが、もう一匹を呼んだのだ。
なんでも、ダンジョンで待機させていたらしい。
チョウホウは、一度入ったことのあるダンジョンを繋げる能力があるのそうだ。
空間魔法らしいが、僕は聞いたことがなかった。
ヒルデさんなら出来るのだろうか? でも、ヒルデさんと過ごした空間は、一ヵ所しかなかったので、ダンジョン間を繋げる能力は、披露してくれなかったのかもしれないな。
まず、第六の関所近くのダンジョンに入り、王都近くのダンジョンから出るのだそうだ。
そして、ロンギヌスの槍を回収してから、竜人領にあるダンジョンに移動する……。ダンジョン間限定であるが、長距離転移魔法になるのだろうか?
前回の魔物の氾濫の仕組みが、少しだけ理解出来た気がした。
僕は、ネーナとイルゼを送り出し、関所の復旧作業に戻ることにした。
◇
日も暮れたので、夕食だ。歓談をしながら、衛兵達と夕食をとる。
この一年で食糧事情も大幅に改善された。
ネーナが畑を大きくし、家畜も増えたので質も量も大満足だ。
まあ、僕は食べなくても良いのだけどね。
今、大好評なのが、チーズだ。第六都市で大量生産に成功し、内地に輸出までしている。
夕食も終わって、自由時間となった。
だけど、することもないので、僕はそのまま寝ることにした。
気持ち良く寝ていた時だった。
ドアが乱暴に開かれる音がした。カギを掛けておいたのだが……。
その音で少しだけ目が覚めた。まだ、覚醒しきっていない頭を回し、眼を開ける。
だけど、そのまま簀巻きにされて、部屋から出された。
『まあ、間違いなくネーナだよな』
一日で帰って来たのかな? なんか話し声が聞こえるけど、今日はもう眠い。
多分この後は、牢屋だろうけど、布団に包まっているので、気持ちが良い。
今日はこのまま、寝てしまおう。
◇
どれくらい寝ていたのだろうか?
目が覚めた。太陽がまだ低いので、何時も起きる時間だと思われる。思われるのだが……。
「う~、寒い」
場所は、屋外であった。
運ばれていたのは、理解していたけど、ここは何処ですか?
とりあえず、布団から這い出て、火魔法で周囲の温度を上げた。
そして、周りを見渡す。
「なんで誰もいないのだろうか?」
何がおきたのだろうか?
そして場所である。大樹が折れており、元が森であったことが伺える。
森林を破壊された跡……、そんな場所で一人で寝ていた。
索敵を展開するが、周囲には魔物は一匹もいない。
「魔物がいれば、場所の判断もついたのだけど……」
推測する。
ここは、シスイ関前の森ではないだろうか? なんとなくだが、雰囲気が似ている気がした。
何故ここに運ばれたのかは、推測の域を出ない。
「しょうがない、調べるか……」
ネーナの無茶ぶりは何時ものことである。
後は、布団を〈空間収納〉に入れて、代わりにコートを出した。
僕は、コートを着て飛んだ。
高度を高く取れば、何かしら分かるだろう。




