終節
終節
あの廃校での日々から、鵠がいなくなってから、幾分時間がたった。
当時は「学生二人が廃校生活、うち一人行方不明」なんて報道されていたが、今ではもう、誰の口にも上がらない過去となってしまった。
俺も、すでに鵠の生存を信じられなくなっていた。
警察及びメディアによって彼女の捜索も行われたが、今日まで発見には至っていない。
きっと、彼女は最期を遂げたのだろう。
人知れず、どこかで。
これを書いているのは、それを受け入れるためだ。
彼女から受け取ったものに、自分なりに応えようと考えた。
あれからずっと、鵠の言葉が俺を生かし続けていた。
一人だけ、死ぬことなく、生き続けた。
繰り返し、あの三日間を思い出しては、当てもなく彼女を探す日々。
もう手遅れだと気づきながら、未練のように。
でも、一度どこかで折り目をつけなければならない。
それは、鵠椎名を過去にする事と同義だったが……それでも筆を執った。
彼女との日々を振り返ると、悔やんでも悔やみきれない。
俺は、どれだけ不格好になったとしても、鵠に向き合うべきだった。
相手を傷つけるのも、自分が傷つくのも恐れた結果、俺は彼女を失った。
誰よりも傍にいて、救うべき人間を一人で行かせてしまった。
俺の臆病が彼女を死なせた。
これを許せる日は、きっと来ないだろう。
俺はきっと、まだ生き続ける。
罪を償えないまま、死ぬまで。
彼女の見れなかった空を仰ぎながら――――。
次が最後になります。