1ダンジョン都市
思い付きで書き始め途中でお蔵入りした作品ですが、何となくもったいないので投稿しました。暇つぶし程度にどうぞ。
「ついに…、ついにこの日がやってきた…!」
僕の目の前にあるものは職業測定器。ダンジョン内での職業を決める機械だ。
「次の方こちらへどうぞ。」
担当の職員さんに呼ばれ、僕は測定器の前に進み、指示の通りに測定機に手を触れる。
始めてダンジョンに入る人間は必ず職業測定を受けなくてはいけない。
「えーっと、あなたの職業は『剣士』ですね。頑張ってください。」
言葉と共に返してもらった探索者カードには『職業 剣士』の文字が。
これでようやく僕も探索者としてダンジョンに入ることができるようになったんだ。
感慨にふけっていると、後ろから「終わったんなら早くどけ」と言いたげな視線を感じ、すごすごと移動する。
そして壁際に設置されている椅子に座り、あらためて自身の探索者カードを見た。
職業『剣士』
何度見ても良い!
自分も探索者の一員になれたんだと実感して顔がニヤけてしまう。
ふと顔を上げると周りの人がこちらを見てクスクスと笑っている。
恥ずかしくて顔が熱くなってくるが、これくらいは許してほしい。
なんてったって、ようやく念願の探索者になれたんだから!
ダンジョン
ダンジョンとは中に多くの魔物がいる迷宮の事。
そのダンジョンに入り、魔物を倒したり中にあるものを売って生活している者を『探索者』と呼ぶ。
ダンジョン内の魔物は倒すと色々なものを落とす。
その中でもすべての魔物が落とす『魔石』は、我々の生活に欠かせないものである。
当然、ダンジョン内は非常に危険な為、資格を得たものしか中に入ることを許されていない。
そして一番大事なことは、決して一人でダンジョンへ入ってはいけないという事だ。
夫々職業には役割がある。複数人でパーティを組み、皆が自身に与えられた仕事をこなさねば、再びダンジョンの外へと帰ってくることは叶わぬだろう。
一通りニヤニヤした後、僕は学校で習ったことを思い出した。
例え資格を手に入れたとしても、決して一人きりでダンジョンに入ってはいけない。
これは先生が口を酸っぱくして何度も言ってたことだ。
まぁ、入り口には常駐の兵士さんがいるから、一人で入ろうとしたらまず間違いなく止められるんだけどね。
ちなみに学校と言うのは、もう引退した探索者がこれから探索者を目指す若者たちに最低限の知識を教えるために作られた組織で、正式名称は違うけど呼びやすいから皆学校って呼んでいる。
そして、探索者の資格は15歳にならないと取れないけど、それ以前に試験だけは受けることが出来るようになっている。
ただ、その試験を受けるためには、この学校で先生からの許可がないと試験を受けることができないんだ。
無事試験に合格すれば、後は15歳の誕生日を待つだけとなる。
僕も事前に試験は合格していたから、今日の誕生日がとても待ち遠しかった。
再び探索者カードに目を落とす。
またニヤニヤしそうな顔を引き締めて、これからの事に意識を移す。
(先ずはパーティメンバーを探さないと…。)
先生が常に注意していた、一人でダンジョンに入ってはいけない理由。
沢山あるけどその中で特に大事なのが、職業によって出来る事が違うという事だ。
現在確認されている職業は、大きく分けて7種類ある。
武器士・魔法使い・盾士・付与士・治療師・スカウト・便利屋だ。
先ず武器士は、その名の通り武器を持って戦う職業で、僕の『剣士』もこの中に含まれる。剣だけでなく、槍なら槍士、弓なら弓士と使う武器によって呼び名が変わる。又、『物理アタッカー』とも呼ばれ、魔物に物理的なダメージを与えて倒すのが主な仕事だ。
次に魔法使い。これもその名の通り魔法を使う人で、攻撃魔法を扱う職業だ。その中でも属性が、火・水・風・土・光・闇の6種類に分けられており、武器士と対を成す職業として『魔法アタッカー』とも呼ばれている。基本覚える魔法も攻撃魔法ばかりなので、後方から敵に魔法的ダメージを与えるのが仕事だ。
次に盾士。盾を持って最前線で魔物の攻撃を防ぎ皆を守るのが仕事だ。ちなみに盾士は常時発動スキル(パッシブスキル、Pスキルとも呼ばれる)で、防御力アップの効果がある。これは盾士のみ覚えれるスキルで、これが有るのと無いのでは防御力がまるで違う。そしてそのPスキルを持つ盾士ですら魔物の攻撃を食らえばダメージが有る。つまり盾氏以外の職業の者が攻撃を受ければ、1発で戦闘不能になってしまう可能性も高いと言う事だ。そう言った理由からパーティに必ず1人は盾士が必要と言われている。先生が一人でダンジョンに入ってはいけないと言った理由もここにある。
次に付与士は、主にサポート系の魔法を使う事が出来る職業だ。仲間の能力を一時的にアップさせたり、逆に魔物の能力をダウンさせたりすることが出来る。他にもレベルが上がれば、敵を状態異常にする魔法も覚える。一見地味に見えるが、能力の上昇率はそこそこ高いので、付与士がいるのといないのとでは一回の戦闘に掛かる時間が全然違うと言われている。
