第29話 防衛戦2
僕は上空から第六都市を見渡した。
リセイ関長から教えて貰った、残り二ヵ所の結界の場所を見る。
「……とりあえず、結界の場所に行くか」
空を飛べるコートは、速度は出ないので、走った方が速いのだが、今は上空から都市を確認したい。
そのまま、都市を確認しつつ、残り二ヵ所の結界の場所に向かった。
上空より確認して分かったのだが、魔物はほぼいなくなっていた。
そして、おびただしい数の衛兵の亡骸……。
『ギリ』っと奥歯を噛み締めた。
僕が竜人に会いに行かなければ、こんなことは起きなかったかもしれない。
だけど、人類が領土を拡大し続けて行けば、いずれは起きたことだ。
いや、魔物の反乱は、数十年単位で起き続けている。もしかすると、竜人達が起こして来たのかもしれない。
そんなことを考えていると、一つ目の結界に辿り着いた。
一つ目の結界は、衛兵が防衛を行っていた。
「良かった。まだ、結界は壊されていなかったか……」
独り言が出た。
周囲を見渡すが、生きた魔物はいなくなっていた。
ここで、疑問が出る。魔物の配置に明らかな偏りがあったのだ。
ネーナがいた場所には、第六都市を襲った魔物の大半が押し寄せていたことになる。
そして、眼下の結界を襲う魔物は少なかった?
思案していても仕方がなかったので、最後の結界の場所に向かった。
ふと、遠くが目に入った。
魔物の反乱の先頭だ。
魔者達は、山を迂回することもなく、そのまま直進していた。
「第五の関所と第四の関所は、山を迂回するように建てられている。次に危ないのは、第三の関所だな……」
ここで考える。
魔物が何も考えずに山を登り、ただ直進するのであれば、都市部への被害はまだ出ていないはずだ。
第六都市の魔物の反乱を早急に制圧出来れば、第三の関所が襲われる前に魔物の反乱に追いつける可能性が出て来た。
いや、その前にやらなければならないことがある。
後ろを振り返った。
第六都市へと向かって来る魔物達が列を作っていた。
その先を見る。
「あそこはたしか、ダンジョンがあった場所だよな……」
方法は分からないが、どうやらダンジョンで魔物を生み出し、魔物の氾濫を起こしているようだ。
この国には、四ヵ所のダンジョンが発見されている。
一つ目は、王城近く。
二つ目は、第三の関所近く。
残りは、第六の関所近くと、開拓村近くだ。
ダンジョンは、今だ未知の部分が多い。竜人達は、何かしらの技術を確立させているのかもしれないな。
上空より観察しながら最後の結界の場所に辿り着いた。今は、高い建物の屋根に着地している。
三ヵ所目の結界もまだ健在だった。消えかかってはいるものの、衛兵達が多くいる。そして、魔物の姿は見えなかった。
「ダンジョンに向かうか……」
発生源さえ止めてしまえば、第六都市は安全が確保されるはずである。
それが僕の結論であった。
ダンジョンに向けて飛び立とうとした時であった。
陽の光が遮られ、影が僕を覆った。
慌てて上空を見ると、大きな鳥が僕に向けて爪を立てようと襲って来ていたのだ。
慌ててその場を飛び去る。鳥の爪は、建物の屋根を破壊して瓦礫をまき散らした。
僕は瓦礫に襲われて吹き飛ばされる。
地面に叩きつけられて、少し転がったが、何とか受け身を取ったので、すぐさま体勢を立て直した。
僕を襲った鳥を探すと、大空を舞っている。それも優雅に。
まずいな、空中戦は明らかに不利である。そして、僕は中長距離の武器がない。
だが、意外なことが起きた。
大きな鳥が、地面に降りて来たのだ。
そして、鳥の背中に跨っている人がいた。鞍がついているようだ。
鳥の背中に跨っている人と視線が合う……。
鱗が目に付いた。まあ、間違いなく竜人だろう。
でも、シスイ関だったろうか。カンエイと名乗った人とは装備が異なるな。
シスイ関の竜人達は、重装備だったが、目の前の鳥に騎乗している人物は、鎧は着けていない。軽装なのだ。
まあ、刃物は装備しているが。
「君が、シスイ関を襲った人物かな?」
僕が観察していると、不意に質問を受けた。




