表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【web版】美少女にTS転生したから大女優を目指す!【書籍化】  作者: 武藤かんぬき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/118

103――お休みの過ごし方

いつもブックマークと評価、誤字報告ありがとうございます。


 先日アフレコに初チャレンジしてそこそこ満足のできる評価をもらえたのだけど、いい影響があったのか事務所に新しいアニメのオーディションのお知らせがいくつか届いたりして参加することができた。


 オーディションのお知らせって基本的に声優さんをメインでマネージメントしている事務所に届くみたいで、大島プロにはこれまでまったく届いていなかったみたい。もしかしたら何らかの団体に届け出をしたら予定が送られてくる、みたいな仕組みなのかもしれない。もしもそうだった場合、もしかしたら洋子さんが手早く事務処理をしてくれたのかも?


 そんな日々を送っていたらあっという間に師走になっていて、業界的にも年末進行で仕事が前倒しになる時期がやってきた。いつものように学校帰りに現場に直行してお仕事を終えたあと、洋子さんがバックミラーで後部座席に座る私の姿を確認するように視線を向けて言った。


「すみれは今年の年末、なにか予定あるの?」


 世間話みたいに軽く尋ねてきた洋子さんに、少しきょとんとしてしまった。洋子さんがこういう聞き方をしてくるのって、急なお仕事が入ったとか入りそうとかそういうパターンが多い。悲しいかな特に急ぎで何かしなくちゃいけない予定はないので、お仕事のオファーが来たなら喜んで参加させてもらうつもりだ。でも業界的に年末年始のお仕事って生放送の番組に出演するとか、どうしてもその日じゃないとできないものしか思い当たらないなぁ。


「特に何もないですね、帰省も年単位でしばらくするつもりはないですし」


「……あぁ、確かにね。すみれがそうしたいと思う気持ちは、すごくわかるわ」


 私が答えると、洋子さんは眉根を寄せながらため息をついて同意してくれた。夏に姉が起こした騒動について、私自身まだまったくもって冷静になれてない。家族とは関わらない方がお互いに平和だろうから、実家に帰るつもりは全然ない。私だって両親と揉めたり感情にまかせて雑に傷つけたりしたくないからね。だから自分が爆発して罵詈雑言を浴びせないように距離をとっているのに、空気を読まない母は定期的にこちらに連絡してくる。あずささんと『私が望まない限り関わらない』という誓約書を交わしているにも拘らず、だ。


 最近は糸子さんが来てくれたから、寮の電話を私たち寮生が取ることはほとんどない。糸子さんにはちゃんと話を通しているので母から電話があっても『仕事で不在』とか『学校の用事で不在』だと答えてもらうようにはしているのだけど、あの母のことだから我慢の限界を超えたら東京まで乗り込んできそうだ。それは面倒だし今以上にややこしいことになりそうなので、我慢して5回に1回ぐらいは電話で短い会話をするようにはしている。


 知りたくもない実家の話や姉の話を聞かされるのは、正直なところストレスがすごく溜まる。私からすれば『知らんがな』の一言しか答える言葉がないんだもの、母も含めて『全部あなたたちの責任でしょうに』とでも言ってやりたくなる。言ったところでどうせ伝わらないのだから言わないけれど。


 『へー』『ほー』『ふーん』の3つをうまく使って何回か会話をしたけど、母はどうやら街の祖父の意向に従うふりをしつつ姉に内部進学試験を受けさせてあげるらしい。年明けに入試が実施されるそうなのだけれど、受かったら大金が必要なのだから母の独断で進めるよりも父には話しておくべきなんじゃないかな。私がそう考えていたら、ちゃんと父には相談済みで会社が加入している組合の貸付制度を使って、姉の学費を借りるつもりなのだそうだ。まぁ私の学費や生活費がいらないんだから、返済もなんとかなると踏んだのかな。そうじゃないと借金なんてしないだろうし。


