第30話 防衛戦3
「君が、シスイ関を襲った人物かな?」
声の方向を睨む。
今僕は結構怒っている。だけど、答えなければ何も進まない。
「襲ったつもりはないのですけどね。シスイ関で戦闘を行ったのは僕で合っていますよ」
大きな鳥に騎乗した竜人は、笑い出した。
「ははは。そうか、君か……。随分と速く戻って来れたものだ。関心するよ」
「途中で妨害にも会いましたけどね。急いで帰って来ました。それと、僕からも質問させてください。
魔物の氾濫は何時まで続けるつもりですか? 僕を帰らせるために行ったのであれば、もう無用のはずです」
竜人の笑顔は崩れない。
「う~む。何と答えれば良いか思案してしまう。実際のところ、数年後にはこの規模で魔物の氾濫を起こす予定だったと言えば伝わるかな?」
手に持っていた棍棒に力が入る。
怒りが抑えきれない。
「こんなことをして何になると言うのですか? 戦えない人だって大勢いるのですよ!」
「もちろん理由はある。しかし、教えられないのだ。カンエイにも同じことを言われただろう?」
棍棒の先端を向けて、【闘気】を全開にする。
ステータス変更:デクステリティ特化
「捕縛させて貰います。その後、色々と話して貰います」
殺気全開の宣戦布告を行った。
自分でも意外である。自分の中にこんなドス黒い感情があったなんて……。
「私はインコウと申す」
「僕はビットです」
互いに名乗り合う。僕は兵士や騎士ではないが、礼儀くらいは知っている。
大きな鳥が羽ばたいて、大空に舞った。
「押して参る!」
宣戦布告を受けた。多分だが、この人が魔物の氾濫の黒幕だと思う。
この人さえ止めれば、魔物達は統率を失うだろう。
上空から魔法の雨が降って来た。
倒壊した建物の隙間を縫って移動しながら魔法を回避して行く。
途中で頭くらいの大きさの石を拾う。
魔法の雨の隙間を狙い、脚を止める。そして、全力での投石だ。
今は、DEX特化である。コントロールには自信があったのだが、高い高度を取られているため、躱されて羽を掠るだけとなってしまった。
まずいな。こちらからの攻撃手段が限られている。
だが、考えている暇はない。再度、移動を始めて魔法の雨を躱す。
しばらくの間は、魔法の雨と投石による狙撃戦が続いたが、魔法による攻撃が止んだ。
インコウと名乗った人物を見ると、【闘気】を開放して魔力の回復を行っているみたいだ。
いや、あれも厳密には【闘気】ではないな。カンエイと同じだ。
この辺も聞きたいところである。
「魔力量はこの程度なのか。これならばイルゼの方が、魔力量が多いよな」
独り言が出た。
竜人は僕達を『旧人類』と言ったが、完全な上位互換という訳ではなさそうだ。
それと、回復を待ってやる理由はない。
倒壊した建物で姿を隠して、この後に僕が行う行動を見えないようにした。
大きな鳥は、円を描いて飛んでいる。魔法による防御壁がないのであれば、格好の的である。
僕は棍棒を野球のバット代わりにして、倒壊した建物の石材部分を打った。石材の破片が細かく砕かれて上空を舞う。
石材が散弾となり大きな鳥を襲った。そして、羽が散り始めた。
大きな鳥は、出血が見られる。そして、徐々に高度を下げて来た。嬌声も聞こえる。
インコウは大慌てだ。大きな鳥を制御しようとしているが、大きな鳥は恐慌状態で制御不能。
僕はさらに追撃とばかりに、再度石材を打つ。
二度の石材による散弾で、大きな鳥は墜落した。
「む!?」
魔物が襲って来た。背後から牙を突き立てて来たのだ。慌てて躱す。
この辺にはいなかったはずだが、集めたのか?
一匹だが、先ほど倒した肉食獣と同レベルだ。隠れていたのかもしれないな。
今は急ぎたい。インコウと名乗った人物が隠れれば、探すのに時間がかかってしまう。
僕は棍棒を振るった。
だが、速すぎて当たらない!? 躱されてしまった。
何だこの魔物は?
ラプトル? 記憶を辿る。アルゼンチノザウルスと同じだ。第三の関所を襲った時に現れた魔物の記録からの推測になるが、知識として持ってはいる。
この魔物が集団で現れて被害甚大だったと記録があったはずだ。
だけど、今は一匹である。
今の僕であれば、脅威にはならないが、互いに攻撃が当たらないので時間が掛かっている。
仕方がない、多少の怪我は覚悟しよう。
僕は足を止めた。
ラプトルは、大きな口を開けて、一直線に突っ込んで来た。
棍棒の先端を向ける。
そして突きの連打!
鼻、牙、舌等の顔を重点的に撃ち抜いて行く。腕にかなりの衝撃が来ているがリスクは覚悟の上だ。
とにかく撃つ! 撃つ! 撃つ!
ラプトルが、倒れ込んだ。だけど、僕の腕も一時的に痺れて麻痺状態だ。
ここで、ラプトルが回転した。
尻尾が僕を襲う。まずい回避出来ない。
吹き飛ばされるが、受け身を取って対応した。
「はあ、はあ!」
息が切れる。すぐさま態勢を立て直すと、目の前にラプトルがいた。巨体を利用した体当たりだ。
体が自然に動いた。最小限の動きで体当たりを躱し、ラプトルの脚に一撃を入れて骨を折る。
DEX特化の利点だな。今の僕は、達人クラスの体術を備えていることになる。
ラプトルはまだ生きているが、脚が折れているのでもう動けないだろう。
僕は、急いで墜落現場に向かうことにした。




