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勇者の称号を剥奪された体力バカ~「超回復:体力」を魔力とステータスに変換して無双します~  作者: 信仙夜祭


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第40話 勇者ロベルト4

◆ロベルト視点



 今俺は、魔物の足の爪の中にいる。俺を踏んだ魔物は、俺の肉体の一部を爪の中に取り込んでしまったみたいだ。魔物の肉体を吸収することにより、俺の肉体は再生を始めた。

 この魔物は、脚に怪我を負っている。そこから血が出ているのだが、俺の体はその血液を取り込むことでカロリーに変換しているのか……。


 目が覚める前の最後の記憶を思い出す。俺は、地面で潰れていた記憶がある。だが、その時の肉体は魔物の足の爪の中には入っていなかったはずだ。

 多分だが、地面で潰れた肉体は、死滅したと思われる。それは良い。

 だが、記憶が繋がっているのが、不可解だ。

 少し思案したが、保留とすることにした。

 今は、動ける体が必要だ。


 魔物の皮膚と血管を破って、魔物の体内に侵入する。そして、魔物の血液を取り込んで肉体を再生し始めた。


「こんな裏技があったとはな……」


 俺の〈超回復:負傷〉は、カロリーさえあれば、不死と言って良い。そして魔物の血液は、カロリーのスープだ。

 原型を留めないほどの負傷を負っていたが、徐々にではあるが元の体に戻って来ている。

 魔物の血流に乗り、少しずつ体を再構成していた時であった。


 魔物の心臓に辿り着いた。

 ここでは、一度超高圧に潰されて、再度体をめぐる血管に押し出される。

 せっかく治った体だが、また、潰されてしまった。

 これは考える必要があるな。血液に流されるままでは、いつまで経っても体を元に戻すことは出来ない。

 心臓から押し出される時であった。


 俺の体が何かに引っかかった。最悪だ。このままでは、心臓による高圧で加圧され続けることになる。

 生えたての腕を使用して、なんとかその突起物から体を引き離そうとした時だった。

 突起物に触れた手から、何かが俺の体の中に入って来た。

 カロリーではない。だが、瞬時に体が元に戻った。生命エネルギーと言えば、一言で簡単に纏められる。だが、俺はこの力が知りたくなった。

 俺は魔物の心臓部から押し出されると、弁にしがみつき、血液の流れに逆らった。そして、血管を掘り出した。本当であれば、剣で切り裂きたいが、今は装備していない。裸なのだ。


 時間はかかったが、無事魔物の血管から抜け出せた。血管の中は暗闇だったのだが……、魔物の体内は、光があった。

 この光は、ダンジョンにある苔とは違っていた。多分、魔物だ。俺は、寄生魔物と呼ぶことにした。形はスライムに近いと思われる。それと知性は感じなかった。


 この寄生魔物は、血管の損傷個所に集まって来て、出血を止め始めた。そして、俺に攻撃をしかけて来た。

 今俺は素手だが、この程度の魔物であれば、簡単に屠れる。

 俺は襲撃が一段落すると、臓器の隙間を通り、心臓部を目指すことにした。





 この魔物の心臓には、赤い結晶が出来ていた。かなり大きい。先ほど心臓内で引っかかったのは、この結晶の先端に触れたためだったのだろう。俺は、再度その結晶に触れてみた。


「何なのだこれは……。俺のスキルを瞬時に満たすとか。生命エネルギーの塊?」


 この結晶があれば、俺は不老不死になれるのではないかと思えるほど便利な物を見つけてしまった。

 この後のことを考える。


「剣が欲しい……」


 そう思った時だった。

 赤い結晶から、剣が出て来た。外見は俺が何時も使っていた剣だ。

 その剣を取り、一振りする。使い慣れていた剣で間違いなかった。


 俺は、装備一式を作り出した。一応、全て防水加工を施した物だ。

 そして、目の前の結晶の一部に剣を振るった。

 親指程度だが、結晶が割れたので、拾い上げて感覚を確かめる。


「……問題ないな。これで、カロリーの心配はしなくて良いし、何でも作れる」


 運命を感じた。

 この赤い結晶は、俺が手に入れるために開拓村に来たのだろう。

 そして、この後の行動も決まっていた。


 俺は、魔物の脳を目指した。

 とにかく重力に逆らい、上に進む。臓器からの推測になるが、かなり大きい魔物だと思うが、今の俺であれば問題はなかった。

 首部と思われる場所に辿り着いた。尻尾かもと思ったが、血流量が桁違いだ。間違いないだろう。

 そのまま、血管と筋肉の隙間を縫うように進んで行く。時には、骨が動き潰されることもあったが、今の俺には些細な問題であった。

 だが、先端までは辿り着けない。


「何メートルあるというのだ……」


 この魔物の巨大さに辟易しだしたころであった。喉が見えた。

 もうすぐのはずだ。


 俺は、ついに魔物の脳に辿り着いた。薄い膜を破り、頭蓋骨内部に侵入する。

 右手で脳に触れる。左手には、赤い結晶が握られている。


「神経が繋がるイメージ……」


 俺の右手が、魔物の脳と同化し始めた。赤い結晶を使えば出来るとの確信があった。

 そして、今実行している。


「……視神経が繋がった」


 嬉しさのあまり思わず、口に出してしまった。

 魔物からの視覚情報は、今まで見たことのない物であった。

 開拓村の外側の世界。そして、関所を超える位置からの視線。


 俺は、この魔物の掌握に取り掛かった。


「もう、失敗は許されない……」


 決意を口に出した。


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