 ただ両親がそこまでしたあげたところで、姉がこれまでの態度や行動を反省するかどうかは怪しいところだろう。けれどそれをどうにかするのは両親の仕事なので、姉が少しでも大人しくなるように頑張ってほしいところではある。この間みたいなことをまたやらかされたら、今回は内々に処理できたけれど次はどうなるかはわからない。そうなったらあずささんはもちろん、その時一緒に仕事をしている他の人たちにまで迷惑をかけてしまうかもしれない。それに賠償金とか多額の金銭も発生する可能性だってあるし、姉のせいで私がそれを背負わないといけないなんて絶対に承服できないもんね。


「今年はすみれにすごく負担をかけたでしょ、特に夏のあのドラマとか。ちょっとゆっくりする時間も必要かなと思って、年末年始は少し長めにスケジュールを空けてあるのよ」


「いえいえ、わたしの方こそ。いつも洋子さんにはお世話になったり、迷惑をかけたりしてますから」


 謙遜気味に答えつつも、あのドラマのスケジュールは結構しんどかったなぁと自然に苦笑が浮かんでしまう。なるほど、せっかくの洋子さんの気遣いだしゆっくりさせてもらおうかな。ただ本当にやるべきことがほとんどなくて、日課の自主レッスンや勉強以外の時間はボーっとするお休みになりそうだ。糸子さんが寮内をいつもキレイに保ってくれているから、私がやる大掃除は自分の部屋だけだからね。この間の夕食の時にはるかと愛さんも今年は帰省して寮には残らないという話をしていたので、本当に自分のことだけを考えていればいいみたいだし。夏までは寮のことも私がやっていて色々とやるべき作業が積み上がっていたので、これだけ自由時間があると逆に何をすればいいのか考えつかなくて持て余してしまう。


 ちなみに愛さんは女優業を辞めることを、家族に報告しに行くみたい。『年齢的にもいい大人なのだから自分の人生の選択肢は自分の意思で選べばいい』と愛さん自身は言っていたけれど、『いくつになっても両親にとってあなたは娘なのだから、円満な関係なのであれば報告だけはきちんとしておきなさい』とあずささんが愛さんを諭した結果今回の帰省となったんだって。


 はるかは今年中学に入学したばかりだけれど、両親から『今後のことを一度ちゃんと話し合いしたい』と言われて帰省することにしたそうだ。来年度からこの寮には小学生の子たちが数人増えるらしいので、私としてははるかにも寮に残ってもらっていっしょに先輩としてその子たちの面倒を見てもらえると助かる。さすがに2年生になったらすぐ転校して地元に戻るとかそういう急な展開はないだろうけれど、いつかははるかとも離れる日が来るのかなと想像するとかなり寂しい。願わくば少しでも長く、せめて大人になるぐらいまでは一緒にいて切磋琢磨できればいいんだけどね。


 糸子さんは自分の実家に戻るとしつこくつきまとう夫と鉢合わせする可能性があるとのことで、この寮で過ごすそうだ。そう、彼女は未だに離婚できていないんだよね。不倫したくせに夫側がゴネているらしく、糸子さんの実家にも足繁く訪れてヨリを戻そうとしているそうだ。最近では糸子さんのご両親も『反省してるみたいだしやり直してみたら?』と言ってくるようになったみたいで、味方だったはずの人たちが敵に回るストレスで疲れているのが端で見ててもわかる。彼女には是非、寮でのんびり羽を伸ばしてゆっくりしてほしい。私も寮に残るなら、なるべく糸子さんに負担を掛けないように気をつけないとね。


「特に予定がないなら、なおちゃんとふみかちゃんに会いに行くというのはどうかしら? 大阪で会うとかすれば、地元に近づかなくて済むでしょ」


「……でも年末年始だし。会いたいのは確かだけど、ふたりにも予定があると思うんですよね」


「1泊2日みたいな小旅行でもいいんじゃない? 行くなら新幹線とホテルは、事務所の方で手配するわよ」


 そう言えば前にチラッと考えていたっけ、なおとふみかのところに遊びに行くこと。背中を押すような洋子さんの申し出は正直助かるけれど、なんでそんなに旅行に行くことを勧めるんだろう。まるで私が東京にいちゃいけないみたいな、そんな圧すら感じる。


