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ダンジョン都市  作者: ノジー・マッケンジー
5/12

5 マレリーラ

練習場。

ここは探索者たちに開かれている広場で、主に技の練習や模擬戦を行うのに使用されている。

中にはずっと座って瞑想をしている人もいるけど、あれは魔法使いかな?


僕たち二人は練習所の端の方で夫々剣と盾を構える。勿論真剣ではなく練習用の物だ。

ちなみにクラスメイトだと分かって緊張が解けたのは彼女だけではない。僕も年が同じと分かったのと彼女からの希望で固い話し方を辞めた。


「さっきも話したけど、盾士はその盾で攻撃を防ぐのが仕事なんだ。そして盾士の職業は同レベルの攻撃ならほとんど効かない。だからまずは怖がらずに、攻撃を受けるのに慣れる事から始めようか。」

「は、はい!お願いします!」


やはり少し怖いのか、こちらにまで緊張が伝わってくる。


「最初はゆっくりするから大丈夫だよ。じゃあ、僕が剣を振り下ろすから盾で受け止めてね。」

「は、はいぃ!。」


…大丈夫かな?


彼女の様子を見ていると心配になってくるが、だからと言ってこのままでいる訳にもいかない。

僕はできるだけゆっくり剣を持ち上げ、マレリーラに向かって振り下ろした。


「ひやぁぁぁ!!」


カァンッ!と音をたて、剣と盾がぶつかる。


「大丈夫だよ。ちゃんと盾で受けれたじゃないか。じゃあ続けるよー。」

「え?え?えぇ…」


有無を言わせずに僕は剣を盾にぶつける作業を続ける。

昨日と今日の様子を見る限り、多分彼女は攻撃を受けるという恐怖心が強いんだと思う。だからまずは盾士なら攻撃を受けても大丈夫って事を分かってもらって、攻撃に対する恐怖心を克服してもらうのが良いと思うんだ。

という訳で僕は彼女の構える盾にガンガン剣をぶつけていく。勿論手加減してゆっくりだよ。


「うわっ!ひいぃ!きゃぁあ!」


叫び声を上げながらも何とか盾で攻撃を受けていくマレリーラ。

何度か繰り返すと少しづつ慣れてきたのか恐がる声が聞こえなくなってきた。代わりに「えいっ!やっ!」と、気合の乗った小さな声が聞こえてきた。

それに合わせて僕も少しづつ剣を振る速度を上げていく。が、こ、これは…。


「えいっ!それっ!ここですっ!」


段々僕の剣が彼女の盾に押されてきた。

負けじと剣を振るい、少しづつ軌道を変えてみるもマレリーラはそれに合わせ上手に盾を操っていく。


(う、ウソだろ!? こんな短時間でここまで…!!)


気がつけば僕も手加減なんか考えずに本気で剣を振っていた。


「くっ!」


勢いに押され一度距離を取る。

お互いに剣と盾を構え直すも、2人とも大分息が上がっているのに気が付いた。


「い、一回休憩しようか。」

「は、はい…。」


その場に座り込み息を整える。

最後の方は手加減なんて考えずに本気で剣を振っていたにもかかわらず、彼女はその全てを防いで見せた。

さっきは何でこんな子が盾士にって思ってたけど、……これは間違いなく才能…だな。

彼女を見ると僕と同じように座り込み肩で息をしていたけれども、僕の視線に気づくと再び立ち上がろうとする。


「再開…しますか?」

「いやいや、もうちょっと休憩しようよ。」


どうやら本人も思った以上に手ごたえを感じているようでやる気に満ちた表情をしている。

その後しばらく休憩し、2人とも息が整ったのを確認して再び立ち上がり打ち合いを再開した。


カァン!ガキンッ!


