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ダンジョン都市  作者: ノジー・マッケンジー
4/12

4 それぞれの事情

次の日、僕たちは昨日と同じ席へと集まった。


「皆、今日もよろしくお願いします。では、今日はまずダンジョンに入る前に少し打ち合わせをしたいと思います。」


僕の言葉に不思議そうに首を傾げる彼女たち。

いやいや、昨日の様子で打合せが必要ないと思ってるんだろうか。

そう思いつつもとりあえず不思議そうな表情の彼女たちを無視して、昨日半日掛かって考えた内容を話し始めた。


「じゃあまずダンジョンについて基本的な事について話したいと思います。あ、サミィさんとムーランさんとレミさんは経験者だから知ってる事ばかりかもしれないけど、昨日がダンジョン初挑戦だった人間が3人いるし、情報のすり合わせの為に一応聞いててくださいね。」


唐突に始まった話し合いだったが、みんな若干戸惑いつつも僕の話を聞いてくれる。


「まず昨日の探索で一番気になった事なんですが、皆自分の職業のするべき仕事が何か知ってますか?」


何名かは当然だとばかりに頷き、数名は昨日の事も在ってか俯いている。

僕からしたら何でこんなに自信満々に頷けるのかが分からないけど。


「では皆で情報を共有する為に、一つづつ確認していきましょうか。」


あくまで僕が教えるという訳ではなく、知らない人もいるから皆で情報を共有しましょう。というスタンスで話をする。これならすでに知ってる人たちのプライドも刺激しなくて済むはずだからね。

ちなみに昨日は美女5人に囲まれて緊張していた僕だけど、昨日の探索のダメっぷりを見ると緊張してるのが馬鹿らしくなってしまい、そう思ったら緊張もせずに普通にしゃべれるようになっていた。


「じゃあまずは盾士から。」


そう言った瞬間マレリーラさんの肩がビクッと震えたけど見なかったことにして話を続ける。


「盾士は他の職業と比べて圧倒的に防御力が高いです。ダンジョンの魔物は最弱と言われているグレースライムですら其の攻撃力は馬鹿にできないので、盾士が魔物の攻撃を抑えてもらわないと他の職業は何もできなくなります。盾士には常に効果が発揮されるパッシブスキルで防御力アップが有ります。これのおかげで盾士は自分と同じレベルの魔物の攻撃なら耐えることができます。が、逆を言うと盾氏以外の職業では魔物の攻撃に耐えられないということになります。盾士の次に防御力が高いとされている僕のような近接系の武器士でも、今のレベルではグレースライムの攻撃を2発耐えるのがおそらく限界です。なので盾士であるマレリーラさんは、自分が守らないとパーティが全滅するということを頭に入れておいてほしいです。」


最後は少しきつい言い方になってしまったけど、実際に盾士以外は魔物の攻撃に耐えられないのでこればかりは仕方がない。最初よりもどんよりとした空気を醸し出すマレリーラさんを横目に僕は話を続ける。


「次に空間魔法使い、この職業は探索に必要な荷物を運ぶのに大変重宝されています。場合によっては数日間ダンジョンで寝泊まりする必要がある時にも空間魔法が有れば大きな荷物を自分で背負って行く必要が無くなりますから。ですが逆に戦闘ではさほど貢献できないと言われてる職業でもあります。その為この職業の人は少しでもパーティに貢献できるように常に空間魔法で様々なアイテムや道具、生活用品等を収納していると聞きます。ダンジョンに入る時は必ず何があっても良いように準備して、他の職業の手が回らない時、例えば治療師の手が空いていないときにポーションを使って回復させたり、魔法使いがいないパーティで魔法の効果のあるアイテムを使ったりと、自分の能力を何とか活用してパーティに貢献する職業だと僕は習いました。」



ムーランさんも若干落ち込んだ雰囲気を出す。それはそうだろう。唯一自分の能力が求められた時に何もできていないのだから。


「次にスカウト。これはダンジョン内で罠や魔物の気配を察知してパーティメンバーを危険から守ることが仕事です。ダンジョン内の罠は、昨日も経験した通り矢が顔を狙って飛んできたりと悪質な物が多いです。下手をすれば一つの罠でパーティが全滅する可能性も有ります。だからいち早くその危険を察知して、皆に伝えないといけません。自分だけが分かっていてもパーティメンバーが分かっていなければ意味が無いですからね。」


昨日の事も在り少し皮肉も込めて言ってみるも、当の本人は聞いているのかいないのか無表情のままだった。


「次に付与士。これは味方に能力上昇などの魔法を、敵に能力ダウンなどの魔法をかけて戦闘を有利に進めるのが仕事です。間違っても味方に能力ダウンの魔法をかけるのが仕事ではありません。」


こちらもチクチクと言ってみるが、片手を上げて「ゴメンゴメン」と軽く言うだけで、本当に反省しているのか分からない。


「最後に治療師。その名の通りパーティ内で傷ついた人を癒し回復するのが仕事です。主にダメージを受ける盾士の回復がメインになります。ですが傷ついた人がいない場合に全く暇になるわけではありません。何もしなくていいわけではありません。」