「もしかして、ドッキリとかそういう感じの仕事が入ってます? そのセッティングをしなきゃいけないから、私を外に出さなきゃいけないとか……」


 思わず口からこんな質問が飛び出てきてしまったけど、どうやらそういう訳ではないらしい。洋子さんとしては純粋に好意で言ってくれていて、でも強引にでも勧めないと私が遠慮して出掛けないんじゃないかと考えたそうだ。確かに洋子さんが言う通りにこうして渋ってるしね、私が素直に旅行に行かないという予想は当たっていると言わざるを得ない。


 そこまで言ってくれるなら、と旅行に行く準備を進めることにした。なにはともあれ関西に行く目的はなおとふみかに会うことなのだから、ふたりの予定を確認しないと。


 寮の電話については自由に使っていいと、あずささんからの許可をもらっている。でもなおとふみかに電話を掛けると1時間や2時間なんてあっという間に過ぎてしまうので、通話料がすごく高くなるのが怖くて頻度は年に数回しか使っていない。私の場合は時間だけじゃなくて距離もすごく離れているから、余計に心配になっちゃうんだよね。


 今回はあずささんのお言葉に甘えて、ふたりの家に電話を掛けさせてもらうことにした。もちろんなるべく手短に用件を済ませるつもりだ。なおとふみかにも以前手紙の中に『寮の電話だから早く用件を済まさないといけない』と書いたことがあるので、ふたりもわかってくれるはず。


 関西に行くつもりであることと、ふたりの予定がない日を尋ねるとクリスマス当日である25日と翌日の26日が空いているそうだ。まだ帰省ラッシュにも巻き込まれなさそうだし、そう考えるとすごく都合の良い日程に思えた。24日が学校の終業式だから、その後に準備して大阪に前乗りで移動しておく方がより安心できそうだ。 


 なおは冬休みも部活があるみたいだけど、24日から26日は顧問の先生の都合で部活がお休みらしい。ふみかの文芸部はわざわざ長期休みに部活をするほどには熱心ではないそうで、彼女の予定は友達と遊ぶぐらいしかないそうだ。でも文芸部に入って本格的に文字を書く楽しさに目覚めたそうで、今書いている長編小説を冬休み中に書き進めたいんだって。


 なおも練習すればするだけ上達しているらしく、バレーがすごく楽しいらしい。3年生が引退した後はレギュラーメンバーの中に入っているそうだから、なおに向いてるスポーツだったんだろうね。ふたりとも中学生になって楽しい毎日を過ごせているみたいで、ちょっと安心した。詳しい話は会った時に聞かせてもらおう、すごく楽しみ。


「私、すごく背が伸びてるから。すーちゃんびっくりすると思うよ」


 電話の切り際にいたずらっぽくそんなことを言い出したなおをちょっと微笑ましく思いつつ、『楽しみにしてるね』と答えて電話を切った。自慢げだったし、実際のところどれくらい伸びているのかな。入学式の時に立て看板の前で撮られた写真はこっちに送ってもらったけれど、ふみかとの身長差はそんなになかったから大げさに言ってるだけだと思いたい。前に東京に遊びに来てくれた時にも私との差が結構あったのに、これ以上離されていたら悔しいからね。


 どんな服を着て行こうかな、おみやげは何にしよう。そんなことを考えながら期末テストの答案を受け取って、大掃除などの学校行事をこなしていく。そうして過ごしているうちに、あっという間に2学期の終業式を迎えたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
久々になおとふみか回かー 成長期だからきっとすごい成長してるんだろうな ……すみれの身長は成長してるんだろうか?
バレーボールやってる子とかバスケやってる子って何故かすくすく伸びるよねぇ… なおも170cmとかになってそうw
久しぶりになおとふみかと会うのですね! 中学生になっていろいろ変わってきているのでしょうけど、三人はずっと親友で居続けて欲しいです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