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閑話 アメリーの困惑

 私はアメリー・アダムス。今年で16歳になる私は、今重要な問題に直面してる。なんの問題かというと、最近ルーラちゃんの様子がかなり変なの。


 最初の1ヶ月は確かに大変だったわ。本当はホームキーパーとして働くはずだったのだけれど、ルーラちゃんの世話が大変だということでそちらの方の仕事も任されたの。


 中等校を卒業したけど行くあてがない私がここで働いて、分からないことだらけというのもあったですしね。


 でもそれも数ヶ月やれば慣れるものね。最近は楽しくなって来てたぐらいよ。ルーラちゃんが可愛くて仕方がないの。


 そのような感じで仕事をこなしていたのだけれども、3週間ほど前のことよ。

 ルーラちゃんが高熱を出して、ルーラの母のライリーさんが何度もヒールをかけたのだけれど治らない。医者に見せても分からずじまいで、とても焦ったわ。


 私のせいでこうなったんじゃないか。もしかすると死んでしまうのでは。責任は一体誰にあるのか。そんなこと自分に決まっている。

 なら私は一体どうやって責任を取ればいいのか。


 そんなことを考えて落ち込んで、ライリーさんに何度も励まされたわ。本当はライリーさんの方が辛いはずなのに、私は勇気づけてもらったの。


 だから、絶対この子は死なせないって意気込んだ。そして次の日になったらルーラちゃんはすっかり元気になっていて、無駄に疲れたのを覚えているわね。まあ、いい経験だったとは思っているわ。


 そんなことがあって、安心した私はまた今まで通りに仕事を再開したの。これでまた楽しく仕事ができるってね。


 そして、どうもルーラちゃんの様子がおかしいと思い始めたのもちょうどその頃だわ。


 まず、今までは事あるごとに泣いていたルーラちゃんがきっぱり泣かなくなったの。

 例えば、オムツを取り替えて欲しいときもお腹が減ったときも、思いっきりわめき散らして私に気付かせてくれていたのだけれど。

 最近はオムツを取り替えるときは「あーあー」とか「うーうー」という風に喋って伝えてくるし、ご飯はお腹が減っても何も言わない事が多くなってきたわ。

 ご飯はよく食べるのだけれど、時々私たちの食べているお肉とかを物欲しげな目でじーっと見てきたりもするのよね。


 あと、ルーラちゃんの父のハドソンさんや母のライリーさん、お姉さんのエマちゃんが久しぶりに帰ってきた時もおかしかったわ。


 エマちゃんがルーラちゃんとじゃれあってる時に、急にルーラちゃんが、エマちゃんの胸あたりを見て変な表情を浮かべたの。嫌そうな、でもちょっと嬉しそうな顔。それにちょっと笑顔も中年の男の人みたいな成分が混じってた気がしたわ。

 絶対おかしい。しかも少ししたら、声を出さずに静かに涙を流すんだもの。それにはみんな驚愕してたわ。赤ちゃんってこんなことするかしらって。


 でも、それはまだ良かったわ。一番おかしかったのは昨日のルーラちゃんよ。

 最近目を離すと勝手にどこかへ行ってしまうようになっていたルーラちゃんがその日は珍しくおとなしくしていて、それで私がルーラちゃんに話しかけたの。


「あれ? 今日はおとなしくしてたみたいだね。珍しい」


 そしたら突然、わああぁぁぁ!!って叫んだの。本当に私、びっくりちゃって、赤ちゃんにわかるはず無いのに普通に聞き返しちゃったの。


「あ、え? どうしたの? なにかあったの? 大丈夫?」


「あ……あう……。なんえも……ない……」


 ……あれ? 普通に……喋った? 赤ちゃんが? 今まで一回もぱぱーとかままーとか言わなくて、成長遅いなと思っていたルーラちゃんが?

 急にこんなに流暢に喋れるものなの? ってすごい困惑したわ。恐怖を抱いたわね。高熱で良くも悪くもおかしくなったって思ったわ。


 それで一旦落ち着こうと1階にミルクを取りに行ったの。いつもはルーラちゃんを下に連れて行くところなんだけど、少しでも離れて落ち着いた方がいいって本能的に思った私はミルクを持ってくることにしたわ。

 それでミルクをとって2階に戻って


「ミルク飲みたい?」


 って聞いたら、首を横に振ったのよ。もうこれは、言葉を理解してるのよね。こんな短期間で。子供ってこんなに成長早かったっけ……って私が思ってると今度はルーラちゃんがまた変な笑みを浮かべて


「……フフフ」


 なんて喋ったの。背筋に寒気が走ったわ。この子は本当は何歳なんだって妄想を広げちゃうぐらいに怖かったわ。


 その後も色んな物をじっと見つめたり、私のことをじっと見つめたりして挙動不審だったわ。見つめられた時とかは少しむず痒い感じもしたわね。これが本物の眼力! なんて直感したくらいよ。

 赤ちゃんができるはず無いから私の気のせいなんだろうけどね。


 私は今の仕事に満足しているけど、こんな赤ちゃんのお世話をし続けたら私がおかしくなってしまいそう。でも、困っている私に手を差し伸べてくれたのはライリーさんだし、恩を仇で返すなんてことはできないし。


 ああ、ルーラちゃん。頼みますから普通でいてください。

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