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序 始まりの日
序 始まりの日
つんつんと背中をつつかれて、稔は振り向いた。
後ろの席から身を乗り出していた少年が、にこにこしながら
「な、小学校どこだった?」
と尋ねてきた。
「立南」
稔もにこっと微笑んで答える。後ろの席の少年は少し驚いたような顔をした。
「へー、隣町の?俺は緑城小から。名前は?」
「倉井 稔」
稔が答えると、少年は首を傾げた。
「倉井?どっかで聞いたことあんなぁ……倉井稔……くらい……」
「幼稚園同じだったかも。この近くののぞみ幼稚園……」
自分は小学校は隣町のに通ったけれど、幼稚園まではこの町にいたと、稔が説明する前に、少年がうれしそうに叫んだ。
「ああっ、思い出した!『たんぽぽ組のれーのーりょくしゃ』!」
「……え?」
思えばこれが、稔のろくでもない六年間の始まりであった。