第47話 復興7
一年が過ぎた。
第六都市の復興は終わり、今度は、第六の関所の修復が始まった。
そして、開拓村へ向かう途中の村……、第七都市になる予定の地にも人が戻って行った。
魔物による被害もあるが、衛兵達による駆除も再開され始めたので、大丈夫であろうとの判断だ。
イルゼだが、ダンジョンから出たお宝で何かを作り始めた。魔道具になるのかな?
そして、スキルを封印する指輪の代わりを作ってしまった。形は、ネックレスよりも大きい……、胸当てと言って良い形だ。
魔石を組み合わせると、こんなことも出来るのか。
ただし、効果は半分と言ったところだろう。スキルを完全に封印する物ではなかった。
それでも、イルゼには必要な物だったらしい。
イルゼは、スキルを半分封印してから、成長が著しかった。今では、上級魔法を連発している。
開拓村時代に大怪我を負わされた大蛇など、秒殺しているくらいだ。
強大すぎる力や、極振りは、デメリットの方が大きかったみたいだ。今は、イルゼに丁度良いくらいのスキルとなっているので、本人も満足しているように見える。
また、魔道具の開発にも力を注いでいるらしい。
何を作りたいのかは、僕には分からないので、完成したら見せてくれるとのことだ。
ヒルデさんから貰った指輪は、無事に僕の元に返って来たので、僕のスキルが暴走した時も止めることが出来るようになった。
まあ、暴走させなければ良いだけなので、本当に保険だ。
リセイ関長は、【闘気】の練習を行っている。
正直、リセイ関長の【闘気】は、魔法とスキルに取られており、発現出来ても量が少ないことが判明した。
僕やネーナみたいに、魔力がなく、スキルのみの方が、【闘気】を扱うのには向いているみたいだ。
それでもリセイ関長は、色々と試しているみたいだ。今の人類領で魔法とスキル、【闘気】を同時に行使出来るのは、リセイ関長くらいだろう。ステータス頼りの僕とは異なる方法で、強さを追求して行くみたいだ。
まあ、【闘気】を覚えたのである。一年前と比較にならないほどの強さを手にしたのは確かだ。
ネーナは、第六の関所の復興に尽力している。
第六都市の治安維持と経済の再建をお願いしたら、吹き飛ばされた。もはや、誰もネーナを止められないであろう……。僕でも無理です……。
それでも、作業服を着て、資材を運ぶお姫様と言うのは、どうなのだろうか?
王城に持って行った剣なのだが、即日国宝に認定されたと連絡を受けた。受けたのだが……、ネーナが大暴れしたらしい。全て台無しである。
何があったかは聞けないが、あの剣は、装備者に特別な魔法を付与する能力があったみたいだ。
ネーナは、〈怪力〉の活躍の場を与えれば、ご機嫌だ。
それと、僕と組み手を行うようになった。ネーナと僕は、格闘術の経験が乏しかった。ステータス頼りで技術が伴っていなかったのだ。まあ、それでも人類領でトップクラスなのだが。
リセイ関長の指導の下、素振りから始めて、一応初段の合格を頂いた。
今の僕達なら、竜人の軍隊とも渡り合えるだろう。行きませんけどね。
それと、今日も大きな鳥が、空を飛んでいる。
上空を旋回して、また何処かへ行ってしまったが。
◇
「第六の関所も大分元に戻って来たのだわ」
今は、休憩時間である。僕は、ネーナとお茶を飲んでいた。
「壁は僕が直しておいたし、中央部の修理だけだからね。石材を積み上げて、屋根が出来れば住むことは出来るよ」
「そうですわね。そうなると、私達は、もう開拓村に向かった方が時間の節約になりますわね」
正直、ネーナ一人でも百人力だ。資材集めだけであれば、数日で終わってしまうだろう。
その後、建築はスキルが活用出来ないので、ネーナには不向きなのだが、時間が出来たらダンジョンに籠って貰うのも良いかもいしれない。
ネーナは、探索者として、かなり優秀である。
いや、第七都市の建設に取り組んで貰うのも良いかな。今は小さなあの村の周辺に城壁を作れば、安全地帯となるであろう。
そんな話をしながら、和やかにお茶を飲んで歓談している時であった。
警鐘が鳴った。
二人で城壁に向かう。するとそこには、大きな鳥に乗った竜人がいた。
衛兵達は、剣を抜いて臨戦態勢である。
僕達より先にリセイ関長が話し始めており、状況が分からない。
今頃、何しに来たのだろうか?
僕達が、その場に向かうと声をかけられた。
「青年! いや、ビットと言ったな。頼みがある!」
「インコウとチョウホウ?」
一年ぶりだ。
しかし、頼み? 本当になんだろう?




