7話 地下室
なんだよ……これ………!?
そこには……壁一面にずらぁぁぁーっと本が並べられていた。この部屋の大きさは大体コンビニの店内と同じぐらいある。そして、入り口側以外の壁が全て本棚で埋め尽くされているのだ。本棚の高さは2mぐらいある。そしてそのほとんどにぎっしりと本が詰まっている。こんなに大量の本が所狭しと並んでいる様子は、まるで禁書庫のような雰囲気を醸し出している。ハ○ー・ポ○ターかな?
そして部屋の中央には机と椅子が1つずつ。机の上には本と紙束と羽ペンと、台の上に乗った水色の水晶玉がある。台は理科の実験で使う三脚のような形で、きれいな銀色だ。そしてその上に乗る水晶は透き通った水色で、中心に何か白いモヤがあるように見える。
隅っこに少し埃があるがそれ以外汚れは見当たらず、薄灰色の石の床はとてもきれいにされている。まるで誰かが掃除しているように。だが、この部屋はアメリーさんも入らないと言っていた。お父さんもこの前入ったけど少しの間だけだったし、他に誰かが入ったところも見た事ない。
しかも水晶の周りだけ淡い水色に少しだけ明るくなっている。いや、そう見えるだけかもしれない。近くに光源になりそうなものは一切見当たらないのに、なぜかそのあたりだけが少し明るいのだ。しかもランプを点けていない時は見えなかったのに、水晶を見た途端に見えるようになったのだ。その上水晶から視線を少し外すと周りの明るみも消え失せる。
俺は圧倒的な本棚の存在感と、神秘的な、しかし不可解で不気味な光景を目にした。のでSUNチェックです。まあしないけど。
さてどうしたものか。怪しい水晶玉と、危険な匂いがプンプン漂ってくる本棚。これって、近ずいたらヤバい事が起きるやつなのかな?もはやトラップにしか見えないんだけど。いやでもやっぱり近ずいてみたいんだよね。あと水晶玉も少し気になるけど、今は俺の娯楽のための本が重要だ。あの巨大な本棚を目にしたら俺の知識欲が疼いてくる。勉強とか伝記とか歴史とかはご遠慮だけど、魔法の本とか異世界特有の植物とか書いてる本あってもおかしく無いじゃん。読んでみたいじゃん。
というか、ひまつぶしに面白いもの探したいってことでこうやって冒険して来た訳だし、ここで本を読まなかったらアウトだよね。1日本人としてここは怪しい雰囲気が漂ってても行くべきだよね。いやていうかよく考えれば、家の地下にある本棚に危険な要素なんてあるはずないよね。本棚トラップと言えば、本を押し込むと隠し扉が…ぐらいしか見たことないし、流石に攻撃が飛んで来たりしないよね。急に本棚が倒れて来たりとか?ないない。ありえないよね。え?いやフラグじゃないよ?
そんなことを考えていたら、段々体全体が少しだるくなってきた。あとランプを持ってる手が熱い。なんだ?と思ったけど、このランプは魔力を消費して動く訳だから俺の魔力減ってってるんだよね。つまりあんまり長くはいられないって事だよね。うん。
よし。そうと決まれば当たって砕けろ、だ。俺は今まで行き当たりばったりでもどうにかなってきたはずだ。常日頃からフラグを立ててぶっつけ本番でやってみて、そしてフラグを破壊し勇敢に帰還してきたんだ。それなら今回だって行けるはずだ。そう思うと急にやる気湧いてきたぞ。いける、今なら何だってできる気がするぞ。もし本棚が倒れてきたって余裕で回避してやるぞ。俺、これが、終わったら毎日本を読んで暮らすんだ!
そうと決まれば時間も限られてることだし早速やりますか。ルーラ、行きます!
歩いて本棚に近づき、不気味な感じの本を取ろうとする。と、指が触れた瞬間。
キイィィーン!
甲高い音が部屋全体に響く。直後、本棚全体が強く青紫に光り、大量の魔法陣が浮き出てきて作動する。魔法陣は内円を回転させながら巨大化していき、パリィィィーンと大きな音を立てて一気に割れた。すると本棚の本が青紫に光り出し勝手に本棚から抜き出されていく。本棚から勝手に出てきた本はしかし床に落ちることはなく、そのまま空中に浮遊する。唖然としている内に数十冊の本が空中に浮遊した。すると浮遊した本は一斉に背表紙をこちらへ向けて、そのまま周りから白い光を集め始める。
そして、こちらへ向けて魔法が放たれた。