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勇者の称号を剥奪された体力バカ~「超回復:体力」を魔力とステータスに変換して無双します~  作者: 信仙夜祭


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第18話 魔境1

 面倒なことになった。勇者でも苦戦した大蛇を二匹も倒したので、僕を衛兵にするという話になって来た。

 それに、ロベルトも僕に対して敵対心を持ち始めた。

 このままだと、ロベルトは、また僕を殺しに来かねない。それよりは、距離を置いたほうが良いな。


 イルゼは、かなり重症らしい。内地で静養のために馬車で開拓村を離れて行った。

 それと、重傷者多数で開拓村には戻れないのだが、ロベルトは撤退はありえないと言い張っている。

 どう考えても、ここは一度撤退した方が良いに決まっている。


 撤退しないために僕を衛兵にすると言い出したのだから、敵対心を向けるのは止めて欲しいものだ。


 少し考えて、置き手紙を残して開拓村を出ることにした。少し調査してから戻って来るとだけ書いておいた。これで、ロベルトの主張は退けられるだろう。

 戻って来たら怒られそうだが、魔物の素材との引き換えにすれば良いだろう。

 向かうのは、『魔境』と呼ばれる未踏破地域だ。

 今の僕であれば、魔物の駆除は問題ない。それよりもこの世界がどれだけの広さを持っているのかを知りたかった。

 魔境のずっと先にある、高い山。何時も見ていた。


 良し! 目標は、あの高い山の山頂に行き、地形を確認することにしよう。

 開拓村の鍛冶場で貰った、短剣と棍棒を握り締めて、開拓村を後にした。



 僕は誰にも見られずに魔境に入った。

 魔境は沼地から始まり、森林へと変貌して行く。

 森林特有の魔物が襲って来た。今まで見たこともない魔物だ。

 まずはカエルか。大きさは50センチメートルといったところかな? かなり大きい。


 毒液を吐いて来る。まあ、今の僕に当たるわけもない。余裕を持って躱して、短剣で真っ二つにする。

 ここで失敗したことに気がついた。短剣が少し溶けていたのだ。

 このカエルは、毒液ではなく酸を吐いたのだろう。


 〈空間収納〉から砥石を出して、短剣の刃を研ぐ。〈空間収納〉には、戻って来てから生活に必要なものを色々と仕舞い込んでいた。

 開拓村では見せることが出来ないので、自分のテントでこっそりと使っていただけだったが、とても便利な魔法である。

 石の運搬の仕事など、空間魔法を使えば百倍は運べただろう。

 でも、ヒルデさんから釘を刺されているので、空間魔法を見せることはしなかった。


 しかしこうなると、短剣での戦闘は避けた方が良いな。短剣を仕舞い、魔法が使える篭手を装備する。

 棍棒での戦闘と【魔法】での戦闘に切り替えた。この棍棒は、魔力を帯びているのでそうそう壊れないと思う。だが、壊れても別段問題はない。僕は無手でもこの森の魔物なら駆除出来る。

 そうすると、今度は、蜘蛛が襲って来た。1メートルくらいある蜘蛛って気持ち悪いな……。


 【闘気】を纏い、【魔法】で迎撃する。

 糸で拘束しようとして来たが、【闘気】で糸を防ぎ、僕には当たらない。糸を見ると粘着性が見て取れた。これで動けなくするのであろう。糸で拘束して食べるのか……、本当に気持ち悪い。

 僕は火魔法で糸を焼き切った。蜘蛛を見ると後ずさりして距離を取り始めている。

 いや、違かった。一度距離を取ると加速を付けて僕に、噛みつこうとして来た。

 二本の牙を棍棒で防ぎ、受け止めた後に打ち返した。蜘蛛は胴体が樹にぶつかり、首がもげて取れた。

 意外とあっさりと倒せてしまった。やはり、僕はイルゼより魔法の威力が高いと思う。そして、この世界の人族の誰よりも身体能力(フィジカル)が高いと思う。


 生命力の根幹……【闘気】は、覚えただけで人類の脅威となっていた魔物を簡単に屠れた。

 千年後の世界ではこれが普通であり、人類が後千年続くのであれば、魔物の驚異に怯えることのない世界になるのだろうな。

 もしかすると、ヒルデさんがいた世界では、魔物の駆除が完了していたのかもしれない。


 色々と雑念が出たが、無事森から抜け出ることが出来た。

 後ろを振り向くと、魔物の死骸で道が出来ていた。





 日も暮れ始めたので、ここで今晩は野宿だ。

 直方体の〈空間固定〉を作り、その中で寝ることにした。一応、隙間は作ってあり窒息しないようにはしている。

 ヒルデさんの所で、失敗は経験済みだ。


 夜中だが目が覚めた。〈空間固定〉に突進する魔物がいてその音で起きてしまったのだ。まあ、〈空間固定〉は物理的に破壊不可能である。無視しても良かったが、うるさいので駆除することにした。

 魔物は、サイかな? 角を持つ動物型であった。何度も突進を繰り返しており、鼻の上にある角は罅が入っていた。

 風魔法を構築して、離れた場所に発現させる。魔法の起点はサイの真上だ。

 僕は真空の刃を生成して振り下ろす。サイは、胴体を真っ二つにしてその場に崩れた。


 ヒルデさんから教わった魔法は、この世界の概念と異なっていた。イルゼ達魔導師は、掌や杖から魔法を発現して撃っていたが、ヒルデさんは手をかざすこともなく、離れた場所に魔法を発現していたのだ。この差は大きい。

 その気になれば、四大属性魔法の同時撃ちも可能になる。

 千年後の世界では当たり前なのか、ヒルデさんが特別なのかは分からないけど、僕も出来るように訓練をした。

 今の僕の戦闘スタイルは、棍棒で殴りながら、同時に魔法を撃つことにある。

 魔法を任意の場所に発生させられるのであれば、手が四・五本あるようなものだ。そして、全ての技術においてロベルト達よりも上位にいる。

 ロベルトとイルゼが十人いても、僕は渡りあえるだろう。


 そんな事を考えて、再度寝ようと思ったら、今度は狼だ。いや、ハイエナかな? サイの死体を貪り出した。

 咀嚼音がとても気持ち悪くて眠れない……。

 最終的に全滅させて眠りについた。



 朝日と共に起き出す。

 目の前には草原が広がっていた。昨日は薄暗くて分からなかったが、草原はかなり広範囲に広がっている。

 昨日通って来た、沼地と森を開拓出来れば、ここまで来られる。そして、使いやすい土地が広がっている。

 この事実だけでも値千金だろう。でも、もっとこの世界のことを知りたいと思う。


 僕は目的は変更せずに、遠くに見える高い山に向かって歩き出した。


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