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転生少女、奔走する。

いつもこの小説を読んで下さってありがとうございます!

更新が遅れてしまい申し訳ございませんでした。> <

これからも用事が立て続く為、不定期な更新になってしまうかもしれません。


ですが、時間を見つけて必ず更新していきますので、是非これからもこの小説をよろしくお願い致します。m(_ _)m


リーナが姿を消した。

どうしよう。私のせいだ。

昨日、リーナの様子が可笑しかったのに気が付いていたのに。



「リディア……」



背後から困惑気味に私を呼ぶ声が聞こえた。

振り返ると、アイリスがどうしたらいいのか分からないようでまごまごしながら私の後ろを行ったり来たりしている。



「あの、リーナが居なくなったのはリディアのせいじゃ無いわ。だから、その……」



自分をあんまり責めないで。



悪役である彼女のものとは思えない言葉に内心ちょっと驚きつつ頷いた。

確かに、落ち込んでいる暇があったらリーナを探した方が百倍早い。反省するのは、それからでも遅く無いだろう。



「ごめんなさい。ありがとう、アイリス」



「!!……ふ、ふん。ま、まぁ、いつまでも落ち込まれていても迷惑でしたからね。別に、励ましたとかそういう訳ではないのだから」



相変わらず模範のようなツンデレに軽く笑いながら席から立ち上がった。



「ち、ちょっと!?これから授業なのにどこに行くの!?」



「決まってるじゃない。リーナを探しに行くのよ」



つまりサボりよ。悪戯っぽくアイリスに笑いかけると彼女は虚をつかれたように口を開けて私を見つめ返した。



「じゃあ、私は行くわね」



「ちょ、わ、私も行くわ!」



さっと彼女に背を向けて廊下へ歩き出したその背後でバタバタと慌ただしい足音が付いてくるのが聞こえた。





それから私とアイリスは先生に見つからないように、校舎中を探し回り、学園内にあるあらゆる施設を順番に渡り歩いた。



講堂、体育館、図書館、寮、中庭、校庭。

その何処にもリーナの姿はない。



どれだけ探しただろうか。

気が付けば辺りはもうオレンジ色に染まり始めていた。



「見つからないわね……」



木の下にしゃがみこんで、そう呟いた彼女の顔は明らかに疲労しきっていた。

そりゃそうだ、丸一日ほとんど休みなしで歩き回ったんだから。並みの女子生徒でもきついのに、今まで室内で育ってきたお嬢様にはかなりハードな運動だったに違いない。



「アイリスは先に寮に戻っていて。私はもう少しだけ探してから帰るから」



私がそう言って歩き出そうとすると彼女も立ち上がって後を追って来ようとする。



「アイリス。聞こえなかった?先に寮に戻っていてって」


「聞こえたわ。でも、ここで貴女を一人にして、もし貴女まで居なくなってしまったら……」



震えた声で胸中を漏らした彼女の顔は不安で満ちていて今にも崩れてしまいそうだ。かといって、これ以上彼女を連れて歩く訳にもいかない。アイリスの体力はもはや限界に近い。

それにそろそろ日が暮れる。いくら学園内とはいっても夜にご令嬢が歩き回るのはあまり良くないだろうし。



「大丈夫よ。本当に軽く見て回るだけだからすぐに帰るわ」



「……本当に?ちゃんと帰ってくるわよね?」



「えぇ。約束するわ」



我ながら子供だと思いながらアイリスに小指を差し出す。けど、彼女は指切りを知らないようで差し出された小指をみてしきりに首を傾げていた。

それがなんとも可愛らしくてつい頬が緩む。


「こうやってやるのよ」


自分の小指にアイリスの小指を絡まさせて、困惑する彼女を他所に「ゆびきりげんまん」とお馴染みの歌を歌い始める。



「嘘ついたら針千本の〜ます」



「ダメよ!針を千本も飲んだら死んでしまうわ!そうね、ではマカロン千個を完食しなければならない刑にしましょう!」



名案だとばかりに満面の笑みを向けるアイリス。

……本当に彼女が悪逆非道で有名な悪役令嬢なのか時々分からなくなります。

でも、この指切りのおかげで彼女に笑顔が戻ったので結果オーライだと思うんだ。



……さて。探すといってももうほとんど見て回ったっけ。どこを探そうかな?