ここで一度言葉を切り、みんなの顔を見渡しながらしゃべる。


「他の職業も一緒ですが、自分の仕事が無いときは休憩ではないです。武器士と魔法使いだけが魔物に攻撃するわけではないです。例えば石を一つ投げるだけでも魔物の気を引けますし、そうすれば前線にいる盾士や近接武器士の負担が軽くなります。もし相手がそれなりに知性のある魔物だった場合、自分の立ち位置を変えるだけでも相手にプレッシャーをかけることができます。まあそう言ったことは経験を重ねることによって身についてくることではありますが…。とにかく、することが無いからと後ろでぼーっと見ていていいわけではありません。」


今まで自分は大丈夫と自信満々の顔だったシルフィーさんの顔にも影がかかる。


「それぞれがきちんと自分の仕事をこなし、そしてお互いの動きを考え連携する事。これがパーティだと僕は思います。僕だって昨日初めてダンジョンに入った初心者の素人です。でもせっかく集まってくれたこのメンバーで、一緒に探索を進めていきたいって思いは強くあります。だから…、それぞれ足りないものもあると思います。みんなで協力し合って頑張っていきたいんです。宜しくお願いします。」



僕の話が終った後、雰囲気は大分暗くなってしまった。おそらくそれぞれが自分に足りないものを自覚したからだろう。最初自信満々の表情だったメンバーの顔にも影がかかっている。

このままでは探索を始めるのは無理だと思った僕は、いったん解散して昼からまた集まることを提案した。








暗い雰囲気の中夫々ギルドから出ていくメンバーたち。その中で一人だけ、席から動かない人がいた。


「あ、あの…。」

「ん、なんでしょう?」

「これからお昼まで…お時間空いてますか?」

「本当はダンジョンに入るつもりだったから時間は開いてますが…どうしました?」

「あの…、も、もしよければ、私に指導してくれませんか?」


1人席に残ったマレリーラさん。今の話を聞いて思うところがあったのだろう。


「今のお話を聞いて、私がみんなを守らないと全滅するって聞いて、でも私恐くて…、どうしたら良いんだろうって…。」


基本的に職業はその人にあったものに着くことが多いと言われている。しかし今僕の目の前にいるのはお世辞にも盾士が似合っていると言えない華奢な女の子だ。何故彼女が盾士になったのかは分からないけど、彼女が盾士でありダンジョンに入る以上はその仕事をしてもらわなければいけない。


「…わかりました。指導って言っても僕だって初心者だから大したことはできないですが、それでも良ければ力になります。」

「あ…ありがとうございます!」


そう言って顔を上げた彼女の顔の目にはうっすら涙が……って、そう言えばこの子の顔どこかで見たことが有るような…


「……?ど、どうかしましたか?」


急に黙ってしまった僕を不安に思ったのか、マレリーラさんがそう問いかけてくる。

彼女の顔が僕の顔を覗き込み、顔の近さに一瞬ドキッとするが、その瞬間思い出した。


「そうだ…思い出した!マレリーラさん、学校に通ってましたよね?」

「え、え?あ、はい、通ってましたが…?」

「やっぱり!多分僕とおんなじクラスだったはずです。僕も今の今まで気づかなかったですが。」

「ええ!?そ、そうでしたか。すいません、わ、私も全然気づかなかったです…。」


そう、彼女は僕が学校に通っていた時の同じクラスメイトだった。とはいえ、学校では皆自分が探索者になるために必死だから周りの人に気を掛ける余裕もないし、お互いが顔を知らなくても不思議ではない。関わりが薄い人なら特にだね。ただ彼女の事は一度見た時に『いつも下向いて沈んだ感じだけど、ホントに探索者になれるのかな?』と思い気になったことがあった。そしてチラッと顔が見えた時に予想以上に可愛かったというおぼろげな記憶がある。その時は一瞬だったし、それよりも自分の事が優先だと思いそれ以上は気にしていなかった。



「私は昨日15歳になったので資格を貰いまして…。」

「そうだったんですか。僕と誕生日が1日違いだったんですね。」

「え?じゃ、じゃあ一昨日資格を取ったんですか?」

「ええ。で、パーティメンバーの募集を掛けたら次の日に皆が来てくれたんです。」

「そ、そうだったんですね。……なんだかすごい巡り合わせですね…。」


まさに運命。彼女たちとパーティを組んだ時にも思ったが、今の話を聞くと本当にそうなんじゃないかと

思えてくる。嬉しそうな彼女の顔を見ると、僕の顔がだんだん熱くなってきた。


「じゃ、じゃあとりあえず練習場に行って話しましょうか。」


恥ずかしくなったのを隠すように強引に話題を変える。


「あ、はい、そうですね。お願いします。」


元クラスメイトだと分かり、少し緊張がほぐれたように見える彼女と一緒にギルドの練習場へと向かった。



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