第21話 戦闘1
僕は、一騎打ちを所望して来た人と数十合打ち合った。
まず目に付いたのが剣だ。この人の剣は、魔剣であった。盾も破壊出来ないので、魔力を帯びているのであろう。
何と言うのかな、魔防具?
それと、『闘気に近いもの』である。
僕の【闘気】とは、明らかに異なるのだが、ステータスの大幅な向上が見て取れる。効果は同じなのだろう。僕から言わせて貰えれば、使い方がまだまだだけど。
それでもこの人であれば、先ほどの森林も突破出来るのであろうな。
──カンカンカン……
余計な思考が過ったが、一騎打ちは続いている。
この人、僕の最高速度に付いて来ている……。普通であれば、目でも追えない速度で動いているのだが。
僕はフェイントを入れて、背後に回ってみた。だが、相手は見ずに背後に剣を振って応戦して来た。
これ以上踏み込むと、相打ち覚悟の攻撃が来るかもしれないな。剣先を躱して、一度距離を取る。
相手は、回転して僕に正対した。近接戦闘の技術はかなり高いかもしれない。
正直、あまり時間をかけたくないな。他の人達が取り囲んで来たし。
僕は鋭く踏み込んで、横薙ぎの一閃を放つ。
──ガキン
剣と棍棒が打ち合うと、火花が散る。
そして、その人を剣ごと弾き飛ばした。関所から落とそうと思ったのだけど、踏みとどまった。単純にすごいと思う。
まあ、相手に賞賛を送ってもしょうがないのだが。
どうしようか? ストレングス特化では、当たらないと思うし、もし当たったら爆破してしまいそうだ。最悪、殺害してしまうであろう。これ以上の関係の悪化は避けたい。
「ふぅ~」
大きく息を吐き、再度棍棒を向ける。一応、矢が飛んで来ることも警戒している。
僕に油断はない筈だ。余計な思考を続けているけど。
こうなると、一気に【闘気】を開放して火力というか手数で押し潰すか……。
そんなことを考えた時であった。
「私の負けだ……」
あれ? 目の前の人は、疲労困憊とばかりに膝をついた。剣を杖にしてもたれかかっている。
そうか、体を限界まで酷使した短期決戦だったのだな。全ステータスを限界まで上げていたのだろう。体中の筋肉が切れていそうだ。
その人は、『闘気に近いもの』も生成出来なくなった様だ。息も乱れており、汗も滝のように流れている。体力も使い切ったみたいだな。この辺が、スキル〈超回復:体力〉を持つ僕のアドバンテージになる部分だ。
さて、降参してくれたし質問してみようか。
「僕の質問に答えてくれるのであれば、これ以上は暴れません。関所の修復も手伝いますよ」
「……そなたは、旧人類なのだ。我々は余計な知識を与えるわけにはいかんのだよ」
この人達は何かを知っている。多分、この世界全体のことを知っているのだろう。
教えられないと言うが、僕はそれが知りたい。
周りを見ると、もう刃物を向けて来る人はいなかった。
実力差が理解出来たのであろう。
怪我人の手当てを行っている人も見受けられる。
交渉の余地は無かったとはいえ、やりすぎたかもしれない。
これで死者が出れば、僕からの要求は何も受け入れて貰えないだろう。
ポーションを渡しても飲んで貰えそうもないし、壊した城壁だけでも直してからここを発とうか。
僕は破壊した城壁の所まで移動した。
土魔法:土壁生成
大地を盛り上げて、破壊した城壁を塞いだ。ついでに火魔法で焼き固めて、以前より硬い城壁にする。所々、ガラス化しているけど、まあ強度が足りていれば良いだろう。
でも、見た目が悪いかな? 外壁塗装とかは、ここの兵士に任せるか。
周りを見ると、驚いた顔が並んでいた。
まあ、そうなるよね……。
城壁を壊して、即座に直す。僕の行動は、意味不明だよな。
◇
「それでは、僕はあの山の頂上に向かわせて貰います」
「そなたが進むのであれば、我々竜人達は君を見た時点で、襲うことになる。私も王様に君のことを報告する義務がある。関所を突破されたと……」
竜人? それと、先ほど僕のことを旧人類と言った。
知識欲を掻き立てられる。
いや、僅かな情報を僕に与えることによって、誘導しようとしてるのかもしれないな。
「それで良いですよ。無駄な戦闘を繰り返すことになりますが、質問は王様にでもしてみます。山頂に王様がいるのですよね?」
「……そうか。では一つだけ質問させてくれ」
「なんでしょう?」
「君の生命エネルギーは何処から来ているのだ? 明らかに人の枠を超えている」
この人は、やはり出来るな。
僕のスキルの根幹を言い当てた。