とりあえず、一人校舎裏の庭園の周りをぐるぐると周ってみる。



彩り豊かな季節の花が満開のこの庭園、いつもは休憩場所や食事を取る人達で賑わっているけれど日が傾いたこの時間にここを利用する人は流石に少ない。

というか、今は私一人しかいないみたいだ。



「ん……。あ?お前、この前の」



ーーピコン



キース・アルバーナ・ディルヘイム

侯爵家長男。




前言撤回。

一人いた。

しかもこの間も似たような状況でこの人に会った様な気がする。



「キース様はこんな所で寝ていらしたんですか?」



「ん。この時間なら誰もいねぇからな。邪魔されずに眠れるんだ」



大きな欠伸をしながら返答するキース様。

どうやら、彼は人が居ない静かな場所によく出現するみたいだ。うん、そんな感じするわ。



「……風邪ひきますよ?」



「何言ってんだ、引くわけね……へくしゅん!」



「……」



フラグ回収が早いわ。

私の顔を見て「何か見たか?」みたいな顔をするのやめてくれませんかね。

見てない、見てないから。



「えっと。……じゃあ私帰ります」



「あぁ」



私の言葉に短く返事をすると、彼は寝ていたベンチに掛けてあった制服のブレザーを羽織って颯爽と校舎に向かって歩いていく。

その後ろ姿を見送っていると、ふいに彼が振り返った。



「そういえば。お前、名前は」



「あっ。名前も名乗らずに失礼いたしましたわ。私、リディア・レーベンスと申します」



「ん」



丁寧にお辞儀をした私に彼は「覚えとく」とだけ残して、今度こそさっさと歩いて校舎の角へと消えた。



ーーピコン



キース・アルバーナ・ディルヘイム

侯爵家長男。


好感度……0

ヤンデレ度……0



いつもの電子音と共に表示されたステータス画面。

まただ。また、好感度とヤンデレ度が表示されるようになった。でも、今回と前回の事で一つ気がついたことがある。

どうやら相手が私の名前を認識して初めて相手の好感度とヤンデレ度がわかる仕組みになっているみたいだ。

だから、リオン様の時も名前を聞かれた瞬間に好感度とヤンデレ度が表示されたんだろう。



「ってそんな悠長にしてる場合じゃなかった」



そうだ、今はそんな事どうでも良くて、一刻も早くリーナを探し出さないと。

きっとアイリスも心配してるだろうし。

とりあえず、もう一回校舎の中を……




ーーリディ



「っ!? リーナ!?」



庭園から校舎内へと移動しようとしたその時だった。奥の方から微かだけど確かにリーナが私を呼ぶ声が聴こえて、声のした方へと駆け出した。



「聴こえる。間違いない、リーナの声だ」



庭園の奥に進むにつれて声はどんどん近づいて行く。もはや、声を追うのに夢中で自分が今何処を走っているのかなんて全く把握出来ていなかった。



だから、気が付かなかった。

いつのまにか、自分が今まで一度も来たことのない場所に出てしまっていた。

そのことに気がついたのは、リーナの声が聞こえなくなってすぐの事。


うっわ、ヤバイ。完全に迷子だ。


見覚えのない薄暗い雑木林の中。

学園内の敷地はとてつもなく広大で確かに行ったことのない場所なんで数え切れないくらいあるけど、ここだけは特に異質に感じる。

しっとりとした妖しい雰囲気、人は愚か鳥の鳴き声も風の音すら聞こえない静かすぎる空間。



この先からする気配は全身の毛が逆立つほど恐ろしいのに、何故か奥に進まずにはいられない不思議な引力があった。

戻らなくちゃ。と思ったのに、自然と足が奥へ奥へと進んでいく。

まるで自分の足じゃないみたいに。


引きずられるように奥へと進んでいくとやがて目の前に小綺麗な建物がポツリと木々に囲まれているのを見つける。


全面真っ白な外壁とそこに嵌められた色鮮やかなステンドグラス、それから建物の屋根に掲げられた青銅の十字クロス


恐らく、教会だろう。が、学園の敷地内に教会があるなんて今まで知らなかったし、そんな話一度も聞いた事がない。

それに、なんだかこの教会、とっても嫌な感じだ。近付く為に妙に心が騒つくというか、威圧感が否めない。



ここに居るのは嫌だ。早く引き返さなきゃいけない……のに!



心はこの場所から一刻も早く離れなければと思うのに、私の足はそれを無視して容赦なくズンズンと教会へと向かっていく。

どんなに止まれと強く念じても、踏ん張ってみようとしても足は止まらない。



そして、とうとう教会の入口の前へとやってきてしまった。


もしかして、ここにリーナが……?

い、いや。流石にこんなところにいるわけない、よね?

でもでも、確かにこっちの方からリーナの声は聞こえたしぃ。


木製の重々しい扉を前にして足りない頭をフル回転させる。もし、ここにリーナが居るなら早く連れて帰らなくちゃいけない。のに、この教会に立ち入るのは凄く憚られる。とっても怖い。




「みーつけた」



「えっ?」



ーーートンッ



本当に一瞬だった。

悩み事の最中、背後から聞こえた声に、振り返ろうとした、その直前。

首の後ろに強い電撃のようなものが走り、そのままバランスを失った私の身体は力無く地面へ打ちつけられる。



何が、起こっ、て。




状況を把握しようと必死に思案しようとするけれど、襲ってきた強烈な眠気には抗えず、私はすっと意識を手放した。


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