11 パーティ
次の日、ギルドに着くとそこにはすでにサミィが来ていた。
「お、おはよー。」
「おはようございます。」
「なぁなぁ、今度はレミにも手ぇだしたん?」
「ぶふっ!!」
ニヤニヤしながらそう尋ねてこられ、思わず吹き出してしまった。
「ひ、人聞きが悪いですよ!」
「せやかてなぁ。初日のマリーやろ?次にうちやろ?ほんでもって昨日はシルフィーにも優しかったやん。で、レミにいたっては…夕べはお楽しみでしたね?」
「ち・が・い・ま・す!僕はパーティの為に皆の悩みを聞いてるだけです!」
「ほー、ほんまにぃ?」
「本当です!ていうか、サミィさん自分の名前もシレッと入れないで下さいよ。」
「えぇー。あの晩はあんなに優しかったのにぃ…。」
「うわぁーー!ちょっと!誤解されるような言い方は止めて下さいって!」
2人でギャーギャーと言い合っていると他のメンバーも集まってきた。
「おはようございます。楽しそうですね?」
「おー、おはよー。めっちゃ楽しいでー。せや!ムーランも一緒に混ざらん?」
「よろしいんですか?」
「勿論や。題して、結成!ハーレm「うわぁああああ!!」…って、ちょっと今のは声大き過ぎちゃう?」
とんでもない事を言おうとしていたサミィの言葉は遮ることができたが、周りからギロリとした目で睨まれてしまった。僕が悪いわけじゃないのに…。
と悪い意味で賑やかにしていると最後にレミがやってきた。
そして僕の顔を見て、少し恥ずかしそうな表情で口を開いた。
「お…おはよう。」
「あ…、う、うん。おはよう。」
彼女の頬は少しピンクに染まっており、これはまたサミィにからかわれそうだと思い慌てて言い訳をしようと振り向くと、そこには僕の予想していたニヤケ顔は無く、只々みんな驚いた表情をしていた。
「レミ…あんた、普通に喋れたんや…。」
「び、ビックリしました…。」
「ええ、わたくしも思わず固まってしまいましたわ…。」
…一応一番最初の自己紹介の時にも喋ってたはずなんだけどね。
皆の言葉に若干落ち込んだ表情を見せるレミ。ここは少しフォローを入れておこう。
「実は昨日解散した後、レミと話をしたんです。彼女も理由があって喋っていなかっただけで、本当は皆ともっと喋りたいそうです。」
僕の言葉にレミは少しうれしそうな表情を、他のメンバーは納得したようなしないような微妙な表情をしていた。
「彼女は『スカウトは無駄な事を喋ってはいけない』と教えを受けており、それを忠実に守っていました。昨日話をして、メンバーとのコミュニケーションをとることの重要さをきちんと理解してくれましたし、彼女自身もしゃべるのが嫌なわけでは無いんです。とは言え、今まで喋っていなかった分自分から話をするののに慣れていないそうなので、皆さんも協力をしてもらえればと思っています。」
するとおずおずと言った感じでマリーがレミに話しかけた。
「じゃ、じゃあ、私達とお話したくないわけじゃあなかったの?」
「うん。」
「うちらの事嫌いって訳でもないん?」
「皆の事が嫌いなんて、そんなこと無い。みんな好き。」
レミの言葉にホッとした表情を見せるメンバーたち。
「私はもっと、みんなと話がしたい。これからもよろしく。」
ワッっとレミの元へ集まるメンバーたち。そのままガールズトークが始まってしまった。
(少し離れていようかな…)
元々こうなってしまえば女子の話は長い。それに夫々思うところは在ったのだろう。胸のつかえがとれたように、皆笑顔で話をしている。中心にいるレミも少し戸惑った風はあるけどなんだかんだで嬉しそうだ。
(しかし…、みんな仲良くなってくれて良かった…。)
パーティメンバーだけに限らず普段の生活においても、人が数人集まれば気の合う人、会わない人はでてくる。そうなるとグループや派閥のようなものが出来て仲が悪くなったり対立したりすることになる。
実際のところ、メンバーの不仲が原因で解散したパーティもあると聞く。僕がパーティを組むときに1からメンバーを探したいと考えた理由もここにある。
