第43話 復興3
とりあえず、ダンジョン一層は、ネーナが制圧したので、二層に降りることにした。
僕? 僕は今のところ荷物運びですが、なにか?
え? ネーナがアイテムボックスを持っている? なら、松明で明かりを灯す係かな……。
ネーナに着いて行き、二層の階段を降りて行く。
ネーナは、何の躊躇いもなくそのまま進んで行く。余りにも迷いがなさすぎるな。
一応、聞いてみるか。
「ネーナは、随分と慣れた感じだね。王城近くのダンジョンもこんな感じかなの?」
「あら? 言ってなかったかしら? このダンジョンは、十層まで踏破しているのだけど、踏破したのは、私の率いるパーティーでしたのよ」
「はい?」
頭痛が酷い……。
ダンジョンを踏破するお姫様って、他にいるのだろうか?
きっと、前回も、ネーナが先頭切って進んだのだろうな……。
そんなことを考えていると、二層に着いた。
二層は、一面草原だ。そして、空がある。太陽と言うか、陽の光が差していた。
僕は、松明の火を消した。
「ネーナ。この層のことを教えて」
「ダンジョン二層は、『回帰の草原』と呼ばれていますわ。真っすぐ進んでいるつもりでも、スタート地点に戻って来てしまう……。空間が歪んでいる層なのだわ」
良く調べられているな。
空間が歪んでいるなど、どうやって調べたのだろうか?
そして、層に名称まで付けているとは……。前回のネーナのパーティーは優秀な地図師がいたのだろう。
「どうやって、踏破したの?」
「始めは、何も考えずに進んでいたのだけど、何度もスタート地点の階段に戻って来てしまったので、地面にマーキングする方法を取ったのだわ」
「マーキング?」
「こうやったのですわ」
ネーナがモーニングスターを抜いた。そして、地面を叩きつける。
──ドゴーン
爆発が起きて、草が飛び散った……。え? それが、マーキング?
「これで一度通った場所は、分かりますのよ」
まあ、そうだけど……。
もしかして、二層全ての地面を爆破したのだろうか……。
その後、一定間隔でネーナが地面を叩いて行く。
すると、草の無い地面に辿り着いた。一度通った後だ。
「……。ビットこれで分かったと思うのだけど、直進しているようでいないのが、この層の罠なのだわ。罠に嵌ると、飢えて死ぬまで出られないこともあるのよ」
単純だが、怖い層だな。必ず、入り口に戻れるわけではないのか。
戦闘であれば、僕とネーナが遅れを取ることはないだろう。だけど、歪んだ空間に閉じ込められた場合は、抜け出せない可能性もあるか。
攻略方法を知っているネーナと一緒で良かった。僕一人では、三層に行くどころか、長期間帰れない可能性もあっただろう。
それでも、二層は広いため、まだまだ、時間がかかりそうである。
どうしようか? コートを着て上空から俯瞰するか? でも、罠がありそうだな。
そんなことを考えている時であった。
──ドクン
僕の、【闘気】が暴れ出した。
「ぐ!?」
僕は、【闘気】を無理やり押さえ付ける。
「ビット!? どうしたのかしら?」
ネーナが、僕の異変に気が付いたようだ。
「ごめん、ネーナ。時間切れみたいだ……」
「時間切れ?」
「ダンジョン内で過ごしていたから、時間的な感覚が麻痺していた。朝起きてから十六時間経ってしまったみたいだ。とりあえず、八時間ほど休憩させて」
「……イルゼに話した、ビットのスキルのデメリットですのね。分かりました。ここで、休憩としましょうか。とりあえず、魔物はいないので安心して眠ると良いのだわ」
そのまま、草の上に横になった。僕は、ここで意識を手放した。
ダンジョンに入ってから、本当に何も出来ていない……。
そして、僕は探索者には、向いてないと思えた。




