第37話 後始末4
僕は世界の形を知りたいと願った。
でも、数字でその答えを聞かされて、衝撃を受けてしまった。
混乱してしまい、頭が付いて行かないが、ネーナとインコウの話は続いて行く。
理解は出来ないかもしれないが、話は聞かなければならない。
以下、インコウの話
この世界の人族は、最盛期に百億人以上となり大いに発展した。これは今から千年以上前の時代である。
だが、その後衰退が始まった。
理由は、子供が生れなくなったからだ。
誰も理由は分からなかったらしい。何故か出生率が急速に減少して行き止められなかった。
衰退が始まって百年もすると、世界は老人が大半を占めてしまい文明も失われ始めた。
そんな時だった。
ある国が、召喚魔法を確立させた。
異世界より、知的生命体を呼び寄せたのだ。
最初の種族は、ドワーフ族だった。ドワーフ族は、働き者で勤勉に労働を務めてくれた。
また、酒と肉をこよなく愛しており、食糧生産だけは豊かだったその国にすんなりと受け入れて貰えたそうだ。
また、人族とドワーフ族とのハーフも生まれるようになった。
各国は、議論を始めた。
異世界よりの召喚者達の血を受け入れて良いのかどうか……。
だが、一つの国だけが、繁栄を築き出すと、他国でも召喚魔法を研究するようになる。
異世界人の血を受け入れるか否かの議論は、棚上げとなったまま。
時間が少し流れ、別なある国が、召喚魔法に成功した。
その国が成功したのは、獣人族であった。イヌ科やネコ科のみでなく、キツネ科や象科など、色々な種族を呼び込んだ。
かなり大多数の召喚に成功したのだ。
そして獣人族達も、衰退した世界の復興に尽力してくれたらしい。
獣人達の元の世界は、水が少なく、厳しい環境で生活を強いられていたそうだ。
召喚後の世界は、資源が豊富であり天国のようだとも言っていた。
その後の研究で、獣人達の元の世界は、どうやらこの世界のパラレルワールドであることが分かった。
そして、獣人とのハーフが生れ出した。
こうなると、もう召喚魔法を止めることは出来なかった。
さらに別な国が、召喚魔法に成功した。
エルフ族と呼ばれる種族だ。これが間違いだった。
エルフ族は、人族との共存を拒絶して来たのだ。人族を劣等種と呼び、独立自治を宣言しだした。
エルフ族を召喚した国は滅んでしまった。
そして、戦争が始まる。
人族は、科学技術と呼ばれる手段で、エルフ族を追い込んで行った。
エルフ族としても予想外だったらしい。エルフ族は魔力至上主義であり、魔力こそが絶対との信仰があったのだ。
だが、人族は別な方法で魔力に対抗して来たのだ。
追い詰められたエルフ族は、世界魔法を発動した。
世界魔法とは、この世界全てに影響を与える大規模魔法である。
エルフ族が発動した魔法は、雲の生成だった。一日で全世界を分厚い雲が覆ったのだそうだ。
その日から、地上には陽の光が届かなくなった……。
次の日には、エルフ族は壊滅状態まで追いやられたそうだが、世界魔法は起動し続けた。その期間は、三年に及んだ。
世界は凍った。
凍てつく寒さの中、人類は数を減らしても、なんとか耐えたらしい。
陽の光が差し始めた頃には、人族の人口は一億人を切っていたらしいが。
世界を覆っていた氷が融け始めると、復興が開始される。
とにかく生活基盤を整えようとし始めた時であった。
ダンジョンが見つかった。
エルフ族は、凍った世界で人類が動けない間に、世界を作り変えていたようだ。
ダンジョンからは、魔物が出て来て、人族は慌てたそうだ。
だが、魔物も食料になる。人類は、魔物を狩るようになった。
人族が落ち着いた生活を取り戻せた頃に、エルフ族が現れた。
人族に選択の余地はない。休戦協定を結び、エルフ族の独立自治を認めるしかなかった。
そして、もう一つの約束を交わしたのだ。
異世界からの血を受け継いでいない者を集めて、監視するという内容だ。
当時の人類とエルフ族が何を考えていたのかは分からない。
だが、各地で旧人類の保護が始まった。
その後、絶滅してしまった土地もあるとの事だ。
だが、千年の歳月を生きている国もあるのだそうだ。
僕達の祖先は、五百年前に竜人達により、今の土地に連れて来られたらしい。




