表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/93

73話 赤い学校

 理の真贋を使ってから二日後。

 俺はいつも通り学校へ向かっていた。

 身体強化をかけて、一人で歩いて行ったのだ。


 危険察知の赤色は消えていなかった。

 普通に周囲に漂っている。

 家から出て数キロ走っても同じ。

 どこにいても危険にさらされる状況というのは決して居心地のいいものではなかった。


 だが、学校へ行けばなんとかなるだろう。そう考えていた。

 あそこなら沢山先生いるし、というか町にアイザックさんもいるし。

 危険察知に反応するぐらいの危機は、結界やらなにやらを展開でもして防いでるんじゃなかろうか。


 しかしながら、その淡い期待は校門についたところで打ち砕かれた。


 目にした光景に、思わずつぶやく。


「学校が……赤い!?」


 校門をくぐり目に映ったのは、これまでよりいっそう濃い赤。

 危険察知の領域に覆われた学校。

 校庭も校舎も訓練場も、全部危険範囲になっていた。


 学校内に足を踏み入れると、スキルの効果でか、脳内からガンガン警鐘(けいしょう)が鳴る。


 逃げろ。

 今すぐ。

 一歩でもここから離れるべきだ。


 本能が拒絶反応を起こしている。

 足がすくんでしまう。


 学校にいかないといけないのは分かっているのに踏み出せない。

 まるで見えない壁に阻まれているような、もしくは濃い霧に覆われているような。

 目の前に広がる赤い学校に、俺は恐怖を感じていた。


 すると急に後ろから声がかかった。


「ルーラ?」


「ひぃっ!!」


 殺されるぅっ!

 びっくりして振り返ってみると、いつも通りのセシルがいた。

 ずっと立ち止まってる俺に声をかけてくれたみたいだった。


 俺のリアクションにセシルも動揺する。


「ど、どうしたの?」


「い、いや。なんでもない」


 ごまかして隠そうとするも、逆にセシルに疑いの目を向けられてしまう。


「……ほんとに、何でもない?」


 顔を近づけ、至近距離で聞いてくるセシル。

 普段なら癒されるところだが、今はそれどころじゃない。


「う、うん。ほんとに、本当になんでもないから」


 うやむやにする俺。

 これ以上きいてもだめだと思ったのだろう。

 セシルはこれ以上追及することはなかった。


 ふう、よかった。


 安心したのもつかのま、今度はセシルが俺の手を握ってきた。


「じゃあ、一緒にいこっ!」


 ニコっとはにかんで、学校の方へ向かおうとする。

 って、やばいやばい!


「まってまって!ちょっと!ちょっとだけ!」


 セシルは不機嫌そうに振り返る。


「ルーラ?大丈夫?」


 早くいきたいのだろう。

 しかし、危険察知が反応しまくっている中へ突っ込んでいくのは、俺の精神が持たない。


 そういえば、パッシブスキルはオンオフが切り替えられたはず。

 俺はステータス画面を開いてパッシブスキルである危険察知をオフにする。

 するとさっきまで辺り一面を覆い隠していた赤色は霧散し、普段となにも変わらぬ学校が戻ってきた。


 俺は大きなため息をつく。


「ふぅ~。戻った戻った。これで大丈夫」


「………」


 一人ですっきりしているところをセシルが睨んでくる。

 ああ、睨んでいるつもりなんだろうけど、セシルのふくれっ面もかわいい。

 癒されるわぁ。


 しかし、こうやって癒されるのも今のうちだけかもしれない。

 危険察知をオフにしたから見えないだけで、常に学校内は危険な範囲となっているのだ。


 本当に学校に入っていいのだろうか。

 入らない方がいいんじゃないか。


 そんな一抹の不安を残しながら、俺はセシルの手を引いて学校に歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