だが今のところ女子5人で特別仲が悪い事も無く、今だってレミと話が出来る様になったことを心から喜んでいるように見える。まぁ、まだパーティを組んで日が浅いからかもしれないが、できればこのまま皆がずっと仲良く行きたいものだ。
(多分、みんな優しいんだろうな…。)
メンバーたちの良い所を発見でき、僕は何となく嬉しい気持ちになれた。
しばらく待っても話が終わりそうにないので、タイミングを見計らって話しかける。
「切りのいいところで終わってくださいね。そろそろダンジョンに入らないといけないので…。」
会話に花を咲かせていた女子ズはハッとした顔で時間を確認し、アセアセとダンジョンへ入る準備を始めるのであった。
ダンジョン内
「じゃあレミ、いつも通りお願い。」
「わかった。」
そう言ってレミは先頭を歩きだす。
「角の向こうにグレースライム2体。」
「よし。じゃあ付与魔法はアタックアップだけで。」
「おっけーや。ほんならいくでー。……アタックアップ!」
「で、では私は先行しますね。」
「では私は周りの警戒をしておきますね。」
いつものようにマリーが攻撃を受け、その隙に僕が倒す。
あっという間に戦闘は終了し、魔石2つをみんなの処へ持ち帰る。
「ムーランさん、魔石お願いします。」
「分かりました。収納しておきますね。」
「マリーさん、怪我はありませんこと?」
「は、はい。大丈夫です。」
「辺りに罠と魔物の気配はない。」
「わかった。じゃあ先に進みましょうか。」
それぞれが声を掛け合い、これまでにないほどスムーズに探索は進む。
「シルフィーさん、ヒールを!」
「分かりましたわ!……ヒール!」
「あ、ありがとうございます。」
「奥に罠が有る。出過ぎないで。」
「わかった!マリー、もう少しこっちへ!一気に倒します!」
少しづつだが成長し、1つのパーティとして形になってきた。
「シルフィー、今ので魔力どんな感じやった?」
「そうですね、近くで魔法を使う時と比べると倍の消費ぐらいまでは抑えられましたわ。」
「お、すごいやん。ほんなら3体の時はうちと交互に魔法を使えば消費は抑えれるな。」
「そうですね。じゃあ、その辺りの兼ね合いは2人に任せても良いですか?」
「ええ、勿論。まかして下さいまし。」
メンバーの仲も良好。
お互いがお互いを気遣い合い、認め合い、自分の仕事に責任をもち、夫々がパーティの為の行動ができている。
思えば初日。初めてのダンジョンでは、守らない盾士、魔法音痴の付与士、危険を知らせないスカウト、物を持たない空間魔法士、何もしない治療師と、とんでもないメンバーだった。でもこの4日間で彼女たちの問題を少しづつだが解決することができた。マリーは盾の扱いがうまくなり今では立派な盾士だ。サミィは魔力音痴の事をみんなに告白し、それでも自分の能力を生かして頑張ってくれている。シルフィーはヒール1回で倒れた事には驚いたけど、今見た通り長時間の探索でも問題ないレベルになっている。そしてレミも自身の事を話してくれて、パーティの為に頑張っている。まだしっかりと話をしたことが無いけどムーランだって、初日の僕の話を聞いてからは常に必要だと思われるものを収納スキルで携帯してくれて、縁の下の力持ちポジションになってくれている。
たった4日前の出来事なのに、ずいぶん昔の事のように感じるくらい濃い日常を送った。
でも僕たちは、これでようやくスタートラインに立ったばかりなんだ。
本来ならパーティを組んだ初日でこのレベルの事は出来ていておかしくない。でも僕たちはこの4日間でお互いの事をより知ることができた。これは決して無駄な事ではないと思う。
これからまだまだ楽しい事もつらい事も待ち構えていると思う。でも僕たちなら大丈夫。そう思える。始めて皆に出会ったとき、これも運命かもと思いパーティを組んだけど、本当に運命の出会いだったのかもしれないね。
僕はこれから何があっても、このメンバーで、このパーティで乗り越えていきたいと思う。
僕たちの戦いはこれからだ!!
…なんてね。




