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61話 ダンジョン



 今日はかなり魔力を消耗してしまった。


 朝起きて俺はすぐに試したのだ。

 属性適正を作れるのかどうかを。


「火の属性適正を作成!」


 そう言った瞬間あら不思議、1500近くあったMPがゴリゴリ減っていって、3秒で400ぐらいになってしまった。


 ストップストップ!!


 そういって止めたときにはもう100MPも無かった。

 最悪である。

 女神の言った通り、一万はないと作れないみたいだった。

 だが逆に、作成と叫んだら勝手にMPが減っていったから、作れないことはないのだろう。

 作れることが判明してうれしい反面、MP不足で体がだるい。

 属性適正恐るべしだ。


 

 MP不足で体がだるい中、今日も学校へ行く。

 だるいがしょうがない。

 動かないことはないのだ。

 

 ああだるいだるいと文句を言いながら登校すると、なぜか騒がしい。

 すると先生が入ってきて急に説明を始めた。

 なんと今日はダンジョンへ行く特別授業なんだと。

 そういえば昨日言っていた気がする。けど、女神のせいですっかり忘れていた。


 なんて運がないんだ、と内心舌打ちする。

 朝から体がだるいのに、なんでダンジョンなんか行かなきゃないんだ。

 全く面倒この上ない。

 

 …え?

 今先生、ダンジョンの場所はミネルバ森林地帯とか言ってなかったか?

 そこ俺んちの後ろのところだよね?

 というかそこしかないよね?

 いっつも俺がレベリングしてるところじゃねぇか!

 

 やばいな......ゴブリン倒しまくってそのままにしてるから、段ボールもとい宝箱が結構放置されてる可能性あるぞ。

 宝箱見つけた最初のころはよかったんだけど、次第に中身がくそしょぼいことに気づき始めて、宝箱が出ても無視するようになっていったんだよね。


 確率は低いけど、もしも怪しまれたりしたらどうするか。

 ……まあ、知らんぷりを通せばいいか。

 どうせぐいぐい追及してくるわけじゃあるまいし。


 「初めてのダンジョンは怖いかもしれませんけど頑張りましょう」という先生の声が合図となり、みんな校舎の外へと歩き出すのだった。



     *




 夕方になってやっと学校へと戻ってきた。

 みんなへとへとになって、疲れが顔に出ている。

 疲れていないのは先生方と俺、セシル、ガイぐらいだろうか。

 教員は当たり前として、俺はダンジョン周辺の地形をかなり把握している。

 いざとなったらどうすればいいのか知っているし、敵と戦う経験も積んでいる。

 なので俺の疲労が少ないのも当たり前だ。

 だがセシルとガイ。

 なぜこんなに余裕なんだ。

 ガイは剣士で体力もあるし、セシルも魔法の才能はずば抜けている。

 だがそれだけだ。

 初めてのダンジョンとなると、いつ敵が出てきてもおかしくない状況に慣れていないのもあり、常に緊張感を纏ってしまう。

 なので普通は精神的にとても疲れるはずなのだ。

 まあ前世からの経験を積んでいる俺は、初めてのダンジョンも逆にワクワクして疲れなかったけど。

 しかし、セシルとガイ。初めてにしては余裕の表情、立ち振る舞い。

 まるでダンジョンに何度も入ったことがあるかのような雰囲気だ。いや、もしかしたら本当に入ったことがあるのかも知れない。


 一体どんな人生送ればそうなるんだと、俺は内心感嘆のため息をついた。

 ほんと、異世界怖いね。前世のガキンチョどもとはくらべものにならないぜ。

 

 いやでも、ここは異世界。

 異世界には異世界特有のかわいさがある。

 セシルとか、あとセシルとか。

 セシルいいです。目の保養。

 いろいろ気になる二人だけど、セシルが可愛いから許す。




「にしても、少なかったなぁ」


 ぽつりと俺はつぶやく。

 少ない、というのはゴブリンの数だ。

 いつもレべリングしている時の半分もいなかった。

 全くでないという訳ではないのだが、ほんの僅かしか出ない。

 日常的にあのダンジョンに潜っている俺としては異常である。

 毎年あのダンジョンに言っている先生方も異常だと判断したようで、なんだか雲行きが怪しい感じだ。

 


 ……まさか!

 セシルのかわいいオーラが強すぎて自然界にも影響を及ぼしているとかいないとか!?



 ……影響されてるのは俺だけか。

 まあ、モンスターの数が少ないということは悪いことじゃなさそうだし、気にしすぎてもダメだよな。うん。

 

 

 このダンジョンの異常がこの後大事件を起こす前兆だということに、まだ誰も気づいていなかった。

 


 ──はずだった。



「……何か始まるのかしら」


 その小さな呟きは、騒がしい教室内にすぐに溶け込み、誰も聞くことはできなかった。

 その少女は胸の深い深い場所に、静かで、しかし強靭な、感傷的で怒りの混じった感情の炎をともしていた。

 

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