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ダンジョン都市  作者: ノジー・マッケンジー
3/12

3 問題点

一先ずパーティを組んだ僕たちは、一度ダンジョンに入ってみることにした。

本当ならその場で色々と打合せをするべきだと思ってたんだけど、僕が彼女たちの顔をまともに見れないので(顔が真っ赤になってしまう)、お互いがどれくらいの力があるのか知る為と理由をつけて、入り口付近で一度戦闘をしてみることにした。

でも今思えば、この時点できちんと話し合いをしておくべきだったんだ…。








「じゃあレミさんお願いします。」


ダンジョンに入って、教科書通りスカウト職を先頭にして歩く僕たちの前に、早速魔物が現れた。


『グレースライム』


このダンジョンは、出てくる魔物の強さが色で決まっている。

現在最高到達数が51階とされているけど、いったいどこまで続いているのかは誰も分からない。

今現在分かっている魔物は、1階から10階までが灰色、11階から20階までが青色、21階から30階までが緑色、31階から50階までが黄色、そして51階からは赤色らしい。

スライムで言うと、順番に『グレースライム』『ブルースライム』『グリーンスライム』『イエロースライム』『レッドスライム』となっていく。勿論スライム以外にもいろんな魔物がいるけど、色で強さが違うのはどの種族も同じみたい。


今目の前にいるグレースライムは一番弱い灰色。そしてスライムという種族は、同じ色の他の魔物と比べると一番弱いと言われている。つまりこのダンジョンの中で最弱の魔物という訳だね。

そんなグレースライムが1匹だけ。初心者が半数を占める僕たちのパーティのデビュー戦には丁度いい。

僕は武器である剣を構えて盾士のマレリーラに指示を出す。


「マレリーラさん!前に出て受け止めて!」


授業で習った通り、いくら最弱の魔物でもその攻撃はバカにできない。防御力アップのスキルを持つ盾士以外は攻撃を受けるわけにはいかない。

だがそんな僕の考えを他所に、彼女は予想外の行動に出る。


「え、えー!無理無理無理!むりですぅーーーー!」


なんと皆の前に出て攻撃を受けるどころか、後ろへと逃げ隠れてしまう。

いきなりの事に僕も一瞬パニックになったところへさらに追い打ちがかかる。僕に向かって魔法が放たれ、それがぶつかった瞬間急に体が重くなった。


「あ、すまん、間違えてしもたわ。」


どうやら付与士の魔法『スピードダウン』を魔物ではなく僕に掛けてしまったようだ。

訳が分からずも、とりあえず何とかしないとと周りを見渡すと、なぜかパーティメンバーは皆僕の後ろに。

目の前にはズルズルと迫ってくるグレースライムが一匹。

もう僕の頭は完全に混乱してしまっていた。まさに『状態異常 混乱』だ。


しかし相手は魔物。こちらがどれだけ混乱していようが向こうには関係ない。目の前に現れた敵対者を倒すべくゆっくりと近づいていく。

僕が正気を取り戻した時にはすでにスライムは僕の目の前まで来ており、今まさに飛びかかろうとしているところだった。

慌てて剣を振り上げスライムに向かって振り下ろす。

丁度スライムがはねた瞬間にタイミングよくカウンターが決まり、一撃でスライムを真っ二つにすることができた。

2つに分かれたグレースライムは、その体を光の粒に変化させ消えていった。残ったのは一つの小さな石が1つ。

僕は思わずその場で膝から崩れ落ちてしまった。





『何度も言いますが、ダンジョンではそれぞれがきちんと自分の仕事をこなすことが大切です。そうでなければたとえ熟練の探索者であろうとも、低階層で命を落とす危険性が有るからです。攻撃を武器士や魔法使いだけに任せるなんてもっての外ですね。』



しばらくショックで動けなくなっていた間、先生の言葉がずっと頭を巡っていた。


「大丈夫…ですか?」

「あ、は、はい…。と、とりあえず一旦帰りましょうか。」


しかしいつまでもこのままでいる訳にもいかない。

心配そうに僕を見つめるメンバーに、一度帰って話し合うことを提案した。

皆も今の戦闘見て、無理に進もうという考えの人はいなかったようで、ダンジョンに入って僅か数分で、僕たちは帰る事となった。


しかしダンジョンと言うものは非常に意地の悪いもので、数分前に無かったものが平気で現れてくる。

そう、こんな風に気付かずに踏むと、横の壁から木の矢が飛び出してくる罠とか…。


カチッというやけに響く音が足元から聞こえ、僕のすぐ横の壁から勢いよく飛び出してきた木の矢は、ギリギリ僕の鼻先をかすめて飛んでいき、反対側の壁へぶつかるとそのまますぅっと消えていく。