次に治療師。これは回復魔法を使える職業だ。安全にダンジョンを探索する為には盾士が必要不可欠だけど、その盾士ですらダメージは受ける。常に万全な状態の盾士がいることがパーティの安全につながる為、治療師も盾士とセットで1パーティに一人は必要と言われている。それにもし、盾士が敵の攻撃を防ぎきれず他のメンバーが攻撃を食らった場合、大抵の場合は致命傷になる為すぐさま回復をしないと間に合わない。中には治療師を入れずに回復薬を大量に持ち込み探索するパーティもあるらしいけど、全体で見れば極々少数みたいだ。
次にスカウト。【スカウトがいないならダンジョンには入れない】と言われるほど重要な職業だ。ダンジョン内には沢山の罠がある。それを察知して解除できるのはスカウトのみ。そして魔物の気配が分かるのもスカウトのみだ。勿論熟練の探索者ならある程度の気配は分かるかもしれないけど、魔物だってこちらが気付いていなければ奇襲ぐらい仕掛けてくる。それを事前に察知するのがスカウトの仕事だ。もしスカウト無しでダンジョンに入った場合、訳も分からず気がついたら自分は死んでいた、なんてことも非常に高い可能性であり得るんだ。さらに、罠も非常に悪質な物が多く、低階層でも下手すれば1発で手足が無くなるぐらいの罠はあるらしい。これが1人でダンジョンに入るのがダメな理由、第一位だ。
最後に便利屋。これはそういう職業ではなく、皆がそう呼んでるだけで正式には『空間魔法使い』だ。この職業は戦闘に役立つスキルを覚えないけど、探索や生活には便利な魔法を覚えるからそう呼ばれてるみたい。特に最初から使える『インベントリ』の魔法は、別空間に物を収納する事が出来る魔法で、探索時の荷物を軽減できることから荷物持ちとしては需要が高いらしい。でも戦闘で貢献できることがほとんどないから、一般的にはハズレ職業ってことらしい。お金持ちのパーティなら色んなアイテムを買い込んで、ポーションを使って回復したり、魔物にダメージを与えるアイテムを使ったりして貢献している人もいるみたいだけど、やっぱりお金やアイテムを湯水のように使う方法は中々難しいみたい。
パーティを組む際に一番重要な点がこの職業なんだけど、問題は1パーティの人数上限が6人と決められていることだ。何故かは分からないけど、それ以上の人数ではダンジョンに入れなくなるらしい。
なので現在推奨されている一般的なパーティ構成は、スカウト・盾士・治療師の絶対に外せない職業が1人づつ、そして攻撃に長けた武器士と魔法使い、戦闘の効率を格段に上げることが出来る付与士の6人とされている。
ちなみに、魔物の中には物理的な攻撃が無効だったり、逆に魔法攻撃が無効と言ったのも存在するらしいので、可能ならば武器士と魔法使いはどちらもいた方が良いとされている。
中には武器士・魔法使い・付与士のどれかを抜いて、代わりに便利屋こと空間魔法使いを入れてるパーティもあるが、全体で見ると少数派らしい。
幸い僕は武器士の『剣士』だから、パーティに入れないといったことは無いだろう。
そう思いながら、僕は椅子から立ち上がり探索者ギルド総合受付へと足を進めた。
「いらっしゃいませ。本日はどういった御用件でしょうか?」
受付に着くと綺麗なお姉さんが出迎えてくれた。
探索者ギルドとは探索者の為の総合サポート組合で、この総合受付はその名の通り何かあったときに何でも相談できるところだ。
「パーティメンバーを探したいんですが。」
そう言うと受付のお姉さんは笑顔で答えてくれた。
「分かりました。少々お待ちくださいね。……えーっと、今はパーティ募集の案件は出ていませんから、一旦こちらで登録して頂いて、他の方が登録されるのを待つという形になりますがよろしいでしょうか?」
パーティを組む方法は、すでに出来てるパーティに欠員が出た時などに、そこに入れてもらうパターンと、1から自分で募集して集めるパターンがある。
既にあるパーティに入る時のメリットは、メンバーを探す手間なくすぐにダンジョンへ入れること。デメリットは、すでに出来ている関係性の中に入る為居心地が悪ければ非常につらい事。そして僕みたいに完全に初心者が入る場合、元々のパーティからすれば自分たちより低レベルな人を1から育てないといけないことだ。
1からメンバーを探す場合、メリットはじっくりとメンバーを考えることが出来る為、大体パーティ内の仲は良くなる。デメリットは時間がかかることだ。
元々僕は1からパーティメンバーを探したいと思っていたので、今募集が無くても問題ない。
「はい、それでお願いします。出来れば他のパーティに入るのではなくて、1からメンバーを探したいんですが…」
「かしこまりました。ではパーティメンバー募集と言う事で登録させて頂きますね。探索者カードをお預かりしてよろしいでしょうか?」
カードを渡し登録してもらい、募集内容の詳細を決めた後、「流石にすぐには人は集まらないので、また明日来てください。」と言う事で、今日のところは一旦家に帰ることにした。
さて、いったいどんな人が来てくれるだろうか。
ちょっぴりワクワクしながら僕は家へと歩を進めた。




