第45話 復興5
帰路に着いた。
本当は、ダンジョンからの脱出も危険を伴うものなのだが、魔物のいないダンジョンである。
そして、地図化も済んでいる。
問題なく脱出出来てしまった。
「……ただの遠足になってしまったね」
「不満なのかしら? それと、もうすぐ日が暮れるのだわ。
寝なくても良いのかしら?」
あ、忘れてた。二日連続で同じミスを犯すところであった。
「そうだね、日暮れ前には、第六都市に帰りたいな」
「ふう。まったく、また、お姫様に運ばせようとか考えていたのかしら」
苦笑いが出てしまう。
男性を担いで移動するお姫様は、ネーナだけですよ?
「ネーナであれば、僕なんか小指で持てるでしょう?」
──ブン
モーニングスターが、鼻先を掠めた。いや、慌てて躱していなかったら直撃だったのだけど……。
「何か言ったかしら?」
「ナンデモアリマセン」
こうして、走って第六都市に向かった。
◇
「ネーナ様とビット!? 予定より早くないですか?」
第六都市に着くと、イルゼから声をかけられた。
イルゼは、車椅子から松葉杖に変わっていた。この二日間で、大分回復したようだ。
あの指輪は、僕のスキルが暴走した時用に持っていたのだけど、この分では当分返して貰えそうにないな。
ダンジョンで僕のスキルが暴走しかけたけど、やっぱり保険として持っておきたい。
そのうち取り返す方法を考えておこう。
ネーナが、カバンから宝箱を取り出した。作業員達が驚いて集まって来る。
本当であれば、お祭り騒ぎになるのだが、今の第六都市に貴金属や宝石は無用の長物である。
ネーナの指示で、第五都市と第四都市に貴金属を持って行き、食料と必要な物資と交換するように指示が出た。
皆納得しており、『欲しい物リスト』の作成に取り掛かっている。
そして、問題なのが剣であった。
「リセイ関長が持てば良いのではないですか?」
「まず、鑑定からかしらね。呪いと言うか、デバフ効果付きであった場合、取り返しがつかないのかしら」
「ビット。私は、この二本の剣で精神の安定を図るバフ効果を得ている。ありがたい申し出だが、私は今の剣以外を装備する気はないのだよ」
精神の安定? 良く分からないけど、リセイ関長には、不要なのだな。
僕は、剣術は習っていない。僕が使っても折ってしまうだろう。僕は、今ある棍棒と短剣で十分だ。
そうなると、国宝級の武器を任せられる自分はいなかった。
相談の結果、王城に持って行き、鑑定結果から適任者を探して貰うことにした。それと、ゴブリンロードが持っていた杖とネックレスもだ。
前回の、魔剣の槍みたいに遊ばせておくよりは、誰かに使って貰った方が良いだろう。
「一応、二日間ですけど、僕達が不在の間、何か変わったことはありませんでしたか?」
「う~ん。大きな飛翔生物を見かけたくらいかな? Uターンしてこちらには来ませんでしたけど」
竜人かな? 監視に来たのだろうか?
まあ、もう攻撃して来ることはないであろう。
この後、ネーナに剣を王城に持って行くように頼むと、暴れ出した。
適任者は、ネーナしかいないというのに。
何とかなだめることには成功した……。
後日、ネーナを送り出してダンジョン探索は終了となった。
さて、僕はこれからのことを考えようかな。




