遮光
今年の夏は雨が降っていくうちに暑さがだんだんなくなってきたようだ。このまま秋にすんなりなるのかな。毎晩必要だった冷房も今はもういらない。
今年も誕生日に仕事の休みをとった。理由は特にない。なんかこう、休みたいなぁって思って。ただそれだけだ。
最近どういう訳か夢をみる。いや、もともと夢をみがちな自分だったけど、夢をみない自分になってから久しい年月が過ぎた。
最近よくみる夢は、大学の単位がとれなくて留年が差し迫った悩みに直面する、そのなかでテストを受けるというもの。これがレポート提出だったり、テストの当日に寝坊したりとバリエーションが豊富だ。そしていつも「ここからどうなるの!?」ってところで目が覚める――
おかしいな。俺自身はたしかに半年学業をサボっていた事はあったけど、留年するかどうかで悩んだことは学生時代にはない。就職活動も早々に決めて卒業までは悠々自適に毎日を過ごしていたような気がする。そんな記憶しかないのだ。
いや、待て。そもそも夢にでてくるその世界っていうのは現実に経験したものだとお決まりなのか?
夢の定義はある程度科学で分析されている。その話をここですることはない。でも不思議とその理由や原因が何なのだろうかと考える自分がいたり。
さぁ、ここから本題だ。お盆に入るまえだった。俺はまた夢をみた。
祖母の家へ幼少時代、お盆帰りする事があった。我が家の恒例行事みたいなものだった。少年時代の自分はそれを毎年楽しみにしていた。
小学校に通っている自分は学校に行く度に虐めを受けていた。殴られたり蹴られたりが日常茶飯事だったな。それでも学校に行っていたけども……よくやっていたと思う。そんな自分がのめり込んでいたのがテレビゲームの世界だった。
祖母の家に住んでいる従兄は凄くゲームのプレイが上手い従兄だった。その従兄のプレイするゲームに夢中になっていたことを今でも思いだすものだ。
その夢のなかの自分はなかなか夜遅くまで従兄のプレイするゲームを鑑賞していた。あまりにも遅くなったので叔父に注意を受け、子供一同は寝た。
祖父母の家の風呂は我が家の風呂より狭めの浴槽だったが、何故か心地よくて、少年時代の俺は気に入っていた。
そのお風呂に入って寝るところまでは妙にリアルだったのだけど、ここから。
俺は深夜遅くに目が覚めた。
深夜遅くの刻だったよ。周りの家族はみんな寝ていた。俺だけが目を覚ました。
俺は最初トイレにいこうと思っていた。しかし、そんな気でもなくなった。
気がつけば俺は外にでていた。
俺の祖父母の家には庭があった。小さな池の中では鯉が泳いだり休んだりしていた。また小さな畑もあり、そこでは祖父がスイカを育てる等していた。
数分ぐらいボーっと立っていたと思う。
特にわけもなくでてみたが何もなさそうだ。
俺は背伸びをして家に戻ろうとした。その時だ。
夜空の雲が割れて眩しい光が俺を照らした――
その光は立ち尽くしている俺を照らし続け、ぐんぐんと近づいてきた。月でなければ太陽でもない。その場から逃げださなくちゃと思った俺だったが、足がすくんでしりもちをついてしまった。
眩しい光の輪はあっという間に俺を包み込んだ。
俺は手で目を覆った。次の瞬間、俺ただ一人だけ庭に残された――
とぼとぼと庭から寝室に帰った。そこにはいびきをかいて寝ている家族の姿があった。俺はどうやら現実にいるようだ。眠気が多少あった俺は変なことはせず、そのまま寝た。
翌朝、俺は特に何も喋らずに朝食のパンを「美味しい」と言って食べた。
そこで大人の俺は目を覚ました。なんていう夢。でもそういえば、従兄のプレイしたバイオハザードでUFOが主人公を連れ去る場面があったけな。
いや、注目すべきはそこじゃない。なんでそんな夢をみたのか。
でも、そんな事をあれこれ真面目に考えてもな、きっと時間の無駄にしかならない。
俺はいま小説を書くことを趣味にしている。
俺の書く小説の大半はフィクションだ。リアルなことはほとんど書かない。
でも、この話は半分作り話で半分本当の話。
だけど、あのとき手で顔を隠してなかったらさ、何かが見えたのかな?
後悔があるとしたらそんなところ。
ハッピーバースデイ・トゥ・ミー。
明日も日常と非日常を楽しめる自分であればさ、それでいいや。