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【「内弁慶」の意味を勘違いする国民が多すぎる!】


 こんばんは。「こんちはストラウス!」の時間です。司会を務めますは私、マッシュー・ストラウス、お見知りおき願います。

 さて、論じても論じ尽くせない世の中の諸問題を丁寧に扱っていくこの番組、今回第三回のテーマはこちら。


【「内弁慶」の意味を勘違いする国民が多すぎる!】


 おうぅ……、これはさすがに、一国民としても相当な危機感を感じる問題ですね……。

 では、この問題についてコメントをくださるゲストのみなさんをご紹介いたしましょう。

 ドラマ『平家蟹の日常』で悲劇のヒーロー役を演じた俳優の寅岡とらおかJDジェイ・ディー氏、

「よろしく頼みます」

 『向こうずね狙撃隊』の著者、作家の芝生しぼうムーサ氏、

「よろしく頼みます」

 今日はおふたかた、どうぞよろしくお願いいたします。

「よろしく頼みます」

「よろしく頼みます」


 さて、まずはこの問題の概要を簡単に、寅岡氏におきしたいと思います。多くの国民は、「内弁慶」をどういった意味と勘違いしてとらえているのでしょうか。

「悲劇ですよ!」

 え?

「その前にまず、本来の意味を確認しとかなきゃ、取りっかえしのつかない悲劇になりますよ!」

 ……そうでした。ではまず、本来の意味をお伝え願えますか、芝生しぼう氏。

「なんで僕じゃないのっ?!」

「どうも、芝生です。これ、本来の意味ともうしますと、『家の中では武蔵坊弁慶になったような気で威張りくさっているが外じゃ意気地なしじゃねえかこの野郎』といったようなヤカラのことを指す、ウイットとシニシズムあふれるこれ以上ないすばらしく魅力的な慣用的比喩表現なのですがね」

 そうですね、ウイットとシニシズム、この世の中にとって重要な二大要素がおのずと含まれている、そんなことばですよね。


 それでは寅岡氏、

「やっと来たあ!」

 このことばに起こってしまった悲劇をご説明願います。

「ええ、これは悲劇ですよ、まさしく悲劇。シェイクスピアの四大悲劇? そんなの比にならないですよ、ザッツ・セカイキロク・トラジェディーですっ」

 ええ、ではその悲劇の概要をお願いいたします、芝生氏。

「え、ちょっと、なんでっ?!」

「どうも、芝生です。これ、なにが悲劇かともうしますと、多くの国民が『内弁慶』の意味を『向こう脛の後ろ側、ふくらはぎのこと』と勘違いしていることなんですがね」

 おうぅ……、ザッツ・トラジェディですね。しかし、いったいなぜ、そんな勘違いが起こるようになったんでしょうか。

「これ、なぜこのような浅ましい勘違いが起こるようになったのかともうしますと、拙著『向こう脛狙撃隊』の文庫版の表紙絵を描いたイラストレータがですね、なぜか、主人公『武辺の九兵衛くへえ』の後ろ姿を描いてしまったからなんですがね」

 はあ。ともうしますと?

「つまりこれ、イラストを見た拙著のファンクラブ会員がですね、『九兵衛は向こう脛もすばらしいがふくらはぎもかっこいい』という意味で、『九兵衛は表弁慶のみならず、裏弁慶も素晴らしきかな』とのたまったのですがね。これ、この『裏弁慶』というのが『内弁慶』と混同されてですね、どうにも浅ましすぎる勘違いの悲劇が生まれたようなんですがね」

「そう! ザッツ・セカイキロクコウシン級・トラジェディーっ!」

 おうぅ……、おいたわしや……。


 それでは、えっと……、芝生氏。

「なんで僕じゃないんだあああっ!」

 この問題を解決する糸口は、なんだとお考えですか。

「芝生です。これ、この問題を解決する糸口がなにかともうしますと、ずばり言って、拙著『向こう脛狙撃隊』続刊の刊行です。これ、ここで真の内弁慶を丁寧に描写して、国民感情に訴えかけるほかはないと思いますがね」

「それならっ、『平家蟹の日常』の新シーズンも来春放送予定なのでっ。よみがえりし悲劇のヒーローが ——」

 おっと、ここでお時間となってしまいました。残念至極のトラジェディタイム、お別れです。

 ゲストのおふたかたには、貴重なコメントをいただくことができました。どうもありがとうございました。

「芝生です、ありがとうございました」

「……」

 どうしました?

「……ぐぬぬ、センキュ・トラジェディー……」


 それではみなさん、また次回お会いいたしましょう。さようならぁ。











 (……どうしました?)

 (「……いえ、なんでも……」)


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