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勇者の称号を剥奪された体力バカ~「超回復:体力」を魔力とステータスに変換して無双します~  作者: 信仙夜祭


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第32話 防衛戦5

 土煙が晴れると、インコウは瓦礫に埋もれていた。

 瓦礫から手足が出ているが、生きているのだろうか?

 とりあえず、警戒しながら近づいて行く。


 インコウを守っていた魔物達を放り投げて行く。全ての魔物が瀕死である。

 棍棒打撃による投石は、有効な攻撃方法かもしれない。

 咄嗟の機転により生み出した戦法だが、今後も条件が揃えば使用して行こう。


「さて……」


 インコウの足を引っ張り、瓦礫から出してあげた。

 インコウは、白目を剥いており、口から泡を吹いて気絶している。

 ただし、投石に撃ち抜かれての体の欠損はなかった。

 どうやら頭部に良い物を受けてしまったみたいだ。反撃もありえると警戒していたのだが……。

 いや、【闘気】により防御したのでこの程度で済んだのだろう。魔物達は、体に穴が空いている。

 インコウだけが無事な理由は、それしかないだろうな。


「竜人にも結構な使い手がいるのだろうか?」


 独り言が出た。

 これから本格的な戦争とかは避けたい。

 いや、先を見すぎだ。今起きている危機を乗り切ろう。

 僕は、インコウの足を掴みながら空を飛んだ。


 ネーナがいる結界の上空まで来た。

 魔物の包囲は完全に消えていた。やはり、インコウが操っていたのだろう。

 上空より、自分の作った結界内に侵入する。

 そういえば、空飛ぶ魔物はいなかったのだろうか?

 インコウの騎乗していた鳥以外は見かけなかったので気にしていなかったのだが。


「飛べる魔物は移動速度が速い。先に王城に向かったのかもしれないな……」


 降下しながら、今後のことを考えていた。


「「「ビット!」」」


 ネーナ、リセイ関長、イルゼの声がハモる。

 とりあえず、インコウを三人の前に突き出した。


「この人は、魔物使い(ビーストテイマー)でした。第六都市の魔物は、撤退を開始しています。ただし、一人ではないことを示唆していました」


「ビット。これは人なのか? 鱗が見えるが……」


「竜人と名乗っていました。それと僕達を旧人類と呼んでいます。意味は分からないので、尋問してください。僕はダンジョンに向かいます」


「ダンジョンに何があるのかしら?」


「魔物の発生源は、ダンジョンです。上空から見て確認しました。それとこの竜人も、そこにもう一人いることを示唆しました。とりあえず潰して来ます」


 ネーナが前に出て来た。

 平手打ちだろうか……。何人も吹き飛ばして瀕死に追いやって来た、ネーナのビンタ。

 でも、今日は受けるしかない。

 それでもちょっと怖いので、【闘気】を開放して準備をしておく。


「え!?」


 ネーナが抱き着いて来た。

 僕の胸に顔を埋めているので表情は見て取れない。

 僕は、国王様と約束をしていた。ネーナに触れるのは、第七の関所が完成してからだと。

 だけど、もうそんな誓いなどどうでも良かった。感情を抑えきれなかったのだ。

 僕は一瞬躊躇ったが、ネーナを抱きしめた。

 綺麗な形の頭。ずっと触りたかった髪。華奢な肩。

 涙が出てしまった。僕は、涙を流しながらネーナを抱きしめていた。


 ──ミシ


 ネーナの抱擁に力が入って来た。多分、怒っているのだろう。死んだと思わせたのだ。そして、開拓村では他人のふりをした。

 過去の自分の行為を懺悔したい。

 ネーナは〈怪力〉持ちだ。でも、今の僕であれば受け止められる……。


 ──ミシミシ


「ゲホ……、ネーナ?」


 咳が出てしまった。結構痛い。でも、耐えなければ。

 ネーナは、僕の胸に顔を埋めてこちらを見て来ない。

 あれ? 何かがおかしい。


 ──ミシミシミシ


「ネーナ! ネーナ! 締まってる! 痛い! 痛いって!!」


 ネーナは顔を向けてくれない。まずい、これ結構怒っている。

 完全にホールドされており、僕は逃げ出せない。

 ネーナの腕を掴むけど、今の僕のステータスでもネーナの〈怪力〉を解けなかったのだ。


「……ぐ!」



 ステータスへん……



 ──ボキン


 何かが切れたか、折れた音がした。僕は、そこで気を失った。





◆ネーナ視点



「ふう~。ビット捕獲成功ですわ……」


 満面の笑みでビットを縛り上げていると、イルゼから質問された。


「あの……、ネーナ様。今、ビットをそのような状態にしてよろしかったのですか?」


「ま~た何処かに行きそうだったので、ここで捕獲することにしたのですわ。まったく、婚約者のことも少しは考えて欲しいものですわね」


 リセイ関長とイルゼは、目が点になっている。

 でも、そんなことは気にしていられない。今回の魔物の氾濫(スタンピード)はビットが原因であるのであれば、各地に飛ばすのは得策ではない。

 ビットは監視されていると思われる。それは、ビットも感じていたのだろう。言動からの推測になるが。

 ならば、ここでビットを足止めすれば……。


 ──ピク


 私の警戒網に何かが引っかかった。結界内だというのに。

 建物の影の部分から誰かが出て来た。

 肌に鱗があるので、ビットの言った竜人なのだろう。足元に倒れている人と同じだったし。

 リセイ関長が構える。イルゼは、後方に下がった。


「見かけない人ですわね。ビットに何か御用かしら?」


「う~む。どうゆう状況なのだ? まあ良い。その青年を渡してくれれば、我々は引き上げよう。それと同族も返して貰おうか」


 細く微笑む。計算通りだ。

 腰のモーニングスターを抜いて、目の前にいる竜人に向ける。


「この第六都市の領主……、いえ、この国の王女としてお相手いたしますわ。私に勝てましたらビットをお好きにどうぞ」


 目の前の竜人は、ビットと同じ光を開放し始めた。


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