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勇者の称号を剥奪された体力バカ~「超回復:体力」を魔力とステータスに変換して無双します~  作者: 信仙夜祭


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第27話 ネーナとの再会2

 僕は、巨大な魔物の脚に棍棒を打ち据えた。

 鱗にわずかに罅が入ったが、倒すことは出来ない。



 ステータス変更:ストレングス特化



 次は、フルパワーで突きをお見舞いする。大轟音と共に、巨大な魔物の脚の一部が弾け飛んだ。


「グオォォォー」


 大気が震え出した。魔物の咆哮が、耳をつんざく。

 だが、巨大な魔物は動きを止めた。脚をもう一本攻撃して、完全に停止させるべきだろうか?

 いや、これで当分は動けないはずである。

 それよりも、救える命を救おう。

 僕は、第六都市に入った。

 

 第六都市では巨大な肉食系の魔物が、三匹暴れ回っている。それと無数の雑魚と思われる魔物もいた。多分、巨大な魔物に付いて来たのだろうな。

 衛兵達はなす術なく、屍と化していた。いや、食べられた者もいるだろう。住民はいなかった。衛兵が時間を稼いでいる間に逃げたのかもしれない。


 僕は【闘気】を全開にする。

 まず巨大な肉食系の魔物一匹目。え~と、ティラノザウルス? だったかな? 王城で見せられた魔物一覧にそんな名前が書かれていたと思う。

 僕は全力で後ろ足の膝を殴った。魔物は、足が吹き飛び崩れ落ちる。

 そのまま飛び上がり、棍棒を脳天に突き刺した。

 棍棒は、肉食獣の頭蓋骨を突き抜けて脳を貫いた。

 まだ生きているかもしれないが、足を潰したので動けないだろう。二匹目に向かう。


 二匹目の魔物は、炎を吐いて街を焼いていた。こいつは見たことがないが、牛に近い。

 風魔法で、空気の流れを変えて炎の向きを変える。異変に気がついた魔物は僕の方を見た。

 だが、僕はもうそこにはいない。

 僕は瞬時に、魔物の腹の下に潜り込んで、魔法を発動させる。

 僕の魔法は、触れていなくても発動させられる。水魔法を構築して、起点を魔物の体内に設定した。

 そして、魔物の体内の水分を回転させる。水流操作だ。

 魔物は、全身から体液を吹き出し倒れ込んだ。まだ止めは刺せていないだろうが、こいつも動けないだろうから次に行く。


 三匹目。これでとりあえず最後だ。残りは雑魚のみ。こいつさえ倒せれば、雑魚共は撤退するはずである。

 残りは、衛兵でも相手にできるレベルのはずだ。

 三匹目の魔物を視認して、死角から近づいた。

 だが、気づかれた。魔物にもスキルが有るのだろうか? もしくは、360度を見渡せる視界があるのだろうか?

 検証している時間はない。

 僕は、正面戦闘を挑んだ。


 魔物は熊型である。爪と牙、そしてブレス攻撃。ただそれだけだが、とにかく速い。回避で精一杯であった。近づけない。

 熊が動くと周りの建物が、吹き飛んで行く。

 ステータス変更で回避に専念すれば、完封出来るだろうが時間がかかりすぎる。

 どうする? 今は怪我は避けたい。罠に嵌めるか。

 【闘気】を広範囲に放出して地形を読む。近距離のみだがスキル〈探索〉に近い使い方だ。

 丁度良い場所が見つかった。

 そこまで悟られないように誘導する。とにかく、距離を取り魔法で牽制しながらの誘導だ。

 そして、地下施設のある建物に誘導したところ、床を踏み抜いて地下一階に落ちてくれた。

 この魔物は、後足が小さい。そして飛ぶためには、後ろ足で力を溜める必要があるが、この穴の中では、力を溜める体勢が取れないだろう。

 この時点でこの魔物の移動は制限されている。引き上げられなければ、このまま餓死するだろうな。

 だが、見逃す気はない。

 【闘気】を生成し、篭手に集める。魔物の顔の前に魔法の起点を作る。

 熊の魔物は、爪を回転させて抵抗しているが僕に届くはずもない。



 土魔法:小隕石(マイクロメテオ)



 熊の魔物の真上に10トン程度の大岩を生成した。『グシャ』という音の後に大轟音が轟き土煙が辺りを覆った。

 熊の魔物は、頭部が胴体にめり込み、おとなしくなったようだ。延髄がつぶれたのだろう。


 さて、雑魚狩りだ。まあ、雑魚と言っても開拓村に現れた魔物に比べれば、はるかに強い。

 襲って来る雑魚を、棍棒で吹き飛ばしながら、都市の中心部に向かった。


 しばらく進むと異変に気が付いた。

 三ヵ所の建物だけ、結界が張られていたのだ。戦えない住人は、まず間違いなくあそこにいるだろう。

 だけど、僕は結界を突破して入るとか器用なことは出来そうにない。最悪、結界を破壊してしまうだろう。

 結界の外で屯している魔物を屠って行く。やはり雑魚だ、棍棒と魔法で難なく撃退出来た。


 ここで、余計な思考が過る。

 あの竜人は、僕を『旧人類』と言った。そして、『教えられない』とも……。

 人類の絶滅は望んでいないと思われる。

 そうなると、今回の襲撃の目的が分からない。本当の目的地は、第六都市よりも先にあるのだろうか?


 何匹狩っても魔物は、撤退しなかった。巨大な草食系の魔物と、肉食系の魔物三匹を排除すれば良いと考えた僕は甘かったかもしれない。

 そして、建物に張られている結界に穴が開いた……。


「ちい!」


 舌打ちして、その結界の穴の前で防衛線を行うことになった。脚を止めての防衛戦……。これでは、複数に襲われるだろう。

 雑魚魔物を結界の前で瞬殺して行く。だが、数が多すぎる。

 第六都市にいた衛兵は全滅したのかもしれないな。見える範囲ではあるが、他に戦闘が行われている場所は無かった。


 だめだ、前左右、そして上空から襲って来られては、対応しきれない。

 一歩下がって、結界内に足を踏み入れた。



「ビット! 遅いのだわ!!」


「申し訳ありません、ネーナ王女様。ちょっと遠出していたので遅れました」



 ……………………………………。え?


 驚いて振り返り、ネーナを見た。

 ネーナは満面の笑みである。いや、ドヤ顔だ……。ついでに、車椅子に座っているイルゼは驚愕の表情だ。でも何でネーナとイルゼがここにいるのだろうか?

 いや、イルゼは後回しだ。


「ネーナ……、いつから気が付いていたのですか?」


「初めに目が合って、短剣を譲って貰った時からかしら? 婚約者を舐めないで欲しいものね」


 初めから気が付いていたのか。そして、僕の事情を考慮して黙っていてくれた……。

 見つめ合っていると、イルゼから話しかけられた。


「本当にビットなの? たしかストラとか名乗っていたはずだけど」


「……ダンジョンで色々あって、こんな姿になって戻って来たんだよ」


 少し怒気を交えて、回答する。イルゼは萎縮し出した。


「チョープ!」


 ネーナのツッコミが来た。


「状況を考えるのかしら、ビット。王女として命令します。今、一番良いと思われる行動を取り、魔物を撃退するのですわ!」


 ……まあ、そうだな。

 今は、イルゼに怒りをぶつける時ではない。


 この街を襲っている、魔物を何とかすべきだ。

 僕は、前を向き、結界を破壊しようとしている魔物を睨みつけた。


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