第15話 襲撃
「魔物だ! 魔物が出た!!」
夜中だったが、慌てて起きた。枕元に置いておいた短剣を手に取りテントから飛び出す。
【闘気】を僅かに生成して、眼に集めると、夜目が効く様になった。
魔物は、大蛇であった。多分、三匹だと思う。
その気になれば瞬殺出来るが……。さて、どうしようか。
一匹が僕に向かって来た。とりあえず、牙を短剣で弾く。大蛇は大きく仰け反った。
僕の素のステータスでも勝てる魔物か。それほど危険はないかな?
仰け反った大蛇の喉に短剣を突き刺して、真っ二つに切り裂き、止めを刺した。
この大蛇は、喉の部分に鱗がなかったので狙ってみたらあっさりと仕留められた。鱗は硬そうだが、鱗のない部分も多いので狙えばそれほど強敵にはなりえなかったな。
さて、後二匹か。
気配を消して、戦闘が行われている場所に近づいた。
少し離れた位置から、戦闘の様子を見る。
ロベルトとイルゼを中心として、十人で迎撃に当たっていた。しかし、鱗が硬いらしくあまりダメージを与えられていない。よく見ろと言いたいのだが……。
イルゼの魔法もだ。正直、魔法でも僕の方が高い威力を出せそうだ。
「ヒルデさんに鍛えて貰ったのだが、スキルの認識が違うだけで、ここまでの差が生まれるのか」
勇者二人の戦い方を見て出た感想であった。
まあ防衛は出来ているので、その場を後にして、もう一匹の方に向かうことにした。
こちらは、三人で迎撃に当たっている。大盾を持った三人だ。時間稼ぎを言い渡されたのだろうな。
気の毒である。
非戦闘員の避難もまだ完了していなかった。
この大蛇が暴れると、死人が出るかもしれない。
しょうがない、介入するか。
周りを見渡して、材木を一本拝借した。短剣を使用して、先端を斜めにカット。その材木を担ぎ上げる。
準備完了だ。
全速力で蛇の胴体部分に近づき、近距離から材木を投擲した。
蛇は、胴体を材木に貫かれて吹き飛んで行く。材木が地面に刺さると、大蛇は貫かれた材木に縫い付けられており、その場から動けなくなった。
僕は衛兵の三人に近づいた。
「怪我はありませんか? なければ、非戦闘員の誘導をお願いします。もしくは、まだ倒せていないので、牽制だけでもしてください」
三人は、唖然としながら首を縦に振るだけだった。
これでこちらは大丈夫であろう。
一応気になったので、再度ロベルトの方に戻ることにした。
◇
「まだ、倒せていないのか……」
ロベルト達は、懸命に応戦していた。ここで思う。ロベルトのスキルは、〈超回復:負傷〉のはずだ。盾役となり、敵の攻撃を一身に請け負うはずなのだが……。
何で両手で剣二本を振っているのだろうか?
イルゼもである。効かないと分かっている低レベルな攻撃魔法を連発していた。効かないのであれば、回復魔法に徹すれば良いのに。戦線離脱する人が出始めて来てロベルトの負担がさらに増えている。
そんなことを考えていると、ロベルトが吹き飛ばされた。まあ、〈超回復:負傷〉があるので少し待てば、戻って来るだろう。
大蛇が、イルゼに向かって行く。あれはまずいな。
イルゼを庇うように三人の盾役が立ち塞がった。
しかし、大蛇は尻尾の一振りで四人を吹き飛ばした。
さて、どうしようか。
本当であれば目立たないように助けに入るのであろうが、ロベルトとイルゼを助ける気にはなれなかった。
衛兵達もだ。散々、僕に『使えない』と言って来た奴等である。衛兵は、見回りと魔物の撃退が仕事なので、この場は彼等の仕事である。
「なんであんな強い魔物が出てくるんだ?」
一人の衛兵が、悲鳴とも取れる言葉を吐きながら逃げて行った。あれは厳罰物だな。
周りを見ると、非戦闘員の避難は終わっている。しかし、作業場はかなり壊されてしまった。
復旧には、2~3日かかるだろう。いや、非戦闘員の被害状況次第では、撤退もあり得るな。
少し待つと、大蛇は帰って行った。もう、荒らす意味がないと思ったのか、倒す相手がいないと判断したのか……。
もしかすると、ロベルトに負傷させられていたのかもしれないな。一応、眼に剣が刺さっていたし。
まあいいや。僕はその場を離れて非戦闘員が集まっている物資の集積所に向かった。
◇
物資の集積所では、怪我人の手当と人数確認が行われていた。
皆、迅速に動いており優秀さが伝わって来る。
話を聞くと、衛兵と勇者意外は全員の無事が確認された。まあ、僕が最後だったのだから、少し怒られてしまったのだが。
それにしても、誰も食べられていないのか。あの大蛇は本当に何しに来たのだろうか?
いや、衛兵が犠牲になっていることも考えられる。まあ、それが彼等の仕事なのだからそこは割り切ろう。
二匹目の蛇と対峙していた衛兵三人が、物資の集積所に来た。
材木で貫いた蛇は、そのまま息絶えたそうだ。
そして、僕の活躍を話し始めた。かなり、盛った話をし始めたので、所々修正しながら話を聞いた。
まあ、僕が大蛇を二匹倒したのは事実だ。
それでも、大蛇を引きちぎって投げてはいないのだが……。
勇者二人と衛兵が、物資の集積所に来た。
ロベルトはともかく、イルゼが重症であった。意識なく、全身に傷を負っているそうだ。
まあ、薙ぎ払われていたが、盾役がいたので即死は免れたのだろう。
ここで気がつく。いつも一緒に行動していたロベルトがイルゼの看病をしなかったのだ。イルゼから離れて、一心不乱に食事をとっている。大蛇との戦闘の時もそうだ。連係などしていなかった。
二人の間に、何かあったのかもしれないな。まあ、興味ないけど。
ロベルトの話しを聞くと、衛兵は数人動かせないほど深手を負っていたので置いてきたらしい。それを聞いた数人の村人が、治療しに戻って行ってしまった。特に回復魔法の使い手は、アグレッシブだ。仕方がないので、僕も護衛として付いて行くことにした。今は、自分しか護衛が出来る人材がいない。
全員が疲労困憊か、傷の手当を受けている。
衛兵達は好きではないが、犠牲は出したくなかったので行くのだ。
いや、回復魔法の使い手の護衛だ。
自分自身に言いわけをしながら、破壊された開拓村に向かった。