心の中で冷や汗を流しつつレミの方を見ると、彼女は気にした風でもなく1人先に歩いて行く。


「ちょ、ちょっと待ってください!今の罠気付かなかったんですか?」


スカウトの職業はダンジョン内の罠がある場所が分かるスキルを持っている。

それはたとえ本人のレベルが低かろうとも、スカウトの職であれば少なくとも1階から5階くらいまでの罠には大体気づくことが出来ると言われている。

ではなぜレミはこの罠に気付かなかったのだろうか。

僕が返事を待っていると、レミは無言で地面を指差した。そして振り返りそのまま出口へ向かって進んでいった。

訳が分からずに後を追いかけようとした時、再び僕の足元で先ほど聞いたばかりの音が響いた。

今度も横の壁から矢が飛び出てきたけど、とっさにしゃがむことでギリギリ回避する。

またか!と感情的になりそうになった時にふとあることに気が付いた。

先程レミは地面を指差していた。その彼女が指差した部分に今自分の足が乗っている。

…これはつまり、口に出していないが指差して教えたよ。って事だろうか?


そう気づいた瞬間めまいがして、僕は少しよろめいてしまった。


「大丈夫ですか?」


たまたますぐ側にいたムーランが支えてくれる。


「ああ、ありがとうございます。ちょっとめまいがしただけで…。あ、そうだ、少し落ち着きたいので水を出してもらっても良いですか?」


空間魔術師は覚える魔法の質から荷物持ちとしては非常に有能で、探索に必要なアイテムや、食料、水などを運ぶ係とされている。学校でも習ってきたことでもあり、空間魔法士は戦闘で貢献できることが少ないから戦闘以外で貢献する為に探索に必要な物を常に持ち歩く(空間魔法で収納しておく)のが常識とされている。なので当然ムーランも水を持っているだろうと思いお願いしたんだけど…。


「あ、すいません。今私何も持ってきてないんです。」








僕は目の前が真っ暗になった。


























気がつけば僕は探索者ギルドにある椅子に座っていた。

多分みんなで歩いて帰って来たんだろうけど、記憶があいまいでよく思い出せない。


僕の周りには5人の女性。


臆病で魔物の攻撃を受けることができない盾士。

魔法をかける対象を間違える付与士。

無口で罠をパーティメンバーに伝えれないスカウト。

荷物を持ってこない荷物もt…空間魔法使い。

そして目立ってはいなかったが、一切何もしようとせずお客さん気分の治療師。


こんなメンバーでいったいどうしろというのだろう…。

今朝感じていたドキドキは遠くへ消えさり、今はこの残念なメンバーをぼーっと見つめる事しかできなかった。





ふと時間を確認すると丁度お昼の時間が近づいていたので、僕たちはいったん解散することにした。

そして、流石にこの状態で昼から再びダンジョンに入る気はおきず、再集合は明日の朝とした。



足取り重く家に帰ると、そこにはいつもと変わらず元気いっぱいな妹の姿が。


「あ、お帰り!早かったね?…って、どうしたの?すごい疲れた顔してるけど…。」

「ああ、ちょっと色々あってね…。話だけでも聞いてくれない?」

「うん、勿論!あ、でも先にお昼作っちゃうからちょっと待っててね。」



料理を作る妹の後ろ姿をぼんやりと眺め、出来上がった食事を一緒に食べつつ先ほどのダンジョン探索の結果を話す。


「あー、それは大変だったねー…。」

「そうなんだよ…、ダンジョン初挑戦者が3人だったとはいえあれはちょっと…。」


その場では言えなかった愚痴を妹にこぼす。


「でもお兄ちゃん、その人たちってお兄ちゃんみたいにちゃんと勉強してきてるのかな?もしかしたらそういう知識が無いんじゃないの?」

「あー…確かにね。でも僕以外全員知識が無いって言うのも考えにくいけど…。」


前に探索者になる為には試験を受けなければいけないと言ったけど、実は他にも探索者になる方法はある。

15歳までの子が探索者になる為の一番の近道が学校に通って試験を受ける事ってだけで、それ以上の年齢の人は所謂賄賂であったり、コネであったりで資格を得ることが出来るみたい。まあ実際はそうやって入ってきた人たちは大半が低階層で探索者人生を絶たれるんだけどね。

そして国としては探索者が増えれば増えるほど良いから、年齢が上がれば上がるほど資格を取る為の試験が緩くなっていくという噂もある。何より僕たちが受けた試験も基本的な問題ばかりだったし、噂が本当だとしたら仮に勉強を一切していなくても勘で答えれば受かる可能性が有るのかもしれない。

彼女たちがどういった経緯で探索者になったのか気にはなるけど、先ずはそれより前に、ルーの言う通り知識のすり合わせが必要なのかもね。


「まぁ、明日また皆と話してみるよ。」

「うん、頑張ってね!」


ルーからアドバイスをもらったことにより、これから先に少し光が見えた気がした。

食事を終えた僕は寝るまでの間に、学校で習ったことをもう一度思い返し、どう説明をすればみんなに分かりやすく伝えれるかを考えるのであった。



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