剣と盾がぶつかる音が練習場に響く。

先程とは違い、僕は上から振り下ろすだけではなく横薙ぎや突きも交えながら剣を振るうが、それでも彼女は上手に盾を操り僕の攻撃捌いていく。

まるで乾いたスポンジが水を吸収するかの如く、経験したことをすぐに吸収し成長し、今では完全にこちらの攻撃を正確に受けきっている。それにしても、すさまじいまでの吸収力だ。



しばらくの間剣と盾の打ち合いを続け、「ここまでできるなら次の段階に進もう。」と、休憩を挟んだ後、今度は実践さながらの練習、所謂『模擬戦』をすることにした。


僕は彼女の事を盾持ちの魔物だと思い、また彼女も僕の事を剣を使う魔物と考え、お互いに本気でぶつかる。


「えいっ!」「それっ!」「ここだ!」「まだですっ!」


攻める側と受ける側、お互いに本気の攻防を続ける。

時にはフェイントや、剣だけじゃなく足払い等も交えてを攻撃するも、一度受けた攻撃は2度目以降すぐに対応されて、こちらも中々攻め切ることができない。

そして、何分か何時間か、時間の間隔が分からなくなってきた頃、両者同時にその場に崩れ落ちた。



カランカランッ!と練習用の剣と盾が地面に落ちる音が響く。


「はっ…はっ……、も…、もう、むり……」

「わ…、わたしぃも……」


2人そろって練習場に大の字で寝ころんでしまう

どうやら二人とも本気になりすぎて、体力を使いつくしてしまったようだ。







2人して体力を使い切り、しばらくの間そのままの格好で休憩をしていた僕たちだったが、周りの人たちの「こいつら何してんの?」と言わんばかりの視線に耐え切れず、重い体を引きずってギルドの受付スペースまで戻ってきた。


「あ、ありがとうございました。おかげで少しは自信がつきました。」

「あ、ああ、良かった。」

「これで皆に迷惑を掛けなくて済みます…。あ、ご、ごめんなさい!生意気なこと言っちゃって…。まだまだ…ですもんね。私、頑張ってもっともっと練習します!」


こちらは全力で体を動かしたせいでひーひー言ってるのに…。

だが、これならこのパーティでも頼りになる盾士としてしっかりと活躍してくれそうだ。


「僕もまだまだだからね。これからも一緒に頑張ろう。」


そう言って僕が手を差し出すと、少し頬を赤らめながらその手を握ってくれた。

…そんな表情をされるとこっちまで照れちゃうじゃないか。


「あ、そ、そうだ。これから私の事はマリーって読んでください。」

「え?」


握手したままそう言ってきた彼女に思わず問い返すと、


「あ、えっと、お、同じパーティメンバーですし、年も同じなので、マレリーラって長くて呼びにくいでしょうし、仲の良い人はそう呼んでくれてるので…。あ、も、もちろん他の皆にもそう呼んでもらいます!」


と、少し赤くなっていた顔をさらに赤くさせながら彼女は言った。


「そ、そうか。わかった。じゃあこれからもよろしくね、マリー。」

「あ…、は、はい!!」





握手を解き時間を確認するとすでにお昼前となっていた為、一度解散して昼食を取ることにした。

家に帰り、妹と一緒にお昼を食べながら今日の事を話する。大分心配してくれてたようで、僕の話を聞いて安心したようだ。



昼食後、ギルドの受付に向かうとそこにはすでに皆が集まっていた。


「すいません、みなさんお待たせしました。」


そう言いながら皆の顔を見渡すと、午前中のように暗い顔の人は一人もいなかった。


「いえ、私たちも今着いたところですので。」


おそらく僕の話を聞いて、夫々色んなことを考えたんだと思う。皆きりっとした顔をしている気がする。

…若干一名無表情の人もいるけど。


「じゃあ早速行きましょうか。」


特に意見も出なかったので、早速ダンジョンに入ることにする。彼女たちがどう変わったかは実践で見せてもらうことにしよう。






ダンジョンに入り、前と同じくスカウトのレミを先頭に進んでいく。

途中、何かに気付いたように彼女は通路の先を指差した。


「…ん。」


………………?


ん。では分からないけど、前回は罠が有る地面を指差していたからおそらく魔物だろう。

そう思い、彼女が指差した方向にゆっくりと歩を進めていく。すると視界の先にプルプルとした灰色の生物が現れた。


「よし、グレースライムが1対だ。じゃあマリー、お願い。」

「は、はいっ!」


前回と同じくグレースライムが1対だけ。これなら彼女が成長した姿を皆にも見てもらえるし、万が一の可能性も少ない。マリーは盾を構えたままじりじりとスライムに向かって近づいていく。そして向こうもこちらに気付いたようで、体をプルプル震わせながら近づいてくる。

我彼の距離がわずかとなった時、スライムはその体を弾ませマリーに飛びかかってきた。

彼女は焦らずその攻撃を盾で受け止め、さらにぶつかる瞬間盾を前に出すことで打撃のポイントをずらし、威力を軽減することに成功していた。


「よしっ!」


スライムが盾に弾かれ地面を転がっているその隙に、僕は駆け出しスライムに向かって剣を振り下ろす。

スライムはそのまま光となり消えていき、その場に小さな魔石を落とした。

僕は其の魔石を拾いマリーを見る。彼女もこちらに近づいてきて、お互いに手を上げ笑顔でハイタッチを交わした。





盾士が安定したことで戦闘が安定し、入り口付近で遭遇するグレースライム1体ならば苦戦することが無くなった。

そして彼女だけではなく、シルフィーは積極的にマリーに話しかけてどのタイミングで回復をすればよいか等の打合せを行い、ムーランも空回りに見えるほどあれこれアイテムを取り出して皆に配っていた。

夫々が自分なりに考え行動しているのがはっきりと伝わり僕は嬉しくなってきた。

しかし、それでも全てが上手く行くわけではない。


「あちゃー、またやってもうた…。」

「………。」


サミィはなぜか魔法が上手く狙った対象に掛からず、レミは昨日よりはマシになったとはいえ、声を出さないのは相変わらず。

2人とも何かしら理由があるんだろうか…?





探索を終えダンジョンから帰ってきた僕たちは今日の成果をみんなで分ける。

全部でグレースライムの魔石が12個だから一人2個づつ。この辺はきちんとしておかないと、お金が原因で揉めて解散するパーティもあるくらいだからね。

グレースライムの魔石は一つ200Gで買い取ってもらえるから、今日の稼ぎは1人400Gとなる。

ちなみに、大体100Gで飲み物が1本買えるぐらいの値段だから、今回の稼ぎは子どものお小遣い程度の儲けしかないんだけど。


分配の話を済ませ、みんなで一緒に買い取りカウンターへ。と言っても、ギルドから出るには必ずここを通ることになっている。


現在ダンジョンやギルドは国が管理していて、さらにダンジョンで手に入る魔石についてもギルド、つまり国が管理している。

ダンジョンから探索者が持ち帰った魔石は、必ずギルドから出る時に買い取りカウンターで売る必要があり、代わりに売った魔石の割引券が貰える。これはギルドが国内の魔石を細かく管理し、所有者を明らかにする為であり、基本的に魔石の転売は認められていない。

探索者はダンジョンで魔石を手に入れそれをギルドで売る。もし其の魔石が欲しい場合、直接持って帰ることが出来無い為、ギルド管理の魔石販売所で買う必要がある。その際、当然の如く売値より買値の方が高く設定されているので、その差額を貰った券で割引してもらう訳だ。

グレースライムを例に挙げると、魔石の売値は200Gだが、ギルドから買う時には300Gとなる。そして魔石を売った際に、差額分の『グレースライムの魔石100G割引券』が貰える。魔石をお金にしたい場合はそのまま200Gを持って帰れば良いし、もし魔石が必要ならば、貰ったばかりの200Gと割引券を魔石販売所で渡せば、自分の取ってきた魔石を持ち帰ることが出来るということになる。


ちょっとめんどくさいけど、魔石で問題が起きないようにするための措置だとして皆割り切っているようだ。昔こっそりと魔石を持ち帰っただけで他の国への密輸を疑われ、厳しい処罰を受けた冒険者もいるから余計にだれもこの事について文句を言う人間はいない。



今回僕たちが持ち帰った魔石も一度ギルドで全てお金と割引券に変えられた。ここからどうするかは夫々個人に任せてあるので、お金ではなく魔石の方が良い人は交換していくだろう。


明日の朝集合する旨を伝え、僕たちは一旦解散することにした。

